DDT

【インタビュー】BAKA GAIJINでやってきたミニマムなことを両国国技館の大舞台で…MAOにとっての「クリスはメチャクチャの切り札」

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  • 8・11両国国技館で上野勇希を破りKO-D無差別級初戴冠を果たしたMAOは、チャンピオンになってからも自分の色に染めた奇想天外な防衛戦を続けてきている。その中で11・3両国の挑戦者に自ら指名したのはクリス・ブルックス。普通ではない試合を続けてきた2人がビッグマッチのメインで表現するプロレスは、いったいどんなものになるのか。(聞き手・鈴木健.txt)
  • 一つひとつの防衛戦を
    忘れられるものにしたくない

    ――8・11両国国技館でKO-D無差別級王者となって2ヵ月ほどが経過しました(取材時)が、初めて経験する居心地はいかがなものでしょうか。
    MAO ありがたいことに、なにも変わらずやらせてもらっています、いい意味で。思っていた以上に、気楽にやれているので。
    ――気楽なんですね。
    MAO 気楽です。もちろん、一試合一試合向き合っていますけど、向き合わなくても勝手にやってくる試合もあったので、それによって自分らしくやれている。チャンピオンの重責みたいなものは、両国の上野戦自体が何も背負わないで純粋に勝負がしたいっていう動機だったので、それがチャンピオンになってからも続いている感じです。自分がわからないうちに、行動自体は背負ったことをしているのかもしれないですけど、そこまで何かに悩まされてはいないんで。
    ――だとしたら、無意識の中でちゃんとできているってことですからね。
    MAO 地力がちゃんとある上で、チャンピオンになれたのかなという気はします。
    ――過去の積み重ねの上とはいえ、無差別チャンピオンになって、日々の中での変化は何かあったんですか。
    MAO どうだろうな、それはお客さんから見てもどうなんだろう…まあ、チャンプって呼ばれることはちょっと照れくさいかな。「マオチャンプ」って呼ばれます。
    ――チャンピオンの特権ですよ。
    MAO そうなんですけど。ただ、意識的なのかはわからないですけど、ポジティブな感じはします。
    ――無理やり自分をチャンピオンらしく持っていくみたいなことをする必要がないまま来られているっていうのは、この団体のカラーもあると思いますが、いいことだと思います。
    MAO そこはMAOだからやれているのかなっていう感じもしますけど、自由にやるための自力みたいなものがやっと追いついたかなと。たぶん、2年前にチャンピオンになっていたとしたらこんな感じじゃなくて、もうちょっと思いつめていた気がします。余裕がなかった。今は全然なんも…って感じですね。
    ――実際、チャンピオンになってからは、とても面白いことばっかりやっていますよね。
    MAO やっているというよりは、やってくるんです。対戦相手とかシチュエーションが面白いだけで、自分自身はそんなに面白いことはしていないんじゃないかって気がしていて。自分から積極的に面白い方へ足を突っ込んでいっているというよりは、周りから勝手に面白いことがやってきている感覚。これはありがたいことです。それが僕だから、そういうものを呼び寄せているんだったら嬉しいですけど。
    ――それでも佐藤大地選手との防衛戦のように、意図的にああいうハチャメチャな試合へ持っていったのもあります。
    MAO チャンピオンになって意識しているのは、やっぱり忘れられたくない。一つひとつごとの闘いも、チャンピオンだったということもちゃんと残したい。武藤敬司さんが言うところの「自分の作品」を残すみたいなたいそうなもんじゃないですけど、MAOがチャンピオンとして存在して、こんなことをしていたっていうのを忘れられたくない気持ちが強くなりました。だから、大地との闘いでキャンバスを剥がすっていうのも、視覚的にも印象に残せたと思うし。あとは大地に対してもまだ18歳でこれからとんでもなく長いキャリアがある中で、あの時のMAOとの一戦として忘れられたくないし、忘れられない夏休みにするというのがあの時のテーマだった。誰との試合もそうやって残るものにしたいんですよね。
    ――実際、すべての防衛戦がパッと浮かんでくるほど、インパクトがありました。
    MAO ただ、いかんせん流れが速すぎで。阿部史典とか浸りたかったんですけど直後にイルシオンだったんで、そういう流れの速さの中で埋もれさせたくないんですよね。消費されたくないなみたいな気持ちが強い。この世の中、何を残せるか? プロレス以外にもいろんなエンタメがある中で、プロレスでいうところの「試合」というものをどれだけ人の心に残せるか。
    ――それほどめまぐるしい中で、髙木三四郎の食いつきがすごいです。この十数年ほどは無差別級戦線に絡んでいなかったのに、MAOがチャンピオンになるや2度も挑戦しようと出てきました。
    MAO それも自分の歴史の一部ではあるんで。髙木さんとやり合ってきたという、自分が重ねたものがそのまま反映されているのが面白い。両国の時なんか、立っているだけでもシンドいぐらいでやっと控室だ、風呂に入ろうと思ったらアレじゃないですか。こっちからしても十分恨みはあるんですけど、勝手に逆恨みして後楽園でも両国のリベンジだ!って出てきて、髙木さんらしいやって感じですけど。
    ――人が風呂に入ろうとするのを阻む上司。
    MAO そのままなし崩し的に初防衛戦が始まって、そのあとの諸々も終わって風呂に入ったら冷めていましたからね。さすがにメインが終わったら誰も追い焚きしてくれねえんだって。それまでは熱々だったんでしょうけど、完全にぬるくなった風呂に一人で入って、チャンピオンになったのに、なんだこれ!?って思いました。でも、ここにいる以上は何が起こってもしょうがないんだなって思いました。
    ――今は何が起こってもしょうがないと受け取れるようになったんですね。
    MAO もう多少のことじゃ驚かないです。この間の「MUSCLE &」しかりですけど。やっぱり“いつどこ”で2回いかれていると、気持ちが常在戦場になるじゃないですか。
    ――常在戦場といえば!
    MAO ここに来て骨法の教えですよ。あの時はバルコニーで見ていてちょっと眠くなっていましたけど。
    ――長かったですからねえ。
    MAO マッスルってK-Iグランプリみたいに省略される試合みたいなのがあるじゃないですか。そうじゃなくて、みんなちゃんとすごい試合をやっていると思いながら見ていたんですけど、それにしても長いなーと思っているうちに「ねむー…」となっているところでMr. マジックにマイクを渡されたんですよ。ああ、チャン所(チャンピオンシップ研修所)のアレだからチャンピオンの感想を求められるのか、そういうコメントを考えなきゃと思っていたら、あれ(4WAYで無差別級タイトル戦をやることに)だったんでマジかと思ったけど、断ったらなんかなあ…の方が強かったので、やってやるぜ!って感じでしたけど。
    ――ああいうシチュエーションでも動けるものなんだなと思いました。
    MAO アップも何もしていないし。一回トイレにいったぐらいでずっとバルコニーにいて、なんなら眠かったですからね。でも、僕はライブでモッシュをしているんですけど、それみたいな感じでした。モッシュだって別に準備運動しないし、服もそのまんまだし。特に僕のジャンルのモッシュはマジで危ないんで。
    ――マッスルでKO-D無差別級タイトルマッチがおこなわれるのは、長い歴史の中で初めてだったと思われます。
    MAO なんか初めてのことが続いて嬉しいですよね。両国のメインのあとに“いつどこ”使ったのも初めてだったし。なんでもかんでもやってきたであろうDDT29年の歴史の中で、まだ「初めて」がある。いや、どんなにひねり出しても過去にやっているんですよ、ここは。その中で初めてを生み出せるのは嬉しい。そういうのも含めて、今の時点で描かれていることは自分と無関係ないものがない。ポッと出のものがなくて、ちゃんと自分の歩んできたキャリアの中で出逢った人たちとベルトを懸けているのがまた嬉しい。
    ――現在のDDTにおける“面白い”の中心に自分が立てているのはいいことです。
    MAO ありがたいことですけどね。自分は真ん中にいるだけで、動いているのは実は周りだったりするんですけど、KO-D無差別級チャンピオンであることが、その渦の真ん中に立って、来たものすべてを突っぱねていく。UNIVERSALチャンピオンは外側から渦を作っていかなきゃいけない感じですけど、DDTの最高峰なんで。ドシッと構えるというのは、そういうことかなという気がしています。
    ――団体としても、最高峰なものがちゃんと面白いものになっているのは、ある意味理想なんだと思います。
    MAO そうだし、チャンピオンじゃなくなっても上野勇希は動き続けて団体を回しているように、自分だけが頑張らなきゃいけない構造ではないのが、またいいですよね。僕は一強っていうのが好きじゃないんです。自分だっていつ負けるかわからない危うさはあるし、自分しか頑張っていないわけじゃなくてDDTのみんなで頑張って面白くしているんだから。今の選手層の厚さは強みだなって思っています。
    ―一強を望んでいないんですね。
    MAO 一強って面白くないなと思っていて。時代って、いつだって動くもんだと思っているし、常々勝つことだけを考えてはいないというか、どういう散り方になるかっていう部分で自分はワクワクできるところがあるので。
    ――今の時点で、もう散り方を考えていると。
    MAO ただでは散りたくないですから、それで面白くなるのであれば、どんな散り方がいいだろうって考えちゃうんですよ。
    ――それは面白いものを最優先にしてしまう性分だからですか。
    MAO そう。でも譲る気もない。チャンピオンはタイトルマッチで一回負けたら終わりなんで、だからこそ勝ち続けなきゃいけないし、そうやって時代って創っていくものだと思うし。やっぱり残りたいんですよね。MAOがKO-D無差別級チャンピオンだった時って、面白かったよね!みたいな残り方。
  • クリスとはプロレスリングに対し
    外からアプローチかけてきた

    ――ただ、ここまでの防衛戦のアベレージを維持するのは大変ですよね。毎回面白いものを求められるのは…。
    MAO そこがまさにDDTというか、強いだけじゃダメですか?って感じじゃないですか。何かトンチが効いていたり、重厚なストーリーがあったりっていうところがすごく大事にされるのは肌身で感じていることです。かといって、無理して面白いものをやろうとして面白いものになるかっていったら、そうじゃない。あくまでもチャンピオンになったら、積み上げてきたものを出していくだけのことなんですよね。トレーニングに関してもチャンピオンになってからは、成長を目的としたトレーニングをしていないんです。チャンピオンである期間は常に維持し続けるというか、最良のコンディションを作り続ける。上野に「チャンピオン期間のコンディションってどうなの?」って聞いたら、そういうことを言っていて、なるほどなと思って。確かにチャンピオン中、成長を求めて体を痛めたりしたら元も子もないよな。そこから維持するようなことをしたり、積み上げてきたものが出るだけだからここから何か高望みをしても、それは空回ってしまうんじゃないかっていう。
    ――その点に関しては変化があったことになります。
    MAO そうですね。またチャンピオンじゃなくなった時は、成長して積み重ねていかなきゃいけないんで。成長を求めるならそのあとかな。今はチャンピオンとして、コンディションよく巡業を回りながら、防衛を重ねていく。それが最優先順序ですね。
    ――周りが動いてこういう形になっていると先ほど言われましたが、一方ではチャンピオンとして発言権が得られたことで自分の望む相手とやれるようにもなりました。
    MAO だからこそ、今のところは挑まれるシチュエーションが多かったですけど、自分でも挑まなきゃいけないなと思った時に浮かんだのが、クリスへの“挑戦”でした。逆指名とも言いますけど、気持ち的にはこっちから挑戦する感じで。無差別級戴冠に関しては向こうの方が印象あるし、チャンピオンだった時期はクリスも印象に残ることが多いし、両国でベルトを掲げている姿がパッと浮かんでくる。クリスは、やっぱり刻まれているなあと思うんで、そういうところに挑戦しなきゃいけない。
    ――早い段階から両国はクリスというのが頭の中にあったんですか。
    MAO 11月までたどり着けたらクリスがいいなとは思っていました。ただ、普通8月にベルトを獲ったら2回ぐらい防衛して11月にたどり着くはずなんですけど、山が5回も来たんで。普通の団体だったら、なんなら1回防衛すれば両国にいけるぐらいですよ。それを5回も山越えちゃっているんで、まあクリスしかいないかなって。幸いなことに、今のDDTは外敵に荒らされているようなシチュエーションでもないので、じっくりと団体の中でやれる。これが10年ぐらい前の関本大介&岡林裕二組、火野裕士にベルトをかっさらわれているみたいな状況だったらアレですけど、そういう状況でもないので、団体の中でやれるんだったらクリスだなって。
    ――外の方が話題性は作りやすくなりますが、そうとはならなかったんですね。
    MAO ないものを無理やり作ってもしょうがないし、だったら自分で挑もうと。なんていうんですかね、クリス、上野とMAOというように名前で並びたいんですよね。この5、6年っていうのは本当にいろんなことがあって、どこの団体もそうですけど終わりかけていた時に、一緒に頑張っていたのは誰かと思ったらクリスと上野って感じがするんです。特に上野とは地上波へ一緒に出たり『マツコの知らない世界』にも出たりで、いろんな波を一緒に作ってやってきた。お客さんも呼べない時代に2人でやってきてその結果、2回も両国のメインでやれた。そこでクリスも一緒に頑張ってきた中で、トンチばっかりやっていた感じがするんですけど。
    ――わりと早い段階からやっていましたよね。
    MAO シングルマッチになるとほぼほぼリングアウト勝ちとか、バカし合いばっかりしてきた。だからこそ、両国という舞台でやるバカし合いって、どうなっちゃうんだろう。僕は両者リングアウト防衛も、なくはねえなと思っていて。両リンは防衛ですからね。でも、リングアウト勝ちもしたい。蹴落としてリングに入るみたいなことを、D王GPがあった時とかもやってきた。
    ――ちゃんとリングアウト勝ちになる勝ち方をやってみせる試合でした。
    MAO そうそう、山に突っ込んで動けなくなってリングアウト負けしたこともあった。そういうのを積み重ねて、BAKA GAIJINも一緒にやっているし。なんかこう…上野とはプロレスリングの中で闘いましたけど、クリスとはプロレスリングに対して外からアプローチかけてきた。そういう2人だから、じゃあ両国はどうなっちゃうんだろうっていうのがありますよね。舞台が大きくなったらどうなっちゃうかっていう単純な好奇心もありつつです。
    ――クリスが自分と同じタイプの人間だと気づいたのはいつぐらいの段階だったんですか。
    MAO 来日前から知ってはいたんですよ。初めて会ったのは2019年4月のニューヨーク。その3ヵ月前にFight Club後楽園大会があって、その時にクリスとキッド・ライコスのCCKを見て面白いと思ったんです。そのあと、ニューヨークで会った時に喋ったんだ。クリスはFight Club日本公演で来た時に、大日本プロレスにも上がったんで「また日本にいきたいんだよ!」って話していて。
    ――実はクリスの日本初戦って大日本なんですよね。
    MAO そのあと、Schadenfreude & Friendsっていう大会をイギリスで開催して、それも見たんですけど今のBAKA GAIJINでやっていることを、リングを使ってやっていた。そうやって、自分でプロデュースして大会をやるのが得意なんだろうなと思っていたし、試合を見てもユニークだった。今は肩を脱臼してやらなくなったこともあるんですけど俺、クリスの技けっこうパクっているんで。レフェリーを飛び越えてのカッター、あれはクリスが昔、やっていた技なんですよ。それぐらい、これは採り入れたいと思えることをクリスはやっていて。決定的だったのはプールプロレス(2019年6月19日、すみだスポーツ健康センター内プール)。あれほど適用して…足4の字固めをかけながらウォータースライダーを流れていたのを見て、こいつすごいじゃん、メッチャおもろいじゃん!ってなりました。まあ、来るべくして来た人間ですよね、完全に。
    ――DDTへ来る前に会っていたということはその後、DDTで一緒になったのはたまたまだったということですか。
    MAO でも、日本にいきたいし、DDTも好きだと言っていたんで、来ないかなあとは思っていましたね。そうしたら、本当に京都へ来た(2019年6月15日、京都・KBSホールでDDT第1戦)。その中で、僕は頑張ってコミュニケーションをとろうとした中の一人だったと思うので。上野も頑張っていたし、その時は竹下(幸之介)さんもいたかな。初めて日本でツアーに参加して寂しかったと思うんですけど、なるべく寂しくないよう話しかけていましたね。
    ――そういう時って、こんなことをやったら面白いんじゃないかといった会話になるものなんですか。
    MAO どうだっただろう…喋っているうちに本当にこいつ、日本のプロレスが好きなんだなとは思いました。愚乱・浪花が好きっていう話から始まって、部屋の写真を見せてもらったら昔の日本のプロレスのポスターとかが貼られている。最初の方はみちのくプロレスの話で、盛り上がった気がします。
    ――浪花選手に聞かせたい話ですよ。
    MAO クリスが日本に来ている間、僕がイギリス遠征にいったんですけど、戻ってきてからはイギリストーク。クリスの地元に近いところへ滞在していたんで、そこの話で盛り上がりました。
  • ライブ感のあるものを生きた人間が
    やることをすごく大事にしている

    ――リング上のああいったクリエイティブなことに関しては、話の中から生まれるというよりも試合の中でどんどん生み出されていった感じだったんですかね。
    MAO そう。だからバカし合いなんですよ。本当に向こうは向こうでなんかを持ってきているなと思ったら、こっちもこっちで持っていかなきゃみたいなのがずっとあって、気づいたら変なライバル関係ができていた。そういう中でBAKA GAIJINが始まって第1回から参加して、最初はクリスとマサさん(高梨将弘)とドリュー・パーカーでやっていたんですけど、ドリューは途中で帰ってしまってマサさんとクリスになったタイミングで自然と僕も中身のことをやるようになって。今はマサさんもお休み中なんで、クリスと2人でずっと大会を作っている感じです。
    ――ああいった下北沢のバーのように、ミニマムな場所でやることに対しての面白さを感じているわけですか。
    MAO BAKA GAIJINはやっていて一番楽しいし、出た選手が何かやると誰よりもゲラゲラ受けていますからね。特に植木(嵩行)さんには毎回爆笑させられています。本当に、すごいです。最初はゲストで出てもらった人も、あまりにも面白すぎて定着しちゃうみたいなところもあるし、そうやって独特のものを創りあげてきたなっていう。33回もやっていますからね。歌舞伎町のクラブでやったり、新宿FACE、あとは「フェス」と称してライブハウスとか、王子のBASEMENT MONSTARでやったりで、2ヵ月に一回ぐらいのペースでやっているから今さらクリスとの関係について何か言うのも照れくさくなってしまう。それほど一緒にやってきた時間が長いんで。ライバルって言っちゃうの? それもなんか照れくさいし、仲間っていうのも照れくさいしみたいなのが絶妙な感じがしていて。
    ――そうしたミニマムな試みを両国国技館という大舞台に持っていくことに、今回は意義を見いだせるわけですが。
    MAO 80人も集まったらギッチギチのパンパンになるものを両国国技館のキャパでやったらどうなっちゃうのか。でも、別にBAKA GAIJIN + FRIENDSをやるわけではないんで。その要素はあるっていうことで、今までのリングアウトだけを競い合ってきた歴史もあるし、たくさんの飲み交わしてきた泣ける夜もあるし、思い出たくさんですけど、日本でのことをすごく大事にしてくれているのがね。今までいろんな外国人選手が来ましたけど、クリスが決定的に違うところって、そこなんですよ。日本に住み続ける、DDTでやり続けることにプライドを持っている。たいたいはステップアップで来る人が多いんです。やっぱり日本ってスキルアップにもなるし、試合数がいかんせん多いんで、日本で自分のスキルを磨いて知名度を上げて、ステップアップしていく選手が多い。でも、クリスにとってはステップアップした先がたぶん、ここDDTなんですよね。日本に来るために頑張ってきて、こうやって日本に住んで、クリスにしたら、これがゴールなのかもしれないし。そうやって日本にい続けて、DDTにい続けてっていう人はクリス以外いないから、僕はそこをちゃんとリスペクトしている。
    ――そういうクリス・ブルックスに対して感謝の意味もこめて、両国のメインに出したいという気持ちはあったんですかね。
    MAO 恩返しとか、そういうのはないですけど最初の動機というか、クリスとだったらメチャクチャができる。ただ、メチャクチャって言うのは簡単なんですけど、今まで僕がやってきたメチャクチャの中にクリスは絶対にいる。だから、クリスとだったらまだできるメチャクチャがあるはずなんですよ。
    ――いわば、自分にとってのメチャクチャの切り札がクリスだと。
    MAO ああ、確かにそれは言えています。昔で言うところの「ジャッカス」みたいなノリでプロレスをやっているんで、ジャッカスのノリの両国メインにしたいです。
    ――それは確実に今までのDDT両国国技館メインにはなかったものになります。今のこの形は、自分がプロレスラーになりたいと思っていた頃の理想形にちゃんとなっているっていうことになるんですかね。
    MAO DDTのメチャクチャな大人たちにあこがれてレスラーになって、たぶん今、メチャクチャな大人になっていると思うんですけど、自分的にはあのメチャクチャな大人たちにまだまだ挑む側なんで、なれたとは思っていないです。今、中学生ぐらいの子が日本のどこかでMAOを見て、こんなメチャクチャな大人になりたいと思ってくれているのかもしれないですけど、やっぱり僕があこがれた雰囲気、メチャクチャさっていうのを常々持っていたいですよね。
    ――あこがれたメチャクチャさっていうのは、どんなものだったんですか。
    MAO それはデタラメさでもあるんですけど、言ったら髙木三四郎そのものです。一人称は俺様だし、曲をかけて出てくれば、デタラメなことを言っちゃうしやっちゃうし。突拍子もなくて、10回に4回ぐらいは外す。そこがいいんですよね。なんでもかんでも正解で、ドンピシャにいいものではないというか、10回中4回は???が浮かぶじゃないですか、昔から髙木さんって。その危うさがありながらもやりたいんですよね。でも、チャンピオンだからあんまり外しちゃいけないみたいな感じになるのは、やっぱり嫌だな。チャンピオンだって、ダメな時はダメなんだぜって。実際、この間の上野公園でのキャプテンドランクマッチとか、すごく謎な試合しちゃったし。 俺も10回で2回ぐらいは外していると思うんですよ。
    ――外している自覚があると。
    MAO ありますあります。本当ね、言うのは簡単です、デタラメも。DDTはメチャクチャでデタラメっていうのは簡単なんだけど、そこでギリギリを攻めないと面白いものにはならないし、度が過ぎちゃうと一周回って面白くなかったり、はたまた炎上したりっていうところの線引きはすごい気をつけながら常々やっています。メチャクチャの中にも限度がある、それは時代によって絶対に変わるんで。今見たら絶対ダメなDDTにおけるメチャクチャ、けっこうあったじゃないですか。そこは今を生きるMAOだからこそできる線引きがある。チャンピオンになってつまんなくなったって思われても嫌だし。メチャクチャなものも、いつかどこかできれいになって面白くなくなっちゃう。ECWがその最たる例じゃないですか。テレビが入る前の方が面白かったとかよく言われる。テレビが入ったからテレビに向けたものをやらなきゃいけなくなって、危なすぎることができなくなっちゃった。今のDDTの会社の大きさの中で、攻められるギリギリは常に攻めたいと思う中でクリスとだったら、いい塩梅でメチャクチャになる。
    ――そう、いい塩梅でできるかどうかがプロとアマチュアの境界線です。
    MAO まあ、時に一線を越えちゃって後悔することもあるんですけど。この間、イルシオンを危ない角度でカウンター落としちゃって、ああいうのは越えちゃいけないラインを越えちゃったなって反省しました。チャンピオンは、安定感も求められている。1回の失敗の裏には1000回の成功があったとしても、やっぱりその1回の失敗だけがずっと人の印象についてしまうので成功し続けなきゃいけない。でもギリギリを攻めなきゃいけないっていうこのジレンマはメチャクチャ悩ましいですよね。
    ――普通にやって普通に勝って、普通に防衛を重ねれば楽なところを、そちらを選ばない。
    MAO そうなんですよ。イバラの道ではあるんです。攻めずに挑戦しなければ失敗はしないんですけど、こうして常々挑戦してしまう。攻めた結果「えー…」って終わる両国のメインがあるかもしれない。
    ――それはそれで伝説になりますが。
    MAO そこを極端に恐れていない自分が怖いなあとも思います。たとえそうなってしまっても、それはそれかもしれないって思っちゃうところがよくないんですけど。でも、クリスとだったらそれも承知の上というか、逆にメチャメチャ熱い試合になっちゃうかもしれないし。
    ――エモーショナルなものになる可能性もあります。
    MAO テクニカルな試合になる可能性もあるし、どの要素をとってもクリスだったら勝負できる。バチバチに蹴り合っても場外でやり合ってもと、クリスが相手だったらどんな方向にいっても楽しめると思うんで。これは僕の癖になっているんですけど、会場に着いたらとりあえず見渡しています。それは地方のどこへいっても、飛ぶ飛ばない、飛べる飛べないとか関係なく、とりあえず地形を把握しておく。街を歩いていてもそうですね。ここ、ちょうどいい高さじゃんみたいなのが癖としてついているんで。ただ、両国国技館も毎回ちょっとずつレイアウトは変わっているんで、当日いってみないとわからない。出たとこ勝負ということで。
    ――ライブですねえ。
    MAO そう、これはライブなんです! ライブ感っていうのは、BAKA GAIJINでも大事にしていることで、ちゃんと臨場感のあるもの、ライブ感のあるものを生きた人間がやることをすごく大事にしています。MAOvsクリス・ブルックスという両国国技館ライブは、この11月3日という日以外は見られない一回性の空間になります。

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