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【ドラマティック・ドリーム・コラム】20周年の“カリスマ”佐々木大輔に捧げる奈良語りコラム――精神が映し出す“大きさ”について(週刊プロレス・奈良知之)

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  •  なぜ、佐々木大輔は“カリスマ”と呼ばれるのだろうか。さまざまな要因はあるだろうが、日々のコメントを聞いていればわかる通り、気が違っていることが大きい。じつに、気がディファレントだ。
     毎日のようにストレートに受け取られると大変なことを口にしているようにも思うが、不思議と許されるのがカリスマのカリスマたる所以。「カリスマなら仕方がないか」と思われるぐらい、日々尋常ならざる言葉…言い方を代えれば意味不明なコメントを残し続け、プロレス界のなかでも有数の“変人”となり得た。
     変人でいられるのは、きっと自信があるからだ。
     腕に、覚えあり。
     リング上に満ちる確固とした“佐々木大輔のプロレス”が、変人であることを許容する。ただでさえ変人が多いとされるプロレス界のなかでも、屈指の“変”を描く一人である。
     たとえば、あるバーでのこと。世の中の居酒屋などには“メガビール”というものがあるが、カリスマの場合、メガはメガでも、ほぼピッチャーと呼べる巨大なジョッキでビールが運ばれてくる。そんなデカい器でビールを飲んでいる人を、私は初めて見た。目がテンになるとは、まさにこのことだ。パンクなのである。
     多くの人は佐々木大輔というレスラーを“技巧派”として語るだろうが――その側面は当然あるにせよ――それ以上に、人生の過激派という一面が印象深い。プロレスは人間がリングに出るジャンルだから、どうしたって隠せぬ狂気がカリスマの闘いからは見え隠れする。それが、リングに立ったことはない我々でも明確に理解できるぐらい細やかな技術で彩られているから、“カリスマ”という言葉に納得が伴う。
     体格で言うならばヘビー級ではないし、小柄の部類。だが、それ以上にカリスマは大きく見える。そうした“人間”を知れば知るほどに。リングで描かれる闘いは時に体格以上に、そのヒトのマインドを映し出すものなのかもしれない。
     無差別の団体であるDDTでのキャリアが長いということもあるが、これまで対ヘビー級で幾度も名勝負を残してきた。近年ではKONOSUKE TAKESHITAとの闘いもそうだし、樋口和貞との試合、古くは対関本大介もそうだ。むしろ、デカくて強力な相手と自ら望んで闘いに行っている。そうした点で、常に肝っ玉が据わっているのだ。あまり口には出さないが“デカいヤツにナメられてたまるか”との思いが端々から感じられ、そこが“精神力の大きさ”となる。
     週刊プロレスでDDT担当から新日本担当に変わり、エル・デスペラードを取材する機会も増えた。そこで思うのは、やはりカリスマとはウマが合うだろうな…ということ。ただシンプルに、感覚的に思う。だから、10・2後楽園で2人の初タッグが実現するのは期待が高まるのだ。
     2023年7月。初のデスペラードとの一騎打ちを前にカリスマは本誌の取材に応え、株式会社メキシコ観光でテキーラ1年分に囲まれていた。同社の協力で“変な絵”が撮影できたのだが、あのビジュアルこそがカリスマというレスラーのイメージそのもの。仮にテキーラ1年分に囲まれるカリスマとデスペラードの絵があっても、じつにサマになるだろう。
     同年のDDT7・23両国の一騎打ちはならず者がヌメロ・ドスで勝利。試合後、カリスマはこう話した。
    「俺とオマエが闘うまで長い期間だった。それをあんなリング上の俺のたった5文字、ギブアップ。正確にはギブアップも言えてねえ。あんなんで俺たちの試合が終わっていいのか? あんな5文字足らずの言葉じゃ終わらねえよな? この先が必ず、必ずあるだろう」
     あれから約2年、その“先”が来た。DDTと新日本が完全に雪解けして交流も活発化していくなか、2人のコンビが“ついに”実現する。乱発は嫌いなカリスマとデスペラードだから、約束のタッグは“ここぞ”のいま、やってきた。しかも、相手は石川修司とアントーニオ本多。あまりに強烈な大巨人と、クセが強すぎるアントン。
     奇才のアントンは闘いに想像を超える瞬間をもたらし、石川は壮絶をリングに持ち込む。スタイルが正反対の両者と、メキシコ時代から続く物語の延長戦上に立つカリスマとデスペラード。これは4者に言えるだろうが、反骨の「ナメんじゃねえ」がさまざまな色合いと形を持って交錯した時、何が生まれるのか。
     きっと、ロックンロールなデビュー20周年記念試合になるのは間違いない。しかも、カリスマは復帰戦。8・30墨田区で左肋骨骨折のケガを負ったが、復活宣言の9・12新宿時点で「ビタミン、筋トレ、神への祈りで俺の肋骨はもう9割治っている」と言うのだから、異様である。
     でも、そもそも常識を超えていくのがプロレスラー。ロックであり、パンクでもある。目に見えない何かを感じ取った時、あなたはカリスマの根にある巨大な魂に気づくこととなる。(週刊プロレス・奈良知之)

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