3月17日、後楽園ホールにおけるDDTの27周年記念興行には“王道”全日本プロレスから今が旬の3選手が参戦する。まずは前三冠ヘビー級王者の青柳優馬。今やDDTとAEWを股にかけて活躍する“世界のKONOSUKE TAKESHITA”と一騎打ちを行うのだ。
2人の初遭遇は8年前の2016年6月15日、全日本・後楽園ホール。秋山準&青柳と竹下幸之介&遠藤哲哉の全日本vsDDTの対抗戦が行われ、竹下が青柳のダイビング・ボディアタックをドロップキックで迎撃し、ラリアットからジャーマン・スープレックス・ホールドで快勝している。
2人は95年生まれの同い年だが、竹下は高校2年の夏休みにデビューし、青柳は高校卒業後に全日本に入門してのデビューだからキャリアに2年の差がある。当時の2人の状況を振り返ると、青柳はデビュー2年半のジュニアヘビー級の若手、竹下は全日本参戦17日前の5月29日の21歳の誕生日に佐々木大輔を撃破してKO-D無差別級王座を初戴冠したばかりのDDTの若きエース。大きな開きがあった。実際、他団体初参戦となった竹下の目には三冠ヘビー級王者の秋山準しか入っていなかった。
だが、その後の青柳の成長は目覚ましいものがあった。ジュニアヘビー級の動きを保ちつつヘビー級に転向し、22年5月にジェイク・リーを撃破してジャンボ鶴田の29歳1ヵ月の最年少記録を更新する26歳6ヵ月で『チャンピオン・カーニバル』に優勝。昨年6月15日に宮原健斗とのビジネス・タッグでNOAHの拳王&征矢学から世界タッグ王座を奪取し、さらには7月2日に新日本プロレスの永田裕志を破って第70代三冠ヘビー級王者になり、史上11人目、史上最年少27歳8ヵ月で5冠王の偉業を達成している。
全日本というと、どこか生真面目、熱血、まっすぐというイメージが強いが、青柳は対戦相手をおちょくり、観客をいじる。例えば、ある会見で暴れた諏訪魔を「器物破損専務」、遅刻した芦野祥太郎を「遅刻太郎」と揶揄し、対戦相手のファンには舌を出してベロベロバー。そうやって話題を提供し、自分のペースに巻き込んでしまう。28歳とは思えない老獪さと、何事にも動じない神経の図太さを身に付けているのだ。そんな青柳に付いたキャッチフレーズが「陰湿ファイター」。テーマカラーが青ということで「陰湿ブルー」とも呼ばれた。
TAKESHITAとの対戦が決定して1・4後楽園に挨拶に訪れた時には、TAKESHITAがいないのを承知で「KOOSUKE君、いるなら出てきてくれないかい? えっ? いない? 何をやっているんだい!」とかまし、全日本の1・27八王子で前哨戦として行われた青柳優馬&亮生vsTAKESHITA&岡谷英樹のタッグマッチでは何かにつけてTAKESHITAに見せつけるように技を繰り出し、試合後にはTAKESHITAに握手の手を差し出しながら、TAKESHITAが応じようとするとサッと手を引っ込める陰湿さを見せていた。
そんな青柳だが前述の実績のように実力は確かなものがある。秋山体制の全日本の生え抜き第1号としてデビューし、秋山の付け人を務めながら、プロレスの1~10を叩き込まれた。TAKESHITAも秋山にジャンピング・ニーを伝授されたが、最初に伝授されたのは青柳だった。秋山から王道プロレスを継承した青柳は全日本の指導者という顔も持ち、あの斉藤ブラザーズも青柳からプロレスのイロハを学んだ。
また青柳は佐山聡の弟子でスーパー・タイガー・ジムのインストラクターも務めた全日本の大先輩であり、天龍源一郎イズムを持つ総合格闘技道場『キャプチャー』の北原光騎にも学び、相手の顎に鋭く伸びるスピンキックを伝授されている。熱血でも、闘志を見せるわけでなく、飄々としているが、実はデンジャラスな男なのだ。
昨年11・12両国でクリス・ジェリコに敗れたTAKESHITAだが、2月7日のアリゾナ州フェニックスにおけるAEW『ダイナマイト』では何とウォール・オブ・タケシタで雪辱を果たし、3月3日のノースカロライナ州グリーンズボロのAEW『レボリューション2024』では敗れはしたものの、ウィル・オスプレイと名勝負を展開するなど、さらに進化している。そんなTAKESHITAは青柳にとって、この上なくオイシイ相手だろう。
世界のTAKESHITAと前三冠王者・青柳の28歳対決は、日本プロレス界の未来に向かってドラマチックなドリームを見せてくれるに違いない。
そして遠藤哲哉&飯野雄貴のKO-Dタッグ王座に挑戦するのが本田竜輝&安齊勇馬のNew Period(=新しい時代)である。00年2月生まれの本田と99年5月生まれの安齊の同学年コンビは、そのチーム名通りに全日本プロレスに新時代を呼び込むために昨年9月、本田が安齊に呼び掛ける形で結成された。
本田は自由が丘学園高校レスリング部の出身で、卒業前の18年2月に武藤敬司のW-1のゴールデンルーキー・プロジェクトに合格して18年9・2文体でデビューしたが、キャリア1年半の20年4月にW―1が活動休止に。同年8月に道場でトライアウトを受けて、全日本に新天地を求め、19年元日付で所属になった。
そこから積み上げて22年6月にはW―1時代の先輩・芦野と世界タッグ王者になり、昨年はレスリングの大先輩・永田裕志に弟子入りして開眼。昨年8月の『王道トーナメント』では青柳、宮原、諏訪魔の歴代三冠王者を撃破して準優勝をやってのけた。こうした経緯から苦労人的なイメージを持たれるかもしれないが、いつもテンション高くハツラツ。110キロのパンパンな体をフルに使ったワンパクなファイトが売りだ。
一方の安齊は中央大学レスリング部出身でジャンボ鶴田、諏訪魔の後輩にあたる。2018東日本学生選手権・新人戦グレコ82㎏級で出場、19年全日本大学グレコローマン選手権97㎏級5位(2年生)、東日本学生レスリング選手権春季大会優勝の実績から諏訪魔にスカウトされ、22年9月18日に日本武道館で永田の胸を借りてデビューした大型ルーキーだ。昨年6月17日の大田区総合体育館ではデビュー9ヵ月にして永田の三冠王座に初緒戦。来たる6・30大田区では中嶋勝彦の三冠王座に挑戦することが決定している。
ワンパクな本田に対して、安齊はイケメン&品行方正で好感度が高いところから「あざとカッコいい」と言われるようになり、遂に「安齋があざとい!」の文字が入った応援タオルが新発売になった。
New Periodは2・7新宿FACEでDDTに初登場して正田壮史&瑠希也に勝って遠藤&飯野に挑戦表明、3・6新宿FACEでの遠藤&飯野&松永智充vs本田&安齊&井上凌の6人タッグでの前哨戦でも勝利しているが、本田のワンパクさと安齋のあざとカッコよさはDDTファンにも好感を持って受け入れられているようだ。
青柳優馬の陰湿さ、本田竜輝のワンパクぶり、そして安齊勇馬のあざとカッコよさ、王道という言葉では括れない現在進行形の全日本プロレスをDDTのファンにぜひ堪能していただきたい。
文/小佐野景浩



