「オマエを血まみれにしてやる!」
“六冠王者”マット・カルドナが、DDT初参戦となった7・23両国国技館大会で、遠藤哲哉の持つDDT UNIVERSAL王座に挑戦した。帯同した女性マネージャー、ステフ・デ・ランダーによる介入もあって、初挑戦にして王座を強奪。7本目のベルトとして、UNIVERSAL王座を自身のベルトコレクションに加えた。試合後、“七冠王者”として自信満々にマイクアピールし、取ったばかりのベルトを頭上に掲げ意気揚々の新王者だったが、突如、聞き覚えのある声が場内に流れる。ビジョンに映し出されたのは、カルドナとステフの二人にとって、因縁浅からぬ伊藤麻希の姿だった。
「おい、マット・カルドナ、オマエ、UNIVERSALのベルト獲ったっぽいな。伊藤がな、オマエのそのベルトに挑戦してやるよ。伊藤はオマエのこと大っ嫌いだからな。伊藤がオマエからベルトを剥がし取って、オマエを血まみれにしてやる!」
アメリカにいる伊藤は、憎きカルドナとステフによりUNIVERSAL王座が海外流出したのをライブ配信で見て、ビデオメッセージを送ってきたのだった。
ステフとの二人がかりの小ずるい攻撃で新王者となったカルドナに落胆していた会場内の雰囲気も、予期せぬ伊藤麻希の挑戦表明に歓声が上がる。
翌7月24日に行われた記者会見でも、伊藤は新王者カルドナとステフに対し、新たなメッセージを送る。
「2人のことはアメリカでイヤというほど見てきたので分かってます。カルドナとステフが、どれだけクソ野郎であるか。世界一かわいい伊藤麻希がDDT UNIVERSAL王座の平和を必ず取り戻します。伊藤麻希が必ずベルトを取り返します」
9月24日、後楽園ホールで行われる「Who's Gonna TOP? 2023」において、マット・カルドナ with ステフ・デ・ランダー vs. 伊藤麻希のDDT UNIVERSAL王座戦が正式決定。アメリカGCWで繰り広げられた血の抗争劇が、日本のDDTに直輸入されることになった。
伊藤麻希とマット・カルドナの因縁は、伊藤が初めてGCWに参戦した昨年2022年8月14日のアトランティックシティ大会から始まった。同大会ではマット・カルドナとチェルシー・グリーン(現WWE)夫妻のバウ・リニューアル(結婚している夫婦が、あらためて愛を誓い合うセレモニー)が行われた。GCW初参戦ながら伊藤はその式典に登場し、夫妻のためにナット・キング・コールの名曲「ラブ L-O-V-E」を歌い上げ、カルドナを大いに喜ばせる。それは愛に満ち溢れた感動的な場面であり、その光景を見た誰もが、このあと二人が血まみれの抗争を繰りひろげることになるとは思いもしなかったに違いない。
GCW初参戦で、アメリカのファンの心を掴んだ伊藤は、その3ヶ月後の11・20プロビデンス大会に再び参戦する。“米デスマッチのカリスマ”ニック・ゲイジが観客相手にマイクパフォーマンスしているところに現れた伊藤は、ゲイジからマイクを奪い取り、ゲイジのキメ台詞を絶叫し、観客から大喝采を浴びる。このゲイジとの遭遇が、伊藤のアメリカでの方向性を決定づけたと言っても過言ではないであろう。
12・31アトランティックシティ大会でも、再びマイクパフォーマンス中のニック・ゲイジの前に姿を見せる。ゲイジから試合に勝ったら、仲間(MDKギャング)として認めると言われた伊藤は、ゲイジの代名詞とも言えるピザカッターで相手の額を切り刻み流血させるなどこれまでにない残虐な面を見せ、見事勝利を飾る。
MDKギャングとして認められた伊藤は、今年の3月4日に行われた試合では、自分の曲ではなく、ゲイジのテーマ曲「誰がために鐘は鳴る」で入場。そして、3月31日のロサンゼルス大会で、二人はついに一夜限りのタッグチーム「MDK」を結成する。チーム名のMDKは本来の意味の“Murder Death Kill(殺人、死、殺す)”ではなく、“Maki Death Kill(マキ、デス、キル)”とした。伊藤はこの試合でもピザカッターを出し、本家ゲイジとのピザカッター攻撃の共演と、チーム初結成とは思えぬ息のあったところを見せ、相手を流血させた上に勝利を収めた。限定結成だったタッグチーム「MDK」だったが、試合後、リング上で勝ち名乗りを上げているゲイジと伊藤を、椅子を手に乱入してきたカルドナとステフが急襲したことから事態が一変。伊藤&ゲイジとカルドナ&ステフ、両者の血の抗争が勃発する。
5月21日のコロンバス、6月4日のアトランティックシティ、7月14日のニューヨークの両大会でもやり合う両チーム。特にアトランティックシティ大会では、伊藤が蛍光灯の束をカルドナに叩きつけると、割れた蛍光灯の破片がカルドナの肩から背中に突き刺さり、カルドナは血まみれとなった。両者の遺恨が深まるなか、カルドナとステフはDDT両国国技館大会に参戦するため、揃って来日。カルドナがDDT UNIVERSAL新王者となるや、伊藤が挑戦表明したのは意外と思われたかもしれないが、日本のファンが知らぬところで、アメリカGCWのリングで二人の抗争が繰り広げられていたのだった。
アメリカ各地を股にかけ、ますます遺恨深まる両者が直接対決する舞台として、GCWが用意したのは8月19日のアトランティックシティで行われる、この夏一番のビッグイベントだった。自称“デスマッチキング”と“デスマッチクイーン”を名乗るカルドナとステフは、憎き「MDK」征伐を試みたが、伊藤とゲイジのピザカッター攻撃で大流血。最後は「MDK」のダブルこけしで敗北する。
9月24日後楽園ホール大会のタイトルマッチ前哨戦とも言えるGCWでの試合に負けたカルドナに、伊藤との防衛戦について話を聞いた。
「マキ・イトーが憎ったらしい。大っ嫌いだ。アイツはデスマッチをやりたがっているだけの小娘だ。ステフはマキに二連勝している。今度は俺の番だ。後楽園ホールでは、あっという間にマキを倒し、そのあとステーキハウス・リベラとユニバーサル・スタジオに行く。あと、これだけは言っておきたい。俺はマキ・イトーよりも歌がうまい」
DDT UNIVERSAL王座の初防衛に絶対的な自信を持つカルドナは、現在、UNIVERSAL王座を入れて8本のベルトを所持する八冠王。「妻チェルシーの持つWWE女子タッグ王座も含めれば9本だ」と豪語する。7月の両国大会同様、マネージャーとしてステフを帯同することから、あの手この手を使って、二人がかりの卑劣な攻撃をしてくるに違いない。
王者有利な条件のなか、「血まみれにしてやる!」と両国大会でカルドナに挑戦表明した伊藤は、日本での“伊藤麻希”として試合に挑むのか、それともアメリカGCWマットを血の海に染めたMDKの“マキ・イトー”として登場するのか。
もし入場曲にメタリカの「誰がために鐘は鳴る」が流れ、ピザカッターを手にした伊藤が出てきたら、それは“伊藤麻希”ではなく、“マキ・イトー”だ。「Where's my fuckin' gang at?」と尋ねられたら、我々は「イェー!」と答えよう。「It's MDK!」には、「オール・ファッキン・デイ!」だ。
もうすぐアメリカ直輸入の抗争が、日本に上陸する。9月24日、後楽園ホールのリング上に、我々は歴史の生き証人としてこの大一番を見届けようではないか。
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