「イキのいい若手選手や新人も増えてきたし、いいんじゃないですかね」
これは若手選手によるシングルリーグ戦、D GENERATIONS CUPの開催を耳にした際に、筆者が抱いた率直な感想でした。要するに「マジっすか、うぉー!」という感じではなかったのです。
もちろん若手選手のシングルリーグならではの、熱くがむしゃらな闘いは楽しみではありましたが、誰が優勝してもDDTの大勢には、さほど大きな影響はないであろうと考えたからです。
しかしながら時間が過ぎるにつれて、このリーグ戦は出場選手にとっては、相当に過酷でハイリスクな闘いであるように思えてきたのです。
まずは改めてD GENERATIONS CUPの概要を説明しましょう。
1・29後楽園大会から各4名ずつの2ブロックでリーグ戦(15分一本勝負)を行い、両ブロック首位の選手が2・26後楽園大会で行われる決勝戦(無制限一本勝負)に進出。
優勝者は3月末に開催される、DDTハリウッド大会への参戦権利が与えられます。逆に言えば優勝した選手以外は、日本で留守番ということになります。
出場選手とデビュー年月は以下の通りです。
Aブロック
岡谷英樹 20年3月
高鹿佑也 21年4月
須見和馬 22年10月
イルシオン 21年8月
Bブロック
中村圭吾 19年10月
小島斗偉 20年12月
石田有輝 21年10月
正田壮史 22年8月
ブロック分けが発表された時点で、リーグ戦の展開を予想してみたのですが、「うーん……」と考え込んでしまいました。予想する上でまず参考にすべき、出場選手同士の過去のシングル戦績が非常に少なかったからです。
近年のDDTではある程度の実力が認められ、所属ユニットが決まった若手は、他団体と比べてかなり早い段階から、タッグや6人タッグでメインやセミに抜擢されています。
とりわけキャリアが浅い時期のプロレスラーは、自分より強く上手い選手との実戦を通じて学び、強くなっていきます。実際、今回のリーグ戦に出場する選手たちの多くは、メインやセミの出場機会を重ねることで、この1年の間に急成長を遂げているのは、読者の皆さんもご存知でしょう。
そのような若手育成方針に加えて、DDTは参戦選手が多いこともあって、ここ数年は若手選手同士のシングルが非常に少なくなっています。実際、今回のリーグ戦でも多くの公式戦はシングル初対決です。
タッグや6人タッグでもフィニッシュを決めるのは、パートナーである先輩選手の場合が大半。若手同士で勝敗がつく試合は年に数試合しかありません。
しかもユニット抗争がカード編成の基軸であるDDTでは、他団体では当たり前の若手同士によるタッグも滅多に組まれません。かといって若手が中堅以上のキャリアの選手に勝つのはさらに困難です。
つまり若手選手にとってDDTは、他団体以上に勝利のハードルが高い団体なのです。実際、今回のリーグ戦の出場メンバーの中で、自力で10勝以上挙げている選手は皆無。シングル未勝利の選手もいます。
そんな勝ち星に飢えている若手たちにとって、今回のD GENERATIONS CUPは、シングルでの勝ち星を重ねる千載一遇のチャンスなのです。
一方で勝負事である以上は、勝つ選手がいれば負ける選手もいます。リーグ戦は3試合しかないので、一度も勝てない選手が出てくる可能性もあります。
そしてシングルの直接対決が少ないがゆえに、今まで曖昧だったDDTにおける若手選手の実力序列は、今回のリーグ戦を通じてはっきりと明示されることになるのです。
しかも前述してきた理由から、DDTではリベンジの機会も簡単には訪れません。冒頭で書いた“過酷でハイリスク”には、そういう意味も含まれます。
ことほどさように出場選手にとっては、過酷でハイリスクな闘いが続くであろうD GENERATIONS CUP。出場選手たちにとってはプロレス人生前半における、最大級の喜びと悔しさを経験する場となるでしょう。
そんな若い選手ならではの喜びと悔しさを、このリーグ戦中は存分に共有したいと思っています。



