D王GP初出場にして負け知らずのまま公式戦を突破した田中将斗。キャリア26年、46歳のベテランは弾丸エルボーを武器にDDTマットを席巻した。他団体所属が優勝となればDDTとしてはバッドエンドだが、当の本人は「余計に燃えるものがあります」とほくそ笑んだ。(聞き手/歌代孝正)
――D王公式戦を振り返っていかがでした?
田中 簡単に攻略できる試合は一つもなかったです。もちろん出るにあたって全勝で優勝するというのは最初から言ってきましたけど、一人ひとりスタイルの違う選手が多かったので、攻略するにはけっこう難しかったですね。
――その中でも印象に残った闘いは?
田中 すべてですね。タイプがみんな違うので。
――全員が初シングルだったわけですが、どういう対策を取っていたのでしょうか。
田中 対策はあまりしないんですよ。というのは海外に行くことが昔もよくあったし、今もちょいちょい行ったりするんですけど、そういう時はだいたい初めて当たる選手が結構多いんですね。そういう経験が今も生きているからか、初めて当たる選手でも全然苦にならないし。どういうようなことをしてくるのかわからない怖さはありますけど、逆にそこが楽しめるというか。そういうのに対応できた時はレスラーとして一つレベルが上がると思うんですよね。
――対応できるのは長年のキャリアの積み重ねというのもあるでしょうし。
田中 それはあると思うんです。いろんなことを経験してきたので。日本にある団体もほぼ出させてもらいましたし、海外にも呼んでもらっていろんな国にも行ったし。
――そういう経験している田中選手から、DDTプロレスという団体はどう映りましたか。
田中 いろんなスタイルがありますよね。若い人も頑張っている。また年齢の近い坂口(征夫)さんもすごいし。跳んだりする選手もいるし、(男色)ディーノさんみたいな面白い選手もいるし。いろんなことを経験できる団体の一つではありますね。
――若い選手が活躍する中だと、ベテランの意地というのもありますか。
田中 それはありますね。自分の団体でも簡単に世代交代させないと思っています。「トップを譲ってやれよ」という声もたまに耳に入ってくる時もあるんですけど、僕としては「実力で越えられるなら、どんどん越えていっていい」と。「田中将斗よりすごいことをやれるなら、お客さんも納得できるなら越えていっていいよ」と。僕は簡単にはそうさせたくない。
――その中で優勝決定戦では若い遠藤哲哉選手と対戦します。
田中 ワクワクしますよね。今回当たった人みんな、シングルが初めてなので。その中でタッグ(2017年12・30後楽園「DAMNATION不法集会vol.2」遠藤&竹田誠志vs竹下幸之介&田中)でもほとんど絡んでないですよね。DDTの若い選手の中のほぼトップじゃないですか。そういう人とDDTの年内最終興行のメインでやれるのは誇りに思うし。負けたら今までリーグ戦で闘ってきたのが無になってしまう。
――竹下幸之介、遠藤哲哉という名前は田中選手の耳にも入っていた。
田中 雑誌やSNSで見たりすると、その2人はすごく名前が出てきて目についていました。
――遠藤選手の闘いは見てました?
田中 見ようと思って見たわけじゃないですけど、サムライTVのニュースで見たりして「きれいに跳んだりするな」と。
――実際に闘ってみてどういう印象を持ちました?
田中 ハヤブサさんに技のきれいさが似ているなと。威力はじっくり味わわないとわからないですけど、技がきれいだし、色は黒いし。ベルトも持っていたんですよね?
――KO-D無差別のベルトは巻いてました。
田中 だから強いことはわかってます。
――ZERO1所属の田中選手が優勝したらDDTプロレスとしては面白くないでしょうね。
田中 そういうのを聞くと余計に燃えるものがありますね。
――公式戦では現二冠王者のHARASHIMA選手だけは仕留めきれませんでした。
田中 チャンピオンというのはDDTのトップですから。「他団体からポッと出てきたヤツに負けてなるか」というチャンピオンの意地を感じられましたね。スライディングDにいくにはスピードを乗せなきゃいけないから、HARASHIMA選手は足を攻めてきたんでしょうし。そういう巧さはありましたね。
――優勝したら、その先のベルトまで見えるのかなと。
田中 最終公式戦で引き分けた時点でチャンピオンがリング上でボソッと「優勝したら……」みたいな感じのことは言ってたので。僕が優勝した時にHARASHIMA選手がどう言うかは気になります。まずはD王になってみないとちゃんとした発言権はないかなと。
――そういえば今日(12月17日)、田中選手が日本人で初めてECWヘビー級王座を獲得した日だったんですね。
田中 20年前にベルト獲ってたんですねえ。あの時と同じような感じの練習と食生活をしていたらここまで持ってないと思います。
――意識が変わったから肉体改造も取り組んだわけでしょうし。
田中 ありがたいことに練習とプロレスの試合をする環境にいれたから、46歳を超えても一線でやっていけるんだと思います。ほかの仕事しながら練習して試合してという生活だったらここまでできたという自信はないですね。
――常に第一線で闘うためにコンディション面の調整も怠らないわけですよね。
田中 リングに上がってお客さんが見に来てくれている以上、恥ずかしい恰好では上がれないし。リングに上がっての動きも「田中将斗はストイックでスピードもあって、パワフルで攻撃力もすごい」というイメージを僕は与えているつもりだし、見に来てくれた人にそれを感じてもらいたいし。それは日々努力しないと出せないですよ。そういうのが自分のプレッシャーにもなっています。
――そのイメージを保ち続けることはすごく難しいと思いますが……。
田中 「田中さん、すごいですね」ってよく言われるんですけど、僕はプロレスで飯を食っているし、それは当たり前だと思うんです。サラリーマンの方は朝、電車乗って会社に向かって定時まで仕事して、残業して電車乗って帰る。僕はそういう人たちのほうがすごいと思います。僕は好きなプロレスをやって、プロレスラーとはこういうものだと思ってやっているので。だから苦にはならないです。
――プロ意識ですね。
田中 それは大切だと思いますよ。46歳になったら年齢的にも引退が近づいてくるわけじゃないですか。「前と比べて全然動きがダメになったな」と耳にしたら僕もそろそろ引退かなと思うけど、「田中さん、すごいね」って言われると、「俺、まだまだできんじゃん!」って。「46歳でもそんな動きしていたら、まだまだできるんじゃない?」と思わせたいし。
――今回のD王を通じて、所属するZERO1にいかにこの経験をフィードバックしていくことも課題かと思います。
田中 ZERO1を背負ってというのはないですけど、火祭りの最多優勝者というのはあるし、同じリーグ戦を比べるものじゃないかもしれないですけど、火祭り最多優勝者というプライドを持って上がっているので。DDTファンの人って僕の試合を見たことない人がけっこう多かったと思うんですよ。でも反応とか見てると何かを植え付けられたかなというのはあるし、少しでもZERO1のリングに来てくれればいいかなと思います。



