昨年6月からDDTに参戦し、KO-D無差別級王座挑戦やD王GP出場、さらに路上プロレス参戦と話題を振りまいたクリス・ブルックス。2020年、その彼が1年間の日本移住を決意した。さっそく、その理由や2・23後楽園大会での竹下幸之介との初代DDT UNIVERSAL王座決定戦について語ってもらった。(聞き手/歌代孝正、通訳/Mr.HAKU、1月7日収録)
――去年6月からDDTに参戦して、その前と後ではイメージは変わりましたか?
クリス 変わりました。来日前は、例えばネットで流れてるようなジョーイ・ライアンのチ●コ投げ、エル・ジェネリコの川流れ、イブシ(飯伏幸太)とヨシヒコ、ケニー(・オメガ)と小さな女の子といった、特にアメリカとイギリスの世間が知ってるようなものに近い印象を持っていた。でも実際に来てみるとタケシタ(竹下幸之介)やエンドー(遠藤哲哉)などのとんでもない才能を持ったレスラーがいるということを知ったんだ。彼らは他の一部の日本のレスラーほどの知名度をアメリカやイギリスではまだ有していない。DDTの選手は国際的な観点からいうと、ひどく過小評価されていると思うね。
――DDTに参戦するにつれて、自分が新たに知ったイメージというものをもっと自分から発信していきたいと思いました?
クリス 前回の初参戦の時は、ぞうの国だったりプールだったり、あるいはタケシタに対して辛辣な言葉を投げかけたりとかしたけど、どちらかというとDDTのそういった側面を世界に発信していきたかったという部分もあった。けれども今回の来日ではエンドーやタケシタとの試合だけではなく、D王GPで対戦した全ての相手との試合を世界に発信したかった。この大会での自分の目標は点数を積み上げることも勿論だが、それだけではなく各々との試合とその内容を世界に知ってもらいたかった。
――そういう目標の変化があったからこそ、1年間の移住を決意した?
クリス 心境の変化があったというよりは、バランスを模索している。DDTの破天荒な側面も大事だし、そこに僕なりの貢献もできていると思う。移住の決断に関しては、僕はDDTにおいて、ある役割と責任を担っていると思っている。DDTが時間やお金、労力などを僕につぎ込んでくれた。その代わりに僕はDDTでベストを尽くし、DDTの名前を海外に広め、受けた恩を返さないといけないと感じている。僕もDDTの選手に負けないぐらいやれるということをファンや他の選手に証明したいし、何よりも日本にいると「もっといいレスラーになりたい」という自分のモチベーションが高まっているのを感じる。結果としてこの一年の間、自分のベストのプロレスはDDTで見せることができた。それを1~2ヵ月の短いツアーでやれるならば、一年いたらどれだけレスラーとして成長できるかと考えたし、その過程でDDTにも恩返しができればと思っている。
――しかし、クリス選手であれば、日本に限らず世界のプロモーションからオファーがあってもおかしくないと思いますが、それでも日本の、さらにDDTというプロレス団体が魅力的に映ったということですか。
クリス 正直、初来日の時にもいくつかの他団体からのオファーがあった。でも、自分のスタイルを考えると、それは自分のイギリスでの主催興行にも現れているんだけれども、トラディショナルなプロレスも好きだし、もっと想定外で破天荒なプロレスも好きなので、そのバランスをどう取るかと考えたときに、やっぱりDDTが自分にとって一番合っていると感じたよ。
――異国の地に1年間住むというのは並大抵の気持ちではできないと思います。
クリス こういった決断にはもちろんマイナスの側面もあるけど、今回に関してはプラスの側面の方がはるかに大きいんだ。日本に来ると自分のモチベーションが高まっているのがわかるし、自分が成長するペースが早まっているのも感じる。この数年間、感じたことのないレベルで、だ。今まではリスクを取らず、イギリスにとどまってローカルなインディーシーンを大切にしてきたけど、自分の友達たちがどんどん世界に飛び出してステップアップしているのを見て、自分も、自分の人生で何かを成し遂げるのであれば勇気をもって飛び出す必要があると感じた。だから確かに大変な決断だったけど、楽しみな気持ちの方が大きいよ。
――なるほど。
クリス たぶんどこかの時点で、自分の人生の中心にプロレスを据えることを決めたんだ。であれば、自分のキャリアや成長にとってベストな選択なのであれば、他国に移住することに恐れはない。他のどの国で起こっていることよりも、今ここで起こっていることが僕にとって一番重要なんだ。むしろ日本を離れて帰国している間の機会損失の方が怖いよ(笑)。
――ウィル・オスプレイ選手といった仲間たちが日本で活躍するのは刺激になりますか。
クリス オスプレイやドリュー・パーカーであったり、あとはフロリダに移住したNXTのピート・ダンなんかは同じ町の出身で、15歳ぐらいの頃から知ってるような連中が成功しているのを見るのは嬉しいよ。一方で地元ティプトンのアパートに住んでインディーの試合を月12試合ぐらいやってたら……レスラーが現役でいられる時間は限られている。僕ももう28歳だし、その間にやれるだけのことをやらないんだったら、何のためにレスラーをやってるのかわからないよ。
――移住初戦の2・23後楽園大会ではDDT UNIVERSAL王座を竹下選手と争うことになりました。あらためてどういう試合にしたいですか?
クリス 各ベルトにはそれぞれの色があって、ある程度予想や期待をされるスタイルがある。UNIVERSAL王座の特色というものを作っていかなければならないし、どこかのインターコンチネンタル王座みたいに世界王座の下の二番手のベルトであるとの印象を与えたくない。そこは明確に、このベルトが独自の存在となるようにしていきたい。
――竹下選手とはKO-D無差別級のベルトを一度争いましたが、今回は同じ対戦相手と違うベルトを争うことになります。その部分で試合内容に違いはあったりしますか。
クリス そもそもタケシタとのKO-D王座戦は他のKO-D王座戦とは趣きが違ったと思うし、さらに言うと2回目のタケシタとの試合も、破天荒だった1回目と比べると、より純粋なプロレスだったという意味でテイストが違っていた。僕の今のDDTでの目標はその2つのスタイルの間の最適なバランスを見つける事なので、もしかしたらUNIVERSAL王座戦というのは、その2つのスタイルを一つの試合の中でバランスを取る最適解になるのかも知れない。
――最後に、日本に一年間住むことになりますが、プロレス以外で何かやりたいことはありますか?
クリス 日本語を覚えたい。プロレスの次に楽しみにしているよ。今までもアプリとかを使って勉強しようとしてみたけど、今までは会話中心に勉強していたので、これからは日本語を読めるになりたい。先日、タカギサンが「日本にいたら試合のない時は暇になるけど退屈にならない?」って聞いてきたんだけど、それはイギリスにいても同じだからね(笑)。日本にいれば、文字だけでもひらがな、カタカナ、漢字の3つを覚えないといけないし、言葉だけでなく文化も体験して学ばないといけないからやることはたくさんあるよ。
――大変そうですね。
クリス でも世の中には、東京で1週間過ごすためだけに何年間も貯金をしてやっと日本に来られて、その短い期間にいろんなことをとにかく詰め込んだ旅行をするという人がたくさんいる中で、自分は日本に1年間もいることができて、しかも大好きなプロレスをしながら過ごすことができるというのは、この上なく幸せなことなんだ。去年の1月に初来日して大好きになったこの国で、これから色々な体験をしたり、文化にどっぷりと浸かることができるというのは楽しみだよ。
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