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【インタビュー】1・25後楽園2冠3WAY戦を前にクリス・ブルックスへ訊く「それってチャンピオンのやることなの?に対する抵抗。やりづらくなるのは歓迎」

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  • 1・25後楽園ホールにてKO-D無差別級&DDT UNIVERSAL2冠王者・上野勇希へ、佐々木大輔とともにチャレンジするクリス・ブルックス。変則ルールによるタイトルマッチを前に、新日本1・4東京ドームへ出場し、新ユニット「FANTÔMES DRAMATIC(ファントム・ドラマティック)」もスタートさせた。このタイミングでの王座挑戦には、どんなテーマがあるのか。(聞き手・鈴木健.txt/通訳・Mr. HAKU)
  • イチガヤの3日後に4万人の前で試合。
    このコントラストが僕は楽しいんだ

    ――まずは新日本プロレスの1・4東京ドーム大会へ出場したことからお聞かせください。試合後のバックステージコメントでは「自分がドームで試合をすることは想像もしていなかった」と言っていました。
    クリス ストレンジ! 奇妙な体験って言えばいいかな。というのも、DDTのビッグマッチやタイトルマッチだったらある程度自分で想像できる分、現実感から緊張に見舞われるわけだけど、今回に関してはそもそも想像がつかないから緊張のしようがなくて、どこのタイミングで緊張するんだろうと思っていたら、それがないまま時間が過ぎ、当日が来て、試合に向かっていたんだ。その意味で普段とは違う感覚だった。
    ――自分自身が4万人を超えるオーディンスの前でパフォーマンスすることができた事実を客観的にどう受けとめているのでしょう。
    クリス すべての物事は、起こった次の瞬間には過ぎ去っていくものだと思っているけれど、だからといって経験したことそのものを過小評価するつもりはないから、言うまでもなく自分にとって過去最大の出来事であるという認識はしている。緊張しなかったって言ったけど、あれほどの大観衆の前で緊張しなかったことには自信を持てたよね。だから今回の経験は、今後の自分自身に対して言い聞かせられるものになったと思うんだ。リョーゴクでメインを張る時にこのドームを思い起こして「クリス、おまえなら大丈夫だ」って自分に言える。あとは、プロとして成長する上で必要な過程でもあったんだろうね。あの日、同じくドームのリングへ立つTAKESHITAと話したんだけど、彼は「ここよりも大きいところでやっているから別に緊張していないよ」って言うんだ。ウェンブリースタジアムのことだ(2023年8月27日、AEWイギリス遠征にて8万人の前で闘う)。ザック・セイバーJr,も、そういうシチュエーションでの経験をする前とあとでは自分のたたずまいのようなものが変わったと言っていた。そういう場が、自分にも訪れた日だったんだ。プロレスラーとして必要な過程に踏み込めたのは、感謝すべきことなんだと思う。
    ――試合を終えたあと、達成感は得られましたか。
    クリス ああ、それも緊張感と同じで、何かをなし得たんだという感覚にはならなかった。これがDDTの両国へ初めて立った時はそれを夢見て、目標の一つに立ててやってきたから、形になった時は達成感に浸れた。でも今回はそもそも自分がそこへいることすら想像もしていなかったから、達成感を味わうよりも起こったことに対するありがたみだったり、成長につながってよかったという思いだったりが終わってからにじみ出てきた。それは「この瞬間がついに来たぞ!」というものとは、異なるフィーリングでしょ。
    ――となると、クリス選手本人よりもずっとクリス選手を見続けてきたファンの方が感慨深かったのかもしれないですね。
    クリス 僕自身がデカいところよりもミニマムな世界でやる方がお好きという性分だからねえ。そんなクリス・ブルックスを見続けてきてくれた人たちが、そういう小さい会場での僕と東京ドームのリングに上がる僕を頭の中で並べてエモーショナルになるのはよくわかるよ。普段、イチガヤ(チョコプロ)やBAKA GAIJINをやっているシモキタのバーにチケットを買って見に来てくれる人たちの中に、ドームのアリーナやスタンド席まで来てくれたファンもいたと思う。まったく違う両方の景色を見て、よかったと言ってくれたのは僕も嬉しかった。やってみて思ったのは、そんなミニマムな世界でやりつつも、大きなステージをしっかりと務めるのも大切だよなという気づき。それほどプロレスに詳しくない人から話しかけられた時に「今度、東京ドームでやるんです」って言ったら、やっぱり反応が大きかったんだ。東京ドームのリングに上がった自分という説明をこれからはできるようになったわけだけど、そういう側面もプロレスラーとしては必要なんだとわかった。東京ドームでELP(エル・ファンタズモ)と対戦する3日前、1月1日に僕はイチガヤに出たんだけど、世界でもっとも小さいプロレス会場でやった人間が3日後には4万人の前で試合をしたというこのコントラストが、僕にとっては楽しいんだ。大きいところでやれるようになるのも大切だとは、そういう意味です。
    ――勝利をあげてNJPW WORLD TV王座を防衛したファンタズモ選手が、バックステージコメントでとてもパーソナルな思い(イギリス時代、クリスが親身になってくれたこと、自分もクリスも大きな病気と向き合ったこと)を明かしました。
    クリス  我々の個人的な物語について触れてくれたのはありがたいけれど、実はもっとありがたかったことがある。それは、彼が僕らの関係性について試合前はほぼ触れなかったことだ。非公式ではあるけれど、彼はBAKA GAIJINにも個人として来てくれている。それほどの友人同士だからといって「今度、東京ドームがあるからそこで俺たちでやらないか? 俺からニュージャパンに売り込んでみるよ」という道筋はとらなかった。昔からトモダチだからこそ、それを前面に出すと「だからクリスは新日本に呼ばれたのか」となる。そう受け取られぬよう、彼は僕らの関係性を強調しなかったし、僕は僕で自分から動くことによって(新日本12・22後楽園に乱入し、タイトル挑戦を表明)物事を動かした。何よりも大きかったのは、ニュージャパンが僕らのマッチアップに価値を見いだし、東京ドームというステージを提供してくれたことだ。どんなに僕らの間でやろうと言っても、団体がそこに価値があると評価しなかったら実現はしない。
    ――そうですよね。
    クリス 試合前にフレンドであることを強調しなかった分、ファンタズモは終わってからとめどなくあふれ出たのだと思う。そんな彼の姿勢が、僕は嬉しかったんだ。
    ――エル・デスペラード戦、ザック戦はクリス選手自身の強い思いがあって実現しましたが、今回に関しては恩義を感じている分、ファンタズモ選手の思いの方が強かったのかもしれません。
    クリス これも僕の性格によることなんだけど、あまり自分の方からこれを実現させたいと声高に言うタイプではないというのがあって、これまでも周りから「新日本に出たくないの?」「TMDKに入ればいいじゃない」「AEWにはいかないの?」ということをずっと言われてきたにもかかわらず、自分の嗜好に合っていないことには積極的ではなかった。でも今回は彼が望んだことで道が拓けたと思っているし、僕も同じフィーリングになれたから、ああやって動けた。だからELPとクリスの物語としては、これでよかったんだと思います。
    ――これを機に、新日本プロレスには継続的に出たいと思いますか。
    クリス ソレハムズカシイネエ。僕は日本に限らず、また団体を問わずスケジュールが空いていれば毎日でも試合がしたい人間なんで、話があったら飛びつくとは思うよ。ただ、たとえばだけど先にイチガヤが入っている日に「新日本の両国国技館に出てください」と言われたら、そこはあくまで先に決まっていた方を優先するつもり。でも、きっとさくら(えみ)は僕を張り飛ばして言うんだよ。「あんた、何やってんの! 両国に出なさい」って、ハハハ。そうなった場合は、昼と夜で重ならないことを祈るよ。
  • FANTÔMES DRAMATICは
    DDTにおけるオペラ座の怪人

    ――わかりました。次にSCHADENFREUDE Internationalの解散についてお聞かせください。正田壮史選手が抜けたとしても、残ったメンバーで続けようと思えば可能だったはずです。解散という形を選んだのはなぜだったんですか。
    クリス まず一つ、ピークのうちにピリオドを打つじゃないけど、しがみついてでも存続させる努力よりも新しいことに挑戦して、それを大きくしていく努力の方が僕は好きだから。実際、今までもCCKやオリジナルのSCHADENFREUDE、BAKA GAIJINとかいろいろやってきたけど、常に新しいものをクリエイトするために労力を費やすことを楽しんできた。あとは、ブンブンは人間じゃないし、高梨さんも欠場している中でそこに(葛西)陽向が入ってSCHADENFREUDE Internationalの体裁はとれるかもしれないけど、HARASHIMAさんが入るとなるとやはり僕の中では別モノという受け取り方だったんだ。それだったら、まったく新しいユニットにした方が意味のあるものになる。DAMNATIONを見なよ。あまりにメンバーの変遷がありすぎて、結果的に佐々木大輔と不愉快な仲間たちみたいになっているじゃない。僕には、佐々木以外のアイデンティティが失われているようにしか映らない。そうはならないよう、新たなメンバーとまっさらなものを大きくしていくことにチャレンジしようと思ったんだ。
    ――メンバーのセレクトに関して一人ずつ、決め手となったことをご説明ください。
    クリス まず、陽向に関してはどれほどのポテンシャルがあるのかもわからない段階。端的に言ったら何も色がついていないし弱いプロレスラーだ。ただ、無垢の状態にある彼を育てることをこのユニットにおけるテーマの一つにしたかった。それはシャーデンの時も、正田を育てることが主題になっていたのと同じだね。もともとはアントンとマサと僕がいつも一緒にいて、そこに正田がくっついてきた形だったけど、そのうち3人の中で「よし、こいつを育ててみよう」ってなった。とはいうものの、今回は陽向を育てるためにユニットを結成したわけではなく、あくまでもその中で育っていってくれたらいいという位置づけであって主題ではない。
    ――若い人間を育てたいという姿勢は常々持っているんですか。
    クリス D GENERATIONS世代の中で、なぜ陽向なのかというと、札幌遠征の時に彼が僕に近づいてきて「クリスさん、ダメならいいんですけど一度、一緒にご飯を食べていただけますか?」って言われてね。別にダメな理由なんてないからその日の夜にいったんだけど、そこにはMAOやKANON、正田もいて「陽向、ユニットに入るとしたらどこがいい?」って聞いたら「シャーデンです!」って即答だった。それが頭の中にあったんだ。HARASHIMAさんに関しては言うまでもなくDDTのお兄さん的存在であり、ある意味ベルトを超えた存在だよね。だからカッチリとユニットに属しているのではなく場合場合によってどこかに差し込まれるニュートラルな立ち位置に今はいる。髙木さん、ディーノさんと同じようにね。でも、KO-D無差別級王座に挑戦した時を見てもわかるように、まだまだタイトル戦線の最前線でやれる人でしょ。ユニットに入れば、たとえばクリスと組んでタッグのベルトを狙うこともできるし、無差別級を狙うんだったらユニットとしてあと押しができる。僕自身が、そういうHARASHIMAさんを見たいと思った。というのも、この1年ぐらいはHARASHIMAさんと飲む機会が増えて、エビスコでよく一緒になったり、それ以外にも遠征のバスの中で話し込んだり、BAKA GAIJINにも出てもらったりと彼のことをより深く知るようになった。シャーデンの時もそうだったんだけど、僕はユニットって普段も仲のいい者同士の方がうまくいくと思っていて、ここ最近の急接近じゃないけどHARASHIMAさんと一緒にベルトを狙えるような活動をしたいと思ったんだ。
    ――アントーニオ本多選手は変わらずですね。ユニットが変わっても一緒でいたかった?
    クリス アントンはね、僕がDDTに来た最初の頃はHAKUさんが地方巡業に来られなかった時に通訳をしてくれたところから関係が始まっているから。僕が日本語をできなかった時、フレンドリーに話しかけてきてくれてそれがThe癒されるズ(二人のタッグチーム名)につながった。シャーデンを組む前から、重要な試合の時はいつもセコンドについてくれたし。アントンのライブにいくこともあるけど、それほど遊びの方で一緒にはならない。だけどお互いにサポートし合う体制にはなっていて…だって、この厳しく冷酷なプロレス界の中で僕らがアントンのお世話をしなかったら、誰が本多さんのことを気にかけてくれるというんだ!?
    ――これからも創作昔話ごん狐につきあうこととなります。
    クリス そうだね。これからも僕が誤爆を受けることになる。それを承知の上で「新しいユニットのメンバーを紹介します。まず1人目…アントーニオ本多!」というところで「なんだ、変わらないじゃないか!」とひと笑いとれるな、それだけで本多さんを入れる価値があるなと思ったんだ。
    ――出落ちのような笑いをとるためだけに、メンバーとして選んだ。
    クリス いやいや、それだけって言ったら語弊があるよ。僕が単なる思いつきでどんなにくだらないアイデアを出しても本気で向き合ってくれる。そういうアントンが好きなんだ。ちょっと前にアントン、舞台に出たでしょ。その役で口ヒゲを伸ばしていたんだけど、公演が終わったら剃っちゃったんだ。それで僕が「ヒゲ、あった方がいいよ。新ユニットに合わせてちょっとヴィジュアルを変えるべく、伸ばしてみたら?」って言ったら「よし、伸ばす!」と言って、それから剃っていないんだって。それが(ヘラクレス)千賀さんにどことなく似ていてさ…ほら(スマホに保存してある画像を見せる)。
    ――あ、似てる。
    クリス これも最近のことなんだけど、ドロキのイベントにアントンと出た時、お互いのどこが好きかを聞かれたことがあった。僕は信頼できるとか、一緒にいて安心するとかありきたりなことしか言えなくて、何か特定のエピソードが出てこなかった。でも本多さんは急に4年ぐらい前の、静岡での話を持ち出したんだ。僕はまったく憶えていなかったんだけど、二人で会場の外に出て「僕らはプロレスに対しこれほどのストレスやプレッシャーを感じているというのに、世間のみんなはそれぞれの一日を普通に謳歌しているんだよね」というようなことを、僕がボソリと言ったって本多さんは憶えていて。それで「そういうクリスの考え方が素敵だなって思ったんだよ」って言われた時に、この人はほかとはちょっと違うスピリチュアルを備えていて、思考の深さがあるなと感じたんだ。本多さんは他者のことをすごく観察していて、普段はフザケたり面白いことを言っていたりしているところしかみんな見ていないかもしれない。僕も彼が何を考えているのかはわからないのが正直なところだ。だけどそれって僕が理解できないぐらいの深層の部分が存在していることなんだから、そこがいいんだよ。
    ――ブンブンは、もう一緒じゃないんですよね。
    クリス ブンブンは正田とよろしくやっていくんじゃないの? このままブンブンと一緒にゴムパッチンをやり続けたって何も変わらないからね。
    ――ゴムパッチンも新ユニットではやらない?
    クリス うん、やらない。やったらお客さんが喜ぶのはわかりきっているけど、それを続けたらシャーデンと同じになっちゃうし。新しいことをやるのって、それと同じぐらい過去にやってきたことを棄てる作業でもあるんだ。
    ――ユニット名の「FANTÔMES DRAMATIC」は何かからの引用ですか。
    クリス “FANTÔMES”はフランス語で亡霊。だから本当は“DRAMATIC”も英語ではなくフランス語の“DRAMATIQUE”(ドラマティーク)にしようと思ったんだけど、それだとわかりづらくなるだろうと英語のままにした。コンセプトとしては、アントンさんもHARASHIMAさんもDDTの中ではベテランで、自分もそこそこ長くいる。『オペラ座の怪人』も、英語では“The Phantom of the Opera”になるんだけど、オペラ座に長く居ついている怪人のことなんだ。同じように、僕らはDDTにおけるオペラ座の怪人ということ。あとは「ファンドラ」という略称が言いやすい。
    ――かつて、サムライTVのDDTレギュラー中継の番組名が「ドラマティックファンタジア」で「ドラファン」と略されていました。“ドラ”と“ファン”を入れ替えた形ですね。
    クリス あっ、それは今言われて気づいた! 確かに、ドラファンだったよね。
    ――高梨選手が還る場所は、このファンドラという認識でよろしいですか。
    クリス モチロン。ただ、ユニットお披露目の場に同席できなかったから、現時点でメンバーとするのは早急なのかもしれない。復帰する時まで、その席は空けて待っています。
  • 一人の人間にベルトが集まっている
    DDTの現状を変えるのが動機

    ――さて、タイトルマッチですがユニット解散、イッテンヨン出場と大きな動きがあった中で組まれました。
    クリス このタイミングに関しては、自分がどうというよりもDDTの現状を変えたいという動機によるもの。今の景色としては上野が3本、To-yが2本のベルトを持っていて、タッグはSTRANGE LOVE CONNECTIONとThe Apexの間をいったり来たりしているような印象。6人タッグはどこにあるのかよく知らないけど、だいたいDAMNATIONが獲ったり獲られたりしている…これ、変わり映えしないよね。僕自身、今のタイトル戦線に面白味を感じていなかった。だからDDT全体を眺めた上でのアクションだったんだ。一人の人間にベルトが集まると、どうなるか。最近のDDTのオフィシャルSNSを見て気づかないか? 今週、テレビに出演しますだとか『anan』に特集が掲載されますといったリリースが出ると、どれも上野だ。TAKESHITAとのポッドキャストにしてもそう。チャンピオンが話題になったりとりあげられたりするのは当然だから、必然的に3本のベルトを持つ上野に集中する。それは団体全体の視野に立つとけっして面白いことではないと思うんだ。
    ――ベルトは分散した方がいい?
    クリス その方が、より多くの選手にスポットが当たって面白く映る。
    ――彰人選手から出されたルールは、あの場で理解できましたか。
    クリス ダイジョブ。確かに今までやったことがないルールだけど(1本目の3WAYマッチで勝った選手がDDT UNIVERSAL王座を獲得、続けておこなわれる2本目の3WAYマッチで勝った選手がKO-D無差別級王座獲得となる変則2本勝負)、何年か前にKO-D6人タッグタイトルマッチのあとすぐにKO-Dタッグタイトルを懸けてやった時があったよね(2020年10月25日、後楽園ホール。樋口&坂口征夫&赤井沙希vs上野&吉村&平田→上野&吉村vs樋口&坂口)。あれを思い出した。同じように、一つの試合を2本勝負でおこなうというよりも、2つの別の試合を連続でおこなうという考え方。だから、1本目に体力を温存するとかは考えないし、2本のうちのいずれかを犠牲にすることで確実に1本獲るのではなく、2つのタイトルマッチでいずれも獲るという姿勢でいく。DDTの現状を変えるために、上野の腰からベルトを引っ剥がすのが一番の目的なんだから、無差別級を獲るためにUNIVERSALの方は棄てるというような戦略はとりたくない。そもそも、この2つのタイトルの間にどちらが上というのはないと思っている。目的や存在意義が異なるわけだし、特にUNIVERSALの方は自分が初代チャンピオンだけに思い入れも持っている。まかり間違ってもKO-D無差別級より下だとは思っていない。2冠というと一括りの印象になってしまうけど、僕は1本のベルトとして両方ほしい。
    ――試合をやる上で、相手がポジティブな姿勢で来るか、ネガティブな感情で来るかハッキリした方がやりやすいものですが、今回は明らかに上野=ポジティブ、佐々木=ネガティブと分かれ、その両方と闘わなければなりません。その点でのやりづらさは危惧していないですか。
    クリス ここで言うポジティブ・ネガティブというのは主にリング外の関係性のことであって、リングの中だったら誰が相手でも勝ち負けをハッキリとつける対象であるのは変わらないから、そこには左右されないと思う。
    ――特に佐々木選手は一昨年12月の両国国技館で無差別級王座に挑戦してクリス選手に退けられているので、逆恨みパワーが凄まじいと予想されます。
    クリス 私はアバラを狙います。
    ――欠場につながった負傷箇所ですね。
    クリス 復帰はしたけど見たところ完ぺきではなさそうだから、そこを攻めれば場外で寝ていてくれるだろう。その間、上野に専念できる。
    ――DDTの風景を変えるという動機は理解しました。一方でクリス選手は、ベルトを持たない方が身軽に自分のやりたいことができる。その方が性に合っているのではと思うんです。
    クリス おっしゃる通り、タイトルホルダーになることでやりづらくなることも出てくる。でも、だからこそ楽しみ、喜びを感じるっていうかな。たとえば無差別級とUNIVERSALを持ったまま東南アジアをまわったり、ベルトを持ってポスター貼りにまわったりして、それってチャンピオンのやることなの?と周りから思われることに対する抵抗。あえてそこを押し返して「やっちゃった、テヘペロ」っていうのが楽しく感じられる。やりづらくなるの、むしろ歓迎します。
    ――前回のKO-D無差別級王座は4度の防衛後、樋口選手に明け渡しました。その時にやり残したことをもう一度獲ることでなし得たいという思いはありますか。
    クリス (元WWF世界ヘビー級王者の)ブルーノ・サンマルチノのように(通算で)10年以上も持ち続けない限りは、やり残したことというのは常にあるもの。今、思いついただけでも髙木さん、彰人、ディーノ、平田といった人たちとのタイトルマッチは前回できなかったから実現させたいし、下の世代ともやりたい。以前、ここ(品川クラブeX)でTo-yとシングルマッチをやった時、彼が試合後にすごく悔しそうにしていた。そういう部分を見せる人間とやるのは面白いし、同じユニットだけど本多さんと後楽園のメインでやれたら、見る方もワクワクしてくれると思うんだ。
    ――エモーショナルですよね。
    クリス 15年ぐらい前にやったアントンとディック東郷さんのシングルマッチが僕の中へ深く刻み込まれていて(2011年1月30日、後楽園)、自分もああいうシチュエーションを経験してみたいと思っていた。チャンピオンになれば、会社が描いていないようなカードを実現させる発言権が得られる。ベルトには、そういう自分の願望を形にする力があるんだ。
    ――ディック東郷vsアントーニオ本多戦がちゃんとアーカイブされているあたり、さすがはクリス・ブルックスです。
    クリス リアルタイムではないけど、ベスト・オブ・ザ・アントーニオ本多的なDVDで見たんだ。以前はネット上にアップされたイリーガルな動画で見たんだけど最近、そのDVDを入手できてね。それと前後してプロジェクターを購入したので、部屋の床にザックと座って冷蔵庫いっぱいのビールを空にしながら本多さんのDVDを4時間見るんだ。それだけでは飽き足らず、DVDから映像ファイルを非公開URLのYouTubeにアップロードして、プレイリストを作って外でもスマホで見られるようにした。
    ――そこまでして常にアントンの試合を見たいと。
    クリス 僕以上にザックがアントンに夢中でね。BAKA GAIJINの忘年会の時、二人で飲んでいたら「アントーニオ本多はプロレスを超越して、存在そのものが芸術だ」ってしみじみ言っていた。どう? 本多さんと僕のタイトルマッチを見たくなっただろ?

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