DDTプロレスの2022年下半期、樋口和貞がまさに激走した。
7月3日、東京・後楽園ホールでトーナメント「KING OF DDT 2022」を初制覇し、空位だったKO-D無差別級王座を初戴冠。同月24日の後楽園では吉村直巳とのハリマオでKO-Dタッグ王座を奪取(11月に返上)。その後は、2冠王として防衛を続けた。先のシングル最強決定リーグ戦「D王 GRAND PRIX 2022」では、惜しくも優勝決定戦進出はならなかったが、今年最後のビッグマッチ「NEVER MIND 2022」(12月29日、TOKYO DOME CITY HALL)では、「D王」を初制覇した上野勇希を挑戦者に迎え、5度目の防衛戦に臨む。そこで決戦を目前に控えた樋口を直撃した。
――6月16日(新宿FACE)に開幕したトーナメント「KING OF DDT」から、半年間走り続けられました。目の前の1個1個を倒していくような感じでしたか?
樋口 あっという間でした。気付いたら12月でした。タッグ戦も無差別級戦もすべて印象深い。心に残る試合ばかりだった。1個1個、戦い抜いたら本当にあっという間でした。
――初防衛戦の遠藤哲哉戦(8・20大田区)、V2戦の竹下幸之介戦(9・25後楽園)は、これまでのDDTの中心選手との対戦でした。この2人を倒せたのは自信になりましたか?
樋口 この2人とはタイトル戦ではやってなかったですけど、ベルトが懸かってない試合では、意外と勝ったり負けたりだった。分がよかったり、悪かったりで。自信になったというより、この2人と大事なとこで当たれたというのが感慨深かったです。
――なかでも竹下選手は米AEWに参戦中ですから、挑戦するのは大きな決断だったと思いますが……
樋口 どっちにも自分から言い出してるんです。自分の気持ちを汲んで、その場に出てきてくれた。ホントにありがたい。あの2人は大変な部分があると思いますけど。そういうのを取っ払って、自分と勝負してくれたのはありがたい。そして、大事な試合で勝てた。その点で心に残りました。
――10・23後楽園ではKO-Dタッグ王座の防衛戦(佐々木大輔、KANON戦)の後に、青木真也選手が「いつでもどこでも挑戦権」を行使して、KO-D無差別級王座戦を戦いました。激闘の後で、きつかったですか?
樋口 佐々木、KANON組に防衛した後ですから、正直しんどかった。
――青木選手とは体格差がありますが、それでもサブミッションなどは苦しかったですか?
樋口 体格というより、それを超越する技術をもってる方ですから。普通の状態でも勝てるかどうか分からないのに、消耗したなかで来るのは青木真也だなって思いました。
――世界の青木選手を倒せたことで、自信につながりましたか?
樋口 自分としては最後に残った残弾一発(ヘッドバット)が見事に当たった感じ。自信になったというより、何とか勝てた感じでした。
――「いつどこ」はしばらく封印されてましたが、これはあっていいと思いますか?
樋口 自分もデビュー半年で、『いつどこ』を使って、HARASHIMAさんが持っていたKO-D無差別級王座に挑戦してる。あれは可能性広がっていいと思います。
――10・23後楽園ではEruption時代の兄貴分の坂口征夫選手の挑戦を受けました。坂口選手は心の部分を突いていくという発言がありましたが、メンタルな部分での戦いでもありましたか?
樋口 Eruptionを抜けたといっても、坂口さんが“オマエはもう大丈夫だ”という形。ぶっちゃけ自らの意思ではなかったんで。チャンピオンとしてやっていかないとなという気持ちがあって、そのなかで防衛を重ねた後で。公私ともどもお世話になってる方が来て、精神的に追い詰められたりして、坂口戦が一番きつかったですね。
――それは肉体面、精神面を含めてですか?
樋口 そうですね。そこで坂口さんにいろいろ言われたことはあったけど、自分を崩させずになんとか勝てたので、恩返しできたのかなという気がします。坂口さんが考えてる樋口和貞像とは違うかもしれないけど。“オマエなら大丈夫だ”と言われたので。
――チャンピオンとして迎えた「D王」で優勝できなかったことに関して受け止めは?
樋口 チャンピオンとしての務めを果たせなかったという思いがある。優勝決定戦にも出れなかった。悔しい気持ちはあります。
――「D王」で優勝決定戦に残れなかったのは、最終公式戦で納谷幸男選手に敗れたのが大きいと思いますが、彼の成長ぶりを肌で感じ取れましたか?
樋口 『KING OF DDT』で戦ったときも強かったんですけど、今回も強かったですね。元々もってるものは一級品なんで、それを解放できれば、なかなか太刀打ちできる相手ではない。まだ模索してる部分が納谷のなかにあると思う。自分と対戦した、あの一瞬だけはそれを取っ払って上に行ったなという感じはしますね。やられましたからね。押し切られましたから。
――納谷選手の進化は気持ち的な面が大きいのでしょうか?
樋口 火野(裕士)選手と組み出したあたりから、体のデカい人のプロレスを学んだんでしょうね。それがちょっとずつ結果が出て、自信になったのかなと。ポテンシャルは元々あったんですから。
――去年、準優勝だった上野選手が一気に優勝。ここ最近シングルで対戦する機会はなかったですけど、「強くなった」というのは感じていましたか?
樋口 上野はD王、去年準優勝で、今年の『KING OF DDT』ではベスト4に残ってる。シングルこそ久しくやってないけど、タッグでは結構当たってるんで、すごいなって感じですね。実際(DDT)UNIVERSALチャンピオンですし。
――上野選手は体重的にはDDTの主力ではかなり軽量。それを補う何かがあるんでしょうか?
樋口 あるんじゃないですかね。あるから、こうやって今回、自分の前に立つんでしょうね。
――「D王」で優勝した上野選手が無差別級に挑戦したいと。もう望むところですか?
樋口 望むところというか、自分はD王獲れなかったし、D王覇者に対して、挑戦させてもらう気持ちがある。DDT最強決定リーグ戦を謳ったD王で優勝したんだから、現状、上野が最強なんじゃないですか。そこにチヤンピオンの自分がエントリーされてて優勝できなかった。上野が無差別も獲りたいと言ってるのであれば、それは受けます。なんならD王の覇者に対して、丸腰のままじゃ失礼ですから、ベルトを持った俺が挑戦する感じ。それが筋なような気がします。
――シングルでは2020年11月22日、後楽園での「D王」公式戦(上野の勝利)以来、2年対戦していません。前哨戦ではバチバチな戦いになりましたが印象は?
樋口 強いなって感じ。自分とか体の大きい選手とは違う意味で、バケモノだなという気はします。
――いよいよ12・29、TDCホールでタイトル戦になります。ここはどうしてもベルトを守って年を越したいですか?
樋口 ベルトを持って年を越したい気持ちはありますけど、こればかりはそのときの勝負の流れなんで。ただ白黒ハッキリするだけ。いろんな意味で覚悟してます。
――どう戦っていくかはこれから考えますか?
樋口 これから考えるというか、ぶっちゃけ樋口VS上野の戦いにも歴史がある。お互いが分かってる部分がある。どう戦うとか、こうしていきたいとか、歴史のなかの一つになっていくと思います。
「DNAデビュー同士では初のKO-D無差別級王座戦で感慨深い」
――これまでの挑戦者と違って、若手時代からしのぎを削ってきた上野選手と無差別級戦で戦うのはどういう気持ちですか?
樋口 上野の練習生時代から見てるわけですし。後輩として、デビュー戦の相手して、成長していって。いつの間にか何回かピンフォールも実際取られてる。DNA(DDTの若手主体プロジェクト)から続いてるんですけど、いつの間にか後輩からライバルになってました。強敵になってました。気付いたら、上野、MAO、吉村。DNA世代でDDTに残ってる人たちは、ライバルになってました。しのぎ削り合ってたんでしょうね、気付いたら。いつの間にか強敵になってた。
――デビュー戦の相手を務めた上野選手と無差別級選手権。彼との歴史を考えたら、彼もここまで来たのかという思いはありますか?
樋口 引きずってはいけないんでしょうけど、純粋なDNAデビューの人同士では、初めての無差別級のタイトルマッチ。その意味では感慨深い。そう思うと、DNAに意味があったのかな。
――ベルトを守ったとして、王者としてこの先の展望は?
樋口 1戦1戦ですね。先のことを考えたら、ダメな男なんで。そのときそのときの王座戦に向けてやっていくだけ。一歩ずつやっていって勝っていければいい。
――タッグ王座は吉村選手の首の負傷による欠場で返上になりましたが、タッグベルト戦線に絡むとしたら吉村選手の復帰を待つ形になりますか?
樋口 ぶっちゃけ考えてることはある。今は言えないですけど。ハリマオに関しては。石田(有輝)を育てないといけないのもあって。石田とハリマオでやっていきたいのはありますけど、そのなかでも一つ考えてることがあって、それは先ですかね。まずは上野との王座戦が終わってからです。



