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【秋山準インタビュー】秋山準、4年ぶりのKO-D無差別級獲りへ…樋口がチャンピオンだから、もう一度自分がベルトを巻くべきだと思った

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  • 「WERESTLE PETER PAN【DAY1】」8・30ひがしんアリーナのメインイベントで樋口和貞のKO-D無差別級王座に挑戦する秋山準。ベテランとしての存在感を発揮しつつ、最高峰の王座戦線には4年も絡んでこなかった。ここに来てその腰を上げたのは、どんな意図があってのことだったのか。(聞き手・鈴木健.txt)

    僕は好きな人間ほど厳しくいく
    俺が俺がが見えない連中の意識を変える

    ――秋山さんがKO-D無差別級王座に絡むのは2021年8月21日、富士通スタジアム川崎で竹下幸之介選手に明け渡して以来、4年ぶりとなります。
    秋山 いやあ、けっこう時間経っていましたね。ついこの間という感じなんですけど、年取ると時間が経つのが早いですよ。
    ――それは充実しているということでしょうから、いいことなのでは。4年という空白期間がありながらの挑戦表明ということで、7・13後楽園で樋口和貞選手にアピールした時はHARASHIMA選手の頑張りを見て「重い腰が動いた」という言い回しをしていました。
    秋山 もちろんHARASHIMA選手の頑張りを見たというもありましたよ。試合の前の時点で、HARASHIMA選手が負けたら俺がいこうって決めていたんで。
    ――それは秋山さんの中で、機運が来ているような感触があったんでしょうか。
    秋山 機運というよりも、自分の思う選手権試合を樋口とならできるというのがあったんで、じゃあ俺だよなって。
    ――それはこの4年間でチャンピオンになったほかの選手とは違う感覚ですか。
    秋山 そうかもしれないですね。自分が次に挑戦するとしたら、樋口か納谷の時だと思っていました。納谷選手はまだそこ(無差別級戴冠)まで到達してないですけど、かなり前からそれは思っていたことですね。
    ――その2人の名をあげたということは、やはり体の大きな選手と闘ってこそのKO-D無差別級戦という受け取り方ですか。
    秋山 そう。負けることを考えたらアレですけど、勝っても負けても納得できる、小細工なしでバンバンぶつかり合えることができるとしたらそういうタイプっていうのがあったんで。
    ――秋山さんがベルトを保持していた時に樋口選手の挑戦を退けています(2021年3月28日、後楽園。初防衛に成功したあと、敗者・樋口にベルトを巻かせる)。その頃と比べて現在の樋口選手はどう映っていますか。
    秋山 基本的にはそんなに変わっていないですけど、首をケガしたのもあってかあの頃より慎重になったようには見えます。それは、もっと細かく試合を見られるようになったというか。チーム(ハリマオ)としても、下の選手に対しより目がいくようになったんじゃないですかね。それが個人の試合の中でどういう形で影響するかはまだやっていないんでわからないけど。視野が広くなった分いいように出るのか、それとも気を遣いすぎてダメになるのかは、今の時点ではね。それがプラスになっていれば、地力が上がっているでしょう。
    ――以前はどちらかというと直線型でした。
    秋山 その方が怖くないんだけど、視界が広くなっているとそれだけ対応力は上がっているかもわからないし、上がっていないかもしれない。
    ――秋山さんがDDTの人間になった以後、樋口選手とは継続的な物語が描かれる関係にあります。何か特別な思い入れのある相手になりますか。
    秋山 基本的に、好きな人間ですね、うん。人間的には好きです。僕に対してもそうだけど、人に対してまっすぐに気持ちを表せられる人間であり、礼儀正しくもあり、一本筋が通っている。ただ、僕は好きな人間ほど厳しくいくんですよ、それがいいのか悪いのかはともかく。好きな対象って観察しますよね。そうするといろんなものが見えてくる。それが試合にも出る。
    ――樋口選手は言葉で表現や主張をするタイプではないですよね。
    秋山 あまりベラベラ喋らない方が、実直さを感じられる。そういうこと自体がもう、今の世の中では古いのかもしれないけど、どんなことに対してもまっすぐに対応する。それも先輩だけでなく後輩にもやる男。
    ――その好きな人間に、負けたのだからベルトを巻けとやれるのは逆に凄いです。
    秋山 それも、こいつならステップにして、クソッ!と思って来られる人間にはやりますよ。それができないやつにはハナからやらない。ただ単にかわいがるというか、引っ張り上げるよりも、こういうやり方をした方がこいつはいいなと思う人間に対しては、バッカバカいきますよ。
    ――実際、2022年7月3日のKING OF DDT準決勝では樋口選手の執念が上回り、秋山さんから勝利をあげました。
    秋山 もちろん悔しさはありましたけど、あれはよかったかなと思えた一つでしたよね。
    ――お話を聞かせていただくと、本来であればその一戦から3年以上も空けることなくもっと早く一騎打ちをやってもよかった関係性だと思います。
    秋山 だけど彼もケガして休んでいたし、自分自身も試合に出続けてはいたけれども不調の時もあったんで。
    ――秋山さんが不調? 見た限りはまったく感じられませんでした。
    秋山 もちろん、わかるようにはやらないから。でも、実際は悪い箇所はずっと悪いままで、体調の方はよくなったり悪くなったりの繰り返し。だけど今はわりと安定していていけるという思いがあるんで、そこはお互いのタイミングが合致したのが今回ということになるんでしょうね。樋口がチャンピオンで、首のケガで休んでいながら復帰するやすぐ最前線に戻ってきて頑張っている。それが俺に火をつけたのかもしれない。
    ――この数ヵ月は16歳の佐藤大地選手とKO-Dタッグを狙ったこともあり、組む形で育てています。その中で、自分よりも39歳も若い大地選手から刺激を受けた部分もあるのでしょうか。
    秋山 大地の頑張りもあって、試合が終わったらあいつも毎回僕のところにアドバイスを求めにきて、話をしているうちにまだこいつらの壁にならなきゃいけないなって思わせてくれたところは確かにあります。あいつがDDTに来てからは、僕も道場へ練習を見にいくようになったし。この年になると、自分自身だけのものではなかなか燃えてこないから、いろんなところから刺激をもらうことでヨシ!ってなれる。
    ――いや、今回秋山さんが名乗りをあげた時に、このタイミングでというのが見えづらかったというのが正直なところだったんです。言うなれば、ベルトがあってもなくても秋山準は秋山準であり得るわけで、その中でもう一度KO-D無差別級のベルトがほしいと思った動機はなんだったのかというのが確認したいところだったんです。
    秋山 それはやっぱり、樋口がチャンピオンということが第一ですよね。もう一段階彼には上がってもらいたいし、そのためにはもう一度僕の腰にベルトを巻かせたいんで。DDTって、どうしても楽しいとか面白いという方向で見られるじゃないですか。でも、プロレスでも勝負できるというところをファンだけでなくマスコミの皆さんにも見てほしいんですよ。DDTもやるじゃんっていうことを樋口が見せるために、もう一段階ステップアップするために、ここで俺がもう一回ベルトを獲るべきだというのが理由ですよね。
    ――自分自身が何かを成し得るためにベルトが必要という位置づけではないんですね。
    秋山 僕はもう、そういうのはないですよ。何かのためにとか、そういうのはね。僕がチャンピオンになることでデカい納谷や飯野に「こんなおっさんに任せられるか」と思ってもらえたらそれでいいし、大地だって、僕の年になるのにあと39年あるわけじゃないですか。それでも早くトップにいくに越したことはないんで。あいつがベルトを獲ったら、隣にチャンピオンがいることで僕自身も気持ちの持ち方が変わるだろうし。
    ――秋山準がエサになると。
    秋山 僕が若くて、今の僕ぐらいの年の人間がチャンピオンだったらそう思いますよ。あんなおっさんに巻かせてどうすんだよ。俺がいくべきだろうって。どうしても大きい人間って、俺が俺がっていう姿勢が見えてこない気がする。今回、樋口に勝ったら翌日は上野とやることが決まっているけど、上野やMAOといったあのへんの人間は俺が俺がをすごく出して目立とうとしている。それが体のデカいやつほど見えない。
    ――ガツガツしなくても自分ならいつでもいけるという、余裕のようなものなんでしょうね。
    秋山 だから、そういう連中の意識を変えるためのベルト獲りということです。
    ――獲ったら肉体派の選手を相手に防衛を続けるという前提で臨むわけですね。獲ったら獲ったでリスクが生じます。
    秋山 大変だろうけど、それによって僕自身のモチベーションも上がるからいいんですよ。ここまで来たら、体がどうなろうといいって思っています。潰されたら潰されて仕方ないし、潰れたら終わりの時だろうし。だけど、まだまだおまえらに潰されるわけねえだろ!って思える自分もいる。そこは俺自身との勝負になるんでしょうね。この年になるとシンドいのは嫌っていうのが本音ですよ。でもやっぱり自分に刺激を与えないと、どんどん老け込むんで。今回のベルトを獲るための闘いは刺激とは別次元のものですけど、DDTにはいろんな刺激がありますから。平田くんなんて、いろいろと体を使い、頭を使って考えているよなあって何度も思わせられる。
  • ハッピーエンドのDDTで僕の色を
    見せることによって外に届かせる

    ――タイトル挑戦に関しては、私はどちらかというとUNIVERSAL王座を狙うのではと思っていたんです。鈴木みのるが現王者というのもありますし、プロレスリングNOAH時代に白GHCのように、秋山さんが持つことで独自のカラーを築けると思ったからです。
    秋山 ああ、それがわかりやすいっちゃあわかりやすいですよね。でも…記憶ってあるじゃないですか。それと闘わなきゃいけなくなる。それよりも新しい物語を紡いでいった方が僕的には刺激があるし、ラクっていうわけじゃないけどそっちの方が新鮮だしね。白GHCの時は、ああいうのがなかったから作ったけど、DDTにはもうあるから。別に俺が作らなくてもみんなが勝手に(UNIVERSALで)いろいろやっているので、そこにいく必要もないですよ。それよりも、団体の最高峰のベルトにいった方が俺自身、刺激の上積みがある。
    ――最高峰を持てば、おのずと最前線へ立つことになります。
    秋山 壁でありたいんですよ。若いやつが来て、その全部を弾き返すぐらいの存在でありたいんで。今まで、もう何年もそういう役割はあったと思うけど、まだ俺はおまえらの壁でいられるんだぞっていう。それが結果的にDDTのためになればいい。まだ辛うじてプロレス界には俺の名前が少しはあると思うんで、その間に見せておきたい。
    ――現状のDDTにおいて、モノ足りない部分は感じていますか。
    秋山 その足りない部分がある意味、DDTの強みであったりするんでそこは難しいですね。ただ、ファンの人の表情を見たらこれが正解なのかなと思うし…あの、DDTってほぼハッピーエンドで終わるじゃないですか。
    ――はい。
    秋山 俺は最初の頃、100%ってどうなんだろう…って思っていたんですけど、やっぱりファンの人たちが100%喜んでいるならDDTはそれを伸ばしていけばいいんじゃないかって今は思っているんです。別にどこかで裏切って、お客さんが反発して、でもそれを最終的にはいい方向に持っていくっていうのは、DDTには必要ないんだなと。ただ、僕のテイスト的にスターネスという名前があるぐらいだから、厳しくいくところはあるんで。
    ――それこそ樋口選手にベルトを巻かるところなどは、単にハッピーエンドではないですよね。
    秋山 ベルトを巻かせておいてハッピーエンドかって、それはどうかってなるでしょ。だから、そういうやり方で僕の色を見せつつハッピーエンドというDDTの色に合わせていくのがいいんじゃないかと今は思っています。
    ――いや、DDTだからこそ秋山さんの色は必要だと思います。青木真也選手もその役割を担っているというか。
    秋山 必要というか、僕自身がそういう人間なんで。試合が終わると気持ちが熱くなっているじゃないですか。その時の感情でバーッといってしまう。試合をやる前に考えていたことが、試合中にカチンと来ることがあるともう違う方向にいっちゃう。それでまた賛否両論起こるようなことを言っちゃうから。
    ――樋口選手からベルトを獲った場合、翌日に対戦する上野選手などハッピーエンドのスペシャリストですよね。
    秋山 そうですよね。ただ、ハッピーエンドってね、外にはなかなか届かないんですよ。その場にいる人たちの満足度は高くても、感じることとそれ以外に伝わるものって違うんですよね。それよりも賛否両論起こるようなことの方が外にまで届く。
    ――ああ、わかります。
    秋山 だからみんな、それも頭に入れた上でお客さんをハッピーにさせられたらいいんでしょうけど、そこが難しいところですよね。お客さんを増やすには外に広がっていかなければいけないんだから。
    ――それこそ外に届くという意味ではマッスル坂井vs鈴木みのる、男色ディーノvs棚橋弘至というカードが組まれていてKO-D無差別級戦と比較される2日間となります。
    秋山 本当はディーノvs棚橋がおこなわれる日に僕と樋口の試合でやる方がやりやすかったんですけど。まあ、そうやって自分が一番持っていこうとする人間がそこにいた方がいいです。
    ――秋山さんがベルトを獲った時、ひがしんアリーナがどういう空気になるか興味深いです。
    秋山 それはもう、絶対ハッピーエンドですよ。

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