プロレス界きっての“多団体男”阿部史典(フリー)がDDT UNIVERSAL王座(王者はMAO)に狙いを定めた。阿部はDDTの9月8日、愛知・名古屋国際会議場イベントホールで同王座に初挑戦する。決戦を目前に控えた阿部に現在の胸中を聞いた。
いにしえの団体バトラーツにあこがれてプロレスラーを志した阿部は、その思いを抱えたまま、僧侶になるべく京都の寺院で修業。叔父とのつながりで愛知の寺に勤め始めたが、プロレスラーへの思いを断ち切れず。スネークピットで親交のあった澤宗紀さん(元バトラーツ)の紹介で、名古屋の団体スポルティーバに入門し、2015年5月17日に名古屋国際会議場イベントホールでデビュー。その後、東京に進出し、2018年1月にBASARAに入団。数えきれないほど多くの団体からオファーが殺到し、“多団体男”に。目標を達成するために、2022年12月いっぱいでBASARAを退団。昨年10月12日に東京・新宿FACEで同志の野村卓也(大日本プロレス)とともに、自主興行「格闘探偵団」を開催。今年の10月23日には新宿で第2弾を行う。自主興行では独自の価値観を確立しながら、さまざまな団体で活躍する阿部の次なるターゲットはDDTだ。
――いろんな団体でベルトを獲られています。今回、MAO選手への挑戦が決まりましたが、各団体に出る以上、ベルトを獲るのは一つの目標ですか?
阿部 ベルトを獲れば、発言権ありますからね。中心人物でいれるんで。シングルのベルトを自分から獲りたいというのはあまりないかもしれないです。責任が重すぎますから(笑)。タッグは獲りたいなと思っています。でも、UNIVERSALのベルトはあまりよく分かんないんですけど、MAO選手が持つUNIVERSALには魅力がある! そこが大切だと思います。MAO選手が持ってるから、欲しいなって。だから今ワクワクしてるし、勝ちたいなと思います。
――MAO選手とは去年の2月23日、バーレスク東京での路上プロレスでのKO-Dタッグ選手権(王者組=MAO&勝俣瞬馬vs挑戦者組=髙木三四郎&阿部)で対戦されていますが、その時の印象は?
阿部 独特な人ですね。デタラメさもたくさんあって、自分の色がある。教科書がありそうでない。ちゃんとしたところのレスラーと戦ってると、こうしたらこうするみたいなのを叩き込まれてる部分もある。それが王道だと思うんで。でもMAO選手はあまり縛られない人なので、やっていて違う面白さがあります。
――それは変則的な動きだったりですか?
阿部 もちろんそうですけど、なにより考えじゃないですかね。とがってるし。他団体の人の名前を出すのはよくないかもしれないけど、ライジングHAYATO選手と似た匂いを感じます。ジャンルとか、やってることは違うかもしれないけど。自分の考えを持って、芯がある。上の人から見たら若いなって思われるだろうし、MAO選手ってイケイケだなと思います。そういう人に、ワクワクしてもらえてるのであれば光栄。プレッシャーですけど。
――バーレスク東京での試合の前には、ポールダンス特訓もみっちりやりました。直接的にプロレスに関係はないけど、一生懸命取り組むことでプロレスに活きましたか?
阿部 絶対プロレスに関係ありますよ。傍から見たら、プロレスに関係あるか分からないけど、なんでも一生懸命やりたいし、結局全部プロレスに来てるんで。ムダなものは一つもない。それって髙木さんが全部証明してるんで。それが一番プロレスだと思います。それをMAO選手も体現してるんじゃないですか。バンドとかいろいろやって。全部プロレスだと思うんで。ウエイトして、練習して、リングの上が強いって、普通じゃないですか。そんなのいっぱいいるんで。
――その後、DDTへの参戦はあまりなく、6月16日のTOKYO FMホール以来となります。同会場は“バトラーツの聖地”と呼ばれていましたから、血が騒ぎましたか?
阿部 いい会場ですよね。お客さんとの距離が近くて。あれくらいの会場好きですね。バトラーツにちなんで呼ばれたのは光栄でした。そういう風に思ってもらえてるんだって。
――今回いきなりタイトル戦が決まった形ですが、それに関してはどういう心境ですか?
阿部 海外ではよくあることですよね。当日行ったらいきなりタイトルマッチだったり。特にフリーな感じでやってると、えっ!今日タイトルマッチなの!って。だから気持ちが乗らないとかなくて、その気持ちのもって行き方は誰よりできると思います。それは慣れてます。MAO選手も慣れてると思います。そういうのたくさんやってるし、そういうのが好きなんじゃないですか? 海外も好きなようだし、分からないけど。
――MAO選手はUNIVERSAL王座戦では、いろんなタイプの選手と防衛戦をやってきましたが、その辺はどう思いますか?
阿部 あまり知らないんですけど、本当に凄いと思います。“俺ならどこまでも行ける”と思ってるスター状態だと思うんです。そういう人間って強いですよね。
――阿部選手から名乗りを挙げたわけじゃないですけど、タイトル戦が決まってから気持ちは高まってきましたか?
阿部 ハイ。頑張ろうと思いますし、MAO選手にたぶん、僕のことを“面白い”って思われたわけじゃないですか。だからその上をいってやりたいと思います! 僕は彼が経験してないことをいっぱい経験してるし。彼は所属の選手だけど、僕は体一つで自分ですべてやってるし、そういう生き抜く力は確実にある。もちろんMAO選手が凄い選手だからこそ、そういう人たちにギャフンと言わせたいです。
――タイトル戦がデビューした会場で感じるところはありますか?
阿部 ありがたいことに、よく試合やってますからね。今は名古屋国際会議場イベントホールでタイトルマッチって言っても、そんなにかもしれません。ただ、名古屋という自分がデビューした土地で試合ができることに、もちろん喜びはいつまでもあります。でも、それよりもMAO選手とタイトルマッチをやることへの思いが強いですかね。
――やる以上はベルトを獲りたいですよね?
阿部 やる以上、絶対勝ちますよ。
――ベルトを獲ったら、MAO選手とは違う防衛ロードを歩みたい?
阿部 EXTREMEじゃないけど、バトラーツルールとかやってもいいんですかね? (野村との)アストロノーツを広めたいし、アストロノーツを広めたいということは、格闘探偵団を広めたい。バトラーツって、こんな面白いヤツがあるんだぞって。ベルト獲ったら、たとえば、葛西(純)さんはデスマッチファイターなわけじゃないですか。その葛西さんの相手は、葛西さんにそういうルールで挑みたいわけじゃないですか。だったら自分はそれがバトラーツルールだと思ってるんで。それでやってみたいですね。相手の土俵で戦いたいわけじゃないですか? ベルト獲ったら発言権ありますから、獲りたいです。DDTなら、それが面白ければ自由を重んじてくれると思うから。
――ベルトを獲れば、DDTへの参戦回数もおそらく増えるでしょうね…
阿部 勢いがある団体ですからね。もしベルト獲ったら、次はKO-Dタッグとかも狙いたいし、そういうのをやりたいですかね。世代の近い人が多いので、戦ってみたい人はたくさんいます。
――タッグとなると、やはりパートナーは野村選手ですか?
阿部 そうですね。所属団体はないですけど、そこが自分にとっての家なので、そこを広めたい。2人でどこまで行けるのか試したい。でも、なによりはまずはUNIVERSALですよね。MAO選手の一番素敵なところは自分自身にプライド持ってるところだと思います。たとえば飯伏(幸太)さんが来て、いろいろ言われてる。僕でさえ耳に入ってくる。俺らが支えてきて、すぐそんな許さねぇぞみたいな。アレルギーを起こしてるんですよね。そういうのはむちゃくちゃ推せるし、そう来てくれなきゃと思うし、僕もそう思います。自分が面白いって思わなきゃいけないし、そういう人と2人きりでリングで会話ができるのは凄い楽しみだし、刺激になりますね。僕ら世代でそういう人って、そんなにたくさんいない気がします。
――全日本のGAORA TV王座を持っていて、UNIVERSALを獲れば、団体を股にかけて2冠王になりますが、そこへの意識は?
阿部 確かにそうですね。ただ意外と別物と考えるんです。僕は世界観の強い団体、自分たちの島で発展させてるようなところでは…全日本とDDTって、自分たちでやってる団体2つだと思うんです。そこにその話はもっていかないというか。UNIVERSALとインディーだったらもっててもいいですけど。別で考えたい。MAO選手はMAO選手、GAORAはGAORAで考えてます。
――MAO選手がX(旧Twitter)で、「願ったり叶ったり。こんな相手を待ってた!もっと言えば、阿部史典とサシで当たる日は、いつか絶対来ると思って待ってた!」と発言していますが、それに対しては?
阿部 光栄でしたし、自分もいつか戦うだろうなと思ってました。だってギラギラしてるじゃないですか。同じ気持ちです。あまり知らないんで、深いところは分からないんで。そういうイメージをもってますし、凄い面白いんだろうなと思うし、自分の考えをもった人って魅力的です。半面、同じようなことを思ってくれてるのはうれしい。だからこそ驚かせたいし、コイツ、“こんなこと感じたことない”みたいな気持ちにはなってもらいたいです。逆も。こんなことって?という気持ちになるのも楽しみです。
――ほとんど対戦してないからこそ、楽しみですか?
阿部 日本語をしゃべれる外国人と戦うような気持ちです。外国の団体でいきなりタイトル戦が組まれたような感覚です。
――ほとんど情報のない選手と戦うにはセンスが必要ですか?
阿部 僕はふだんからそれをやってるんで。Xとか映像でちょろっと見るとかはありますけど。初めましてみたいな人と戦うのはふだんからやってるんで、そういうのは僕は特化してると思います。だから自己完結できるものが多いかもしれないです。
――タイトル戦前日の7日(大阪・サンスクエア堺・多目的ホール)には、唯一の前哨戦(MAO&勝俣vs阿部&アントーニオ本多)もありますが…
阿部 前日に前哨戦あるんですけど、ないようなもんでしょ。特に考えずにやろうかなと思ってます。そういう選手だと思うし、目の前に出てくる選手を楽しみたい。あまり下調べしたくないです。アントンさんとか勝俣選手も楽しみつつ、タイトルマッチは全然違いますから。その試合はあいさつみたいな感じですね。



