昨年10月から2ヵ月間の短期イギリス遠征をおこなったMAO。マイク・ベイリーとのMoonlight Expressでルチャ・ブラザーズと対戦したほか、SWEタッグ王座も奪取と貴重な18試合を経験。道場にも通いブリティッシュ・レスリングを学んだMAOは2・23後楽園でのKO-D無差別級王座挑戦に向けて何を思うか。(聞き手/新井宏、1月18日板橋大会前に収録)
――まず、イギリス遠征のきっかけを教えてください。
MAO ボクのパートナーであるマイク・ベイリーが日本とイギリスを主戦場にしていて、そのつながりから昨年1月、イギリスのファイトクラブプロ(FCP)日本公演にMAOとベイリーで参戦しました。そのときにプロモーターの(マーティン・)ザキさんとお話しをして、2人でイギリスに行きたいと伝えていたんですね。ベイリーもこういうタッグチームをやっているんだとイギリスで売り込みをしていてくれたみたいで、コメントでもことあるごとに“オレたちでイギリスに行くぞ”とずっと言っていたんです。両国や大田区でもそうコメントしました。その関係で、FCPがMAO&ベイリーのMoonlight Expressで呼んでくれたんです。
――Moonlight Expressでの遠征、ということになりますね。
MAO ハイ。Moonlight Expressありきでの遠征で、会社にも2ヵ月認めてもらいました。トータルで18試合ほどして、だいたい15試合がMoonlight Expressでのタッグマッチでしたね。
――イギリスは初めてですか。
MAO そうですね。海外での試合は、昨年のレッスルマニア・ウィークでのニューヨーク以来2回目です。ニューヨークではDDT、EVOLVE、ジョーイ・ライアンの興行に参戦しました。
――イギリスはどうでしたか。
MAO 全体的にカルチャーが違うというか、プロレスのサイコロジーも全然違う。そもそもプロレスのシステムが違いました。向こうはレスリングスクールに行って、その後フリーになる。団体所属という考えがないんですね。しかも選手みんながフラットなんですよね。日本で言う上下関係がないというか、フレンドリー。向こうで日本の選手と会うと久しぶりに“先輩だ”みたいな感じで(笑)。
――参戦した団体は、FCP、RPW(レボリューションプロレスリング)と……。
MAO あとはアイルランドのOTT(オーバー・ザ・トップ・レスリング)とか、ベルギーのRAW(リレントレス・オルタナティブ・レスリング)にも行きました。そこは前もってベイリーが売り込んでいてくれたので、フットワーク軽くできましたね。
――2019年11月3日にはRPWロンドン大会でSWEタッグ王座を奪取しましたね。
MAO ハイ。JKムーディー&ケイン・カーン組から取りました。その試合は向こうで初めてのメインイベントで、会場はコックピットという日本で言う新木場(1stRING)みたいなところでした。相手の2人ともボクが滞在していたところの近くに住んでいて、一緒に車で移動もしていたんです。お互いに知っていたので、試合でヘンな緊張はなかったですね。いがみ合いとかもなく、ふだん以上にリラックスじゃないですけど、ホントにスポーツライクに闘えたかなと思います。
――海外でベルトを巻いてみてどうでしたか。
MAO なんか、わけわかんないままベルトを取ってしまったというような感じでした(笑)。
――その後、11月24日のRPWベスナルグリーン大会でRPWタッグ王座とSWEタッグ王座のダブルタイトルマッチをおこないましたよね。SWE王者がMoonlight Expressで、RPW王者がランペイジ・ブラウン&グレート・オーカーン組。オーカーンは新日本から海外修行中の岡倫之選手の変身です。
MAO けっこう大きな会場でフルハウスでした。盛り上がりもよかったです。Moonlight Expressっていつもスピーディーに動く感じなんですけど、この試合ではベイリーも真っ向から蹴っていったし、ボクもオーカーン選手と正面からチョップで打ち合ってみたりとか、日本のプロレスに寄った感じの無骨な闘いができた上で負けてしまったので、悔いはないです。もしそこでタッグ2冠になって日本に持ってきたら、日本でいろいろできたのかもしれないですけど(苦笑)。
――新日本の選手と当たれたというのも貴重な体験だったのでは?
MAO そうですね。バックステージでもイギリス修行中の海野翔太選手と会ったりできたので、日本にいたらこういうことはできないだろうなと思いつつ、いい経験したなと思いました。
――なるほど。また、現地ではメキシコ人レスラーとも闘ったそうですね。
MAO ハイ。フェニックス&ペンタゴンJrのルチャ・ブラザーズと対戦しました(19年11月29日FCPウォルバーハンプトン)。むかしからすごかったし、いまはAEWで名を馳せている世界的なタッグチームですよね。そういうチームとは向こうに行かないと当たれないので、ホントによかったなと思います。試合をしてみていろんな発見がありました。
――どんな発見がありましたか。
MAO メキシカンって、基本的に感じてる重力がなんか違うんですよ。
――重力が違う?
MAO 持ち上げてるこっちが軽く感じる。本人たちが動ける秘訣ってそういうことなのかなって思いました。こっちが攻めるために持ち上げたりすると、異常に軽く感じたりするんですよ。でも体重は体感よりもずっとあるんです。決してウェートが軽いわけではないんですけど。骨の密度が薄いんですかね(笑)。
――なにか特有なものがあるんでしょうね。では、現在のイギリスマット界はMAO選手の目にどう映りましたか。
MAO (いろいろな国の)ミックスですね。日本も含めて、アメリカン・インディースタイルがたぶん主流なんですけど。あと、向こうではボクみたいな日本人が行くとジャパニーズ・ストロングスタイルという言葉だけが先に出ちゃう。向こうからしたらそれが日本のプロレスのイメージなんでしょう。たとえばかつての全日本の四天王プロレスから、いまの新日本プロレスみたいな。いわゆるストロングスタイルの解釈がそんな感じ。ボクにそれを求められたりするんですけど、ボクはべつにそういうスタイルでは売っていないので、そこでどうやって闘っていくかが難しいところではありましたね。
――どう対処していったのでしょうか。
MAO ボクはどっちかというと真っ向からいかないというか、サプライズな動きに重きを置いているんです。試合中にパッと思いついたらやっちゃう。そんなサプライズを常に求めているんですね。でもあえて期待に応えるために、チョップ合戦をやってみたりとかはしていましたね。お客さんのためにというのもあるし、自分のためにも。
――ファンの反応はどうでしたか。
MAO ボクがよくやる動きではあるんですけど、向こうでは新鮮な動きというのが多々あったみたいです。たとえば女子選手がよくやるブリッジでカバーを抜けるのなんかは、向こうではなじみがないみたいでファンは喜んでましたね。
――2ヵ月の遠征を終えて、どういうところが変わった、成長したと思いますか。
MAO プロレスの考え方はちょっと変わった気がします。また、技だけパクって帰ってくるようなことはしたくなかったので、自分のためにもそうはならないよう心がけました。細かい技術とか平日はFCP道場で練習して、週末は試合をする日々を送っていました。道場で細かいブリティッシュ・レスリングを教えてもらったり。相手の肩をマットにつけて3カウントを奪う技術、イギリスの伝統的スタイルから相手をコントロールする技術。手首をひとつ取って相手の動きをコントロールするっていうところは学んできたと思います。日本の細かい技術も通用するんですけど、イギリスならではの伝統的技術は勉強になりましたね。ただ、リング上では死んでる状態。ボクたちが思うような伝統的なものはほぼ見られなかったです。
――実際の試合ではあまり見られないということですよね。
MAO そうです。練習する選手はいるけれども、リング上であまり見られない。隠しているというか、たまに渋いおっちゃんがやってたりするんですけど。
――リング上で披露されないのは、現在のファンにウケないからですよね。
MAO そういうことだと思います。向こうのプロレスのニーズに合っていない。向こうと日本では会場の雰囲気が決定的に違ってました。みんなプロレスを見るためだけに会場には来ていないんですよ。おしゃべりを楽しみに来ていたりとか、お酒を飲みに来ていたりとか。そういうところが日本とは違いました。
――イベントの雰囲気を楽しみに来ている感じですよね。
MAO そうなんです。端っこでビール飲みながら立ち話しをしてて、なにか起こるとリングの方を振り向いたりとか。日本でやってるような細かいレスリングやっても興味持ってくれないんです。そういう背景があって独自のスタイルがリング上では見られなくなってきたのかなと思いました。日本ってイスに座って全員がリング上を集中して見ている。隅っこで立ち話してる人ってあまりいない。日本では細かい技術まで見てくれる。なので、向こうの技術を日本に持ってくる分にはすごくいいかなと考えたので、頑張って練習してきました。
――そういった経験をして帰国。いきなりKO-D無差別級王座への挑戦を表明したわけですが。
MAO いまのボクとベイリーならすぐにKO-Dタッグを取れると思っていたんです。遠征を経て2人のムーブがさらに強くなった気がしたし、いまのMoonlight Expressだったら前にベルトを持っていたとき以上のことができる。もっと高いところでもっといいチームとやって、取って防衛していけるとの自信が明確にありました。だけど(宅配)業者にベイリーのビザを紛失されるという、スーパーレアケースなことが起ってしまい(苦笑)。
――ベイリー選手の来日が延期になってしまった。
MAO ハイ。代わりのタッグパートナーを探すというのも一瞬考えたんですけど、それは違うなと。ほかの誰かと挑戦するとなっても自分も気が入らないし、お客さんも見づらい。だったら次にベイリーが来たとき絶対に狙おうと。
――タッグ王座はベイリーが戻ってくるまで待つと。
MAO ハイ。ベイリーの方から「ゴメンネ、マオチャン」って連絡が来ました。タッグ以外にもベイリーがEXTREME級王座に挑戦して、取ろうが負けようがその次にボクがいこうと思っていたんです。ベイリーの後に自分が挑戦表明しようと思っていたんですよ。それなのに、EXTREMEのプランさえなくなってしまった。でも、せっかくの凱旋。ボクのキャリアで初めての凱旋帰国なんだからトップの無差別を狙ってみるのもいいんじゃないかと考えたんですね。いままで自分の気持ちがKO-D無差別に向いたことがなかったんです。それがいま、初めて向いてるなって思えた。
――自分に自信がついたから?
MAO おそらくそういうことだと思います。
――勢いもあるだろうと。
MAO ハイ。いままでは無差別という考えがなかったですけど、ここにきて初めて自分の気持ちが向いている。そう感じたんで、これはいくしかないと。
――ただ、2・23後楽園で誰がチャンピオンかわからないですよね(インタビュー収録は1月18日のもの)。1・26後楽園でHARASHIMA選手が防衛するか、それともD王GP覇者の田中将斗選手が新王者になりMAO選手の挑戦を受けるのか。
MAO どっちがきても、誰がきてもラクな闘いには絶対にならないです。KO-D無差別のベルトを持っているということはかなりの実力者ということですから一筋縄では絶対にいかないし、絶対に辛い闘いになるので、誰がきてもいいなと。それって必ずしもヤケクソという意味ではなくて、自分で言うのもなんですけど、なにかワンチャンス大きなものを引き寄せる力というのは持ってると思うんです。もしかしたらMAOなら勝てるんじゃないかと思わせたいし、自分もそう思ってる。ホントに試合にならないと自分がなにを閃くかわからない。もしかしたらなにか閃いて両肩をマットにつけて3カウント取れるかもしれない。要はいま、自分を信じられるようになったかなと思うんですね。
――イギリスで学んだテクニックを活かせれば3カウント分、相手の両肩をマットにつけられる?
MAO それも考えてます。あとはそのときの自分、いまの自分を信じてるというか、その試合のときの自分を信じている、閃きを信じてます。
☆2月23日後楽園大会のチケットは好評発売中!
https://www.ddtpro.com/schedules/12801



