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【インタビュー】EXTREME王座挑戦のゴージャス松野が語る団体愛と覚悟「もしかしたらこれがディーノと最後のシングルになるかもしれない。そういったことを心にインプットしての試合になる」

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  • 1月26日東京・後楽園ホール大会にて、男色ディーノの持つEXTREME王座への挑戦が決定したゴージャス松野。急きょ松野に電話インタビューを実施し、ベルトへの想い、団体への想いを聞いた。


    ――ディーノ選手から指名される形で、今回EXTREME王座挑戦が決定しました。最初にそれを聞いた時はどう感じましたか?
    松野 まさかEXTREMEに挑戦出来るとは思ってなかったので、驚きと期待感と複雑な思いでした。
    ――今までO-40やアイアンマン王座の戴冠はありましたが、EXTREMEや無差別、UNIVERSALといった主要シングル王座に縁がありませんでした。そういったシングルのベルトを巻きたい気持ちというのはありましたか?
    松野 KO-D6人タッグまでは持ってましたが、シングルのベルトは無いですよね。ほぼ諦めていたんで、指名してもらえたのはありがたいことです。
    ――今回挑むEXTREMEのタイトルで印象に残っている選手や試合などはありますか?
    松野 彰人君とMIKAMIが仙台でやった(2014年11月23日、宮城・夢メッセみやぎ西館ホール大会)ロープを外してやったキャッチレスリングルール、デスマッチなどではない斬新な試合形式で印象に残ってますね。
    ――ディーノ選手から松野選手に向けたメッセージのなかで「ゴージャス松野の一般的なイメージはそんなに良くない。その頃……」
    松野 (さえぎるように)あれはXで注釈入れましたけども、思ってるほど悪くないと思うんですよ。今のプロレスファンの方で昔のことを知ってる人の方が少ないくらいだと思うんです。40代以下の人は全くわからないと思うし。仮に知っていたとしても「それが何?」という感じだと思います。
    ――今さらそんなこと言ってくれるな、という感じですか。
    松野 言ってくれるな、というよりも「え? 今頃?」という感じですね(笑)
    ――メッセージの中には「松野さんとあとどれくらいプロレスで語り合えるかわからない。だから、私はこのベルトを持っているうちに松野さんとタイトルマッチがしたい」との言葉もありました。
    松野 私も63歳なんで。いつまでやれるのかはわからないですし。ディーノとも20年以上の付き合い、過去にO-40の時もシングルでやってますけども、あの頃はまだ生涯現役、と言っていたんですが、63歳になってそういうことも言ってられない。もしかしたらこれがディーノと最後のシングルになるかもしれないし。そういったことを心にインプットしての試合になると思う。そんなこと言ってもどっちが先に辞めるかもわからないですが(笑)
    ――対戦相手としてのディーノ選手の印象はいかがですか?
    松野 凄く振り幅が広い。こっちが予想した試合でいると、肩透かしを食って別のディーノが見られたりとか。レスラーとしての振り幅が広いと思います。
    ――ディーノ選手との最後のシングルマッチはO-40のタイトルマッチ(2020年1月5日、東京・板橋グリーンホール大会)で、その試合は松野選手が勝っています。
    松野 絡むことは多いんだけど、シングルというのはあまりなくて。あの時はベルトを懸けてディーノとストレートに闘いたかったんで、最初こそディーノがゲイムーブを見せたんですけど、私がそれを一蹴しまして。ディーノはゲイムーブ一切無し、私もエルボーなど一切無しの、技の掛け合いになりました。ディーノが私の足を狙ってきて、私もディーノの腕一本で攻めていって、最後丸め込んで勝ちました。お互いのキャラを捨てて闘ったんで、ある意味それまでのあったディーノとの闘いとは違う試合になったと思うます。
    ――ディーノ選手に苦手意識などはないですか?
    松野 苦手っていうのは特に無いですね。やる度に面白い試合が出来る、そんな相手です。

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    ――今回ディーノ選手が決めたルールが「人生の煌きルール」、要するに1カウントフォールマッチ、ということなんですがそれを聞いた感想はいかがですか?
    松野 10カウントだろうが、100カウントだろうが、プロレスというのは同じだと思うんで。相手に勝つか負けるかなので、それはあまり意識してないです。その瞬間が大事というのは、私は人生でいろいろ経験して来て「未来ではなく今を生きる」というが私のモットーでありますんで。「人生の煌きルール」と聞いて最初は「どんな意味だろ?」と考えましたけど、要はレスラーとして一瞬に懸けた試合をしたい、ということだと思うんで。すんなり受け入れられました。1カウントだろうが、3カウントだろうが、10カウントだろうが同じだと思ってますんで。1カウントだったら一瞬のスキで取られる可能性もある、その辺は頭の中でイメージトレーニングして臨もうと思ってます。
    ――となるとそのルール自分にとって有利、不利というのはあまりないですか?
    松野 3カウントルールと大差ないといいますか。ルールありきならそれで闘うことは全然違和感ないです。
    ――先日の調印式の中で「人生で一番大事な瞬間は結局目の前の1秒なんですよ。目の前の1秒を一生懸命できない人間は、たぶん積み重ねがなくていくんだなと思って」とディーノ選手が言っていたんですが、共感する部分がありますか?
    松野 共感というよりも私はそういう生き方ですんで。過去を振り返ってどうこう言っても過去の話だし、未来のこと言っても想像でしかない。そんなことに時間を使って人生を無駄にするなら、目の前にあることに集中して生きていくのが一番。これは63年間生きて来て身をもって受け入れたことであり、学んだことであります。人生は今しかないわけです。目新しいことでも何でもなく、私としてはもっともなことだなと。一期一会のその瞬間をどう考えてどう生きていくか、どう息を吸って、どう喋って、どう考えて、すべて凝縮されてると思うんで。(ルールを最初聞いた時は)凄い意味があるのかと思ったら、後々(ディーノの)コメント見たら私としては普通のことを言っていたんで。よっぽど大きな意味があるのかと考えていたけど、調印式のコメントを見たら「なんだそんなことか」という感じです。
    ――想定以上にシンプルな話だった、と?
    松野 私にとってはね。ほかの人はわからないですけど。
    ――EXTREMEのベルトを奪取した際にはどういう防衛戦を行っていきたい、どういう対戦相手と闘いたい、などビジョンはありますか?
    松野 それはもう未来のことなんで。その瞬間、瞬間を生きながら当日迎えるわけなんですけど、当日を迎えたらまた新しいことを考えながら瞬間を生きていこうと思うんで。それ(チャンピオンとしてのビジョンは)はちょっと先走り過ぎてるかなと。
    ――失礼しました……! あくまでベルトを獲った瞬間にその後のことが見える、ということでしょうか。
    松野 そうですね、その時どういう試合だったか、というのを見つめて。今、そういうことに時間を使うのは無駄だと思うし。
    ――ではちょっと話は変わるんですが、今DDTは若い選手の台頭があり、一方でKONOSUKE TAKESHITA選手や遠藤哲哉選手など団体を越えた活躍をする選手も多くなっています。最近のDDTをどう見ていますか?
    松野 非常にいいことだと思います。DDTと完全に切れて巣立っているわけでもなく、外を見て、DDTでそれを活かしてどんどんDDTを伸ばしていくのも素晴らしいことだと思うし。この前の「ゴージャスナイト」が20周年だったんですけど、20年前は福島で「DDTプロレスやります」って言ってもチケットも売りにくかったですし。団体の知名度、選手の知名度が全然なかったので。それが20年経って、今は「DDTなら見たい」って言ってくれる方も増えましたし、福島の田舎でも知ってる人は知ってる団体になった。「あの選手が来るなら行きたい」って声も聞こえるようになったので。自分がDDTに来て22年くらい経つけども、やっぱりそれは素晴らしい進歩、発展だと思います。自分も辞めないでいてよかったなと。それは髙木さんに感謝してますし、嬉しくも思っているので。若い選手はどんどん伸びて、色んな勉強をして、DDTに反映する。自分は年齢が年齢なので、この年齢でやれることをやって、お客さんに「63歳で頑張ってるんだ、自分も頑張ろう」とかそういう思いが伝わるような試合をしていければと思ってるし。いい団体だと思いますよ。
    ――最近のDDTでは武知海青選手、桜庭大翔選手、隈取選手など別ジャンルからプロレスにチャレンジするという方も増えて来ています。その形では松野さんが先駆者になると思うんですが、そういった選手の活躍を見ていかがですか?
    松野 私がDDTに来た時とは輝きが違うし、身体能力も違うので素晴らしいことだと思うんですけど……一つだけお願いしたいのは、デビューした以上は、試合数も限られてくると思うんだけども、長くプロレスを続けて欲しいですよね。そういう方々がデビューするとプロレス界全体の見られ方も変わってくると思うので。広がりを見せると思うんです。でも、その時だけっていうんじゃなくて、1回レスラーとしてリングに上がったんであれば、長く続けて欲しいっていうのが一番の願いですね。長くプロレスを愛して、お客さんを愛して、団体を愛してやって欲しいです。
    ――松野さんが言うと重みがありますね。
    松野 ここだけの話、こんな長くやってると思わなかったから(笑)でも、それくらい魅力がある世界だと思うし、やりがいのある世界だと思うんで。その辺もわかっていただいたうえで「プロレスやってよかった」「DDTでよかった」って思って欲しいなと。

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    ――かつて生涯現役を宣言されていましたが、最近は進退を考えていることを伺わせる発言をされることもありました。今はプロレスラーとして最終コーナーを回っているような感覚がありますか?
    松野 いくら自分に気持ちがあっても、というのもあるし。見に来る人も、相手の選手もいることなんで。相手の選手の足を悪い意味で引っ張ったりとか、見てる人が「金払ってこんなのを見せるなよ」となるようだったら自分で身を引かなきゃならない。生涯現役とか自己満足に浸ってちゃいけないなと。その辺は切実に考えるようになってきました。
    ――心境の変化のきっかけはあったんですか?
    松野 50代の頃は体力が落ちるとか、ポテンシャルが落ちるとかはなだらかなんだけども、還暦過ぎたら階段状に半年くらいの周期で落下するといいますか。トレーニングしてても、半年前に上がった重さが上がらない、とかね。そういった意味で自分の体力や身体能力を過信しちゃいけないなと、還暦を過ぎてから切実に感じるようになりましたし。誤魔化したり、自分を過信したり、今まで出来たんだから出来るだろうと思ってやると、思わぬケガをしたり、相手選手にケガをさせたりとかあると思うんで。その辺はやっぱり慎重に見極めなきゃいけないなと思います。
    ――松野選手が自分自身の動きに納得いかなくなった時は、そういった決断があるかもしれないと。
    松野 シビアに、周囲の反応を見ながら。自己満足でカタルシス持って「筋肉鍛えてるからカッコいいだろう」とか「これくらいやってるんだから大丈夫だろう」っていうことを無しにして、謙虚に、周囲の反応や状況を見ながら自分の評価をしていくようにしていきたいと思ってます。
    ――恒例の福島大会「ゴージャスナイト」は今年も開催を考えていますか?
    松野 体育館の4月以降のスケジュールが2月頭くらいには出るので、体育館の空き状況とDDTのスケジュールを見て。毎回最後だと思ってますけど、いつも大会終わってから玄関でお客さんのお見送りをしていて、お客さんが喜んで帰ってもらう姿を見たりとか、声援を掛けてもらえると「またやらなくちゃいけないな」となってですね。今年も是非やりたいなという思いはあります。
    ――先ほどベルトを獲った先のことは考えられない、という話はあったんですが、やはり「ゴージャスナイト」でタイトルマッチ、チャンピオンとして凱旋したい、という思いはあるんじゃないでしょうか?
    松野 O-40をやりたかったんですけど取られちゃいましたし、コロナ禍になって出来なくなっちゃったんで。生涯1回くらいは地元でベルトを巻いて上がりたいなっていうのはありますね。
    ――今回のEXTREMEのタイトルマッチというのはそれを叶えるための大チャンスになりますね。
    松野 故郷に錦を飾りたいと思ってますんで。そのためには獲らなくちゃならないですね。
    ――最後に応援しているファンの方にメッセージをお願いします。
    松野 降ってわいたようなビッグチャンス、63歳でO-40以外のDDTのシングルのベルトに挑戦出来るとは思ってなかったんで。勝っても負けても、見ていただいた方に満足して、喜んでいただけるような試合をしたいと思ってます。皆さんの応援があれば勝てるかもしれないんで、是非応援してください。
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