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【インタビュー】To-yがギャンブル防衛ロードを歩む理由「僕がカッコいい振る舞いを見せようと思っても、それは嘘だろうって思うんです」

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  • 6・15新潟でスーパー・ササダンゴ・マシンを破り第63代DDT EXTREME王者となって以来、ギャンブル性の高いルールで5度の防衛を果たし異様なまでの輝きを見せているTo-y。11・30後楽園では実母・美和さんにギャンブル依存症であることを晒されながら「絶対にやめない!」と高らかに宣言した。そんな中、ヤス・ウラノにベルトをチンされる(盗まれる)形で6度目の防衛戦へ臨むことに。今、いろいろな意味でTo-yはどこへ向かっているのか気になるファンが多いと思われるので『週刊プロレス』誌取材後、間髪入れず本人を直撃してみた。(聞き手・鈴木健.txt)
  • プロレスから離れていて、ハラハラ感がある
    刺激がほしくてギャンブルにそれを求めた

    ――週刊プロレスさんのインタビュー、お疲れ様でした。
    To-y なんか、ギャンブルの話しかしなかった気が。プロレスの話、したかなあ。
    ――いやいや、プロレス専門誌の取材ですよ。
    To-y 今の自分ってギャンブルが一番で、ギャンブルをやりつつプロレスをやっている感覚なんで。
    ――ギャンブルの方が本職になっているんですか。
    To-y 本職はプロレスです。そこにギャンブルを取り込んでいるんですよ。
    ――取り込んでいる…。
    To-y それが今のEXTREMEタイトルマッチ。
    ――あー、言われてみれば、そういう感じのルールでずっと防衛戦をやっていますね。
    To-y 正直、僕も何をしているのかちょっとわかんなくなってきています。取り込んではいるんですけど、自分は闘っているのか、それともギャンブルをやっているのか…試合自体がギャンブルとして闘っているのか…ギャンブルそのものかがわからなくて。
    ――パーセンテージで言えば?
    To-y ……ギャンブル8割かな。
    ――プロレスである感覚が2割! でも、それは自分でルールを決めているわけですから望んでいる形ではないのですか。
    To-y いや、楽しいッスね!
    ――どう見ても楽しそうに見えます。
    To-y それはいいんですけど、何が起きているのかを自分で把握できていないみたいな。ルールを決めるのもなんだか難しくて、考えるのがキツくなってきているのが正直なところで。だから試合で何が起こるかわからなくなってきているんです。ただ、そういうルールの方が自分的にはやりやすいんですよね。この前の髙木三四郎戦でも、やっぱりEXTREMEはこういう形でいきたいなあって、改めて思ったんです。
    ――EXTREME王座を獲得するまでは、試合の中でギャンブル色は出してこなかったですよね。
    To-y やってはいたんすけどね、ギャンブルは。配信とかで言ってはいたんです。YouTubeのボートレース配信に参加したり。
    ――いつぐらいからそういったものに手を染めるようになったんでしょうか。
    To-y えーと、僕は大学に1週間だけいっていまして。短かったから友達が誰もいなかったんですけど唯一、その1週間でできた友達にスロットのジャグラーを教えてもらったんです。それがきっかけですかね。それまではむしろギャンブル否定派でした。ギャンブルなんて、お金がなくなるだけだろうって。ボートレースの配信に勝俣さんや上野さん、TAKESHITAさんと出ないかと言われて、僕はやり方知らないですけどいいんですか?と言いつつ出て、そこでボートレースのやり方をちょっと覚えたんですけど、その時は別にハマらなくて。でも、家に帰って何か勝つ方法がないかなと思って過去の結果を見てインが強いとかアウトがバラバラとかを調べたら、2日に1回ぐらいは来ている船があったんですよ。じゃあ、これに賭け続ければ勝つんじゃないかと思ってやったらその通りに当たって。それが半年ぐらい続いたんです。
    ――ちゃんと稼げたんですね。
    To-y その途中でアバラを骨折して1ヵ月欠場したんですけど、それがもう暇すぎて。でもボートは毎日できるじゃんと思って毎日やったら、その結果にだんだん飽きてきてもっと稼げる方法がないのかと思って、また過去の結果を見て違う方法を探し始めて。半年間で貯まったお金もあるし、これが大金に変わると思ったら…失敗して。
    ――あらら。
    To-y 一日で37万負けました。それで次の日は過去のやり方に戻そうと思ったけど、もう元には戻らずで、貯金も全部なくなった結果、カードを作って分割地獄に陥るという。
    ――絵に描いたような展開です。
    To-y そして現在にいたっています。
    ――タイプは違いますが、カード地獄に関しては先人の方が身近にいます。佐々木大輔という人物なんですが。
    To-y あー。僕の場合は、ほしいものを買うといってもそんなに高いものでほしいのがなかったんです。儲けて何を買うというより、ギャンブルをやっていることが楽しいんです。欠場期間中、ボートにハマったのも、プロレスをやっていればそれでハラハラ感が味わえるじゃないですか。それができなくなってストレスが溜まった中でボートにそれがあったんですよ。プロレスまでとはいかないけれど、それに近いぐらいのハラハラ感が。800円が10万円に変わるなんて、ヤバくないですか? その時点でトータル8万円ぐらい負けていたのが、イッキに2万円の勝ちにひっくり返って、それがヤバすぎて原因不明の熱が出たんです。
    ――興奮しすぎたんでしょうね。
    To-y プロレスから離れていて、それぐらいのハラハラ感がある刺激がほしかった。プロレス欠場期間中、得られない刺激をボートレースでカバーしようと思ったところ一日で37万すって、その後もダラダラと自分の貯金も使ってしまって。
    ――プロレスに変わって刺激を得るためにやっていたのだとしたら、今は復帰したんですからやらなくていいじゃないですか。
    To-y ずっと同じ刺激だと体が慣れてしまう。強い刺激があったり弱い刺激があったりするから気持ちよくなれるんです。だからギャンブルとプロレスの両方で違う刺激を得るのは、僕にとって必要なことで。
    ――あのう、親御さんにはそういう道に足を踏み入れたことを伝えていたんですか。
    To-y 言いました。やめなさいって言うんですよ。
    ――当たり前じゃないですか。
    To-y 親に言われてもやめないです。僕は今まで反抗期がなかったんですけど、そこだけは反抗します。
    ――今が反抗期。あんなにいいお母さんが「やめてくれ」と言ってもやめられない自分を客観的に見てください。まずくないかと思わないですか。
    To-y  いや、まだヤバくはないんです。後楽園で言った通り、稼げばいいんですから。
    ――稼げなかったら? それこそ取り返しがつかなくなりますよね。
    To-y いいえ、なんでも取り返しはつくんですよ。生きてさえいれば、人生どうにかなる。今のEXTREMEの防衛ロードに関しては、自分の理想的な形として毎回刺激を受けて、ギャンブルでいきたいと思っています。
    ――そこでの刺激が当たり前になると、通常ルールのプロレスで刺激が得られなくなってしまうのではないですか。
    To-y それはそれで、またEXTREMEとは違う刺激があるので大丈夫です。
  • 「何が正解で不正解かもわからないんです」(To-y)
    「いや、それが正解だよ」(ディーノ)

    ――そうですか。今までやってきたEXTREMEタイトル戦の中で、一番エクスタシーを感じたのはどの試合でしたか。
    To-y 髙木三四郎戦でしたね。あれこそが、自分の中にはなかったものがやってきたんで。僕の心をカプセルの中に入れて、フリフリされたような状態になりましたから。でも、それが今までで一番スッキリしたような気持ちよさだったんです。お母さんが出たのは嫌でしたけど。
    ――そうなんですか? おかあさんに防衛した姿を見せることができてよかったじゃないですか。
    To-y いや、客席からもう見ていたんで。もともと、けっこうプロレスが好きで、よく見に来てくれていますから。
    ――客席よりも至近距離で見せられたんですよ。
    To-y そんな特等席、いらないッスよ!
    ――プロレスが好きなら、よけいにリングへ上がれたことを喜んでいたのでは?
    To-y いやいや、もう緊張していました。リングに上がった時点で涙目になっていたぐらいで。
    ――まったくそうは見えなかったですよ。むしろ場慣れしているなあって感心したんです。
    To-y 場慣れなんてしていないです。それでこっちも緊張したら、カードの分割地獄とか全部晒されて、ウワー!って頭の中がパニックになりました。
    ――小嶋家というのは、四方を多数の人々に囲まれる中でも母と息子がフランクに抱き合える文化があったんですか。
    To-y いや、まったく。人生で何度目かのビッグハグでした。最後も気づいたら勝っていたんで、それで冒頭に言った通り自分でも何をやっているのかわからないんです。あれ…母のおかげなんですよね?
    ――200%そうです。お母様の髙木三四郎に対する凄まじい張り手が実質勝敗を決しました。最後も、あの場で急に振られて「カモーン!」と合わせることができたお母様の才能に嫉妬さえしました。
    To-y 確かに…そうでしたね。
    ――これからの防衛戦で、あれ以上の刺激を形にするのは難しいのではとも思いました。
    To-y でも、刺激をより超えるのも大事ですけど、ちょっと下回るのも大事なんで。
    ――クールダウンということですか。
    To-y また違った刺激という意味でですね。ずっと鈍痛だけじゃなく、チクチクする刺激も必要なんで。
    ――まあ、次回の防衛戦の相手がヤス・ウラノ選手ですから、まったく違った刺激になるでしょう。
    To-y あれはもう、本当に何が起きているのか僕にはわからない。今、ベルトがない状態で僕がチャンピオンになるのかならないのか。
    ――ベルトって、そんな簡単に盗まれるものなんですか。
    To-y そうなんですよ、返ってこないんです。僕は今、チャンピオンじゃないんですかね?
    ――いやいや、れっきとしたチャンピオンです。
    To-y 僕がチャンピオンでありながら、だけどウラノさんもチャンピオンって言っていて、彰人さんまで非公認チャンピオンと言って「おまえは挑戦者だ」と。
    ――挑戦者と言われたんですか。
    To-y でも公認のチャンピオンだって。あー、ややこしい!
    ――私もよくわからなくなってきました。
    To-y だから今、夢の中にいる感じなんですよ。あの日(12・3新宿FACE)も試合終わったのにウラノさんとのもう一試合が始まって。お客さんはすでに帰り出しているからあまり見られていなくて。
    ――なんのために試合をしているんだという状況。
    To-y 何もかもがあり得ないことが起きているのが怖くて。それをいまだに引きずっていてふわふわしている状態です。
    ――ウラノ選手とは過去に1度シングルマッチで対戦し、敗れています(2023年2月14日、新宿FACE)。
    To-y その時の印象は、いい人なのか悪い人なのかわからない人。前回もそうでしたし、この前の「CHARISMANIA ×MANIA×MANIA」でも10人タッグで当たった時にめっちゃ背中を引っかかれてすごい跡ができて、そこからずっと背中が痒くて痒くて。できた傷がロープワークしていると当たって跡ができちゃって。その皮膚が治らないのがちょっと今、心配で。
    ――皮膚は弱い方なんですか。
    To-y 弱いです。アトピーもプロレスラーになってから、ようやく治ってきていたんです。なのにそれがちょっと復活してきて、ずっと背中がピリピリするんですよ。全部ウラノさんのせいで僕のアトピーが蘇ってきているんで、アトピーを治すためにもウラノさんを倒した上で爪を切ってもらわないと困るんです。
    ――勝ったらその場で切ってもらいましょう。
    To-y 本当なら敗者爪切りマッチにしたいぐらいですよ。
    ――髪切りマッチではなく爪切りマッチは今までなかったと思われます。
    To-y それぐらい、あの爪は僕にとって脅威です。背中で○×ゲームができるぐらい赤くなります。しかも3×3ではなく、もっと広くできるぐらいですよ。試合後、お客さんと写真を撮る時も跡が残っているし、サウナも治してからいかないとヒリヒリするでしょうから、しばらくはいけないです。
    ――The37KAMIINAなのにサウナへいけないのは深刻です、取材時点でルールはまだ発表されていないですが、やはりギャンブル性の高いものに?
    To-y 考えているのは…ギャンブルといったらギャンブルみたいなルールですけど。
    ――みたいな。でも、自分を出せるタイトルが得られたという点ではよかったですよね。
    To-y 実はEXTREMEはまったく狙っていなかったですから。むしろこのタイトルは難しそうだなと思っていました。勝俣さんや平田さんのイメージが強くて、それを見ていて楽しそうだけど大変だなと、自分でやろうとは思っていませんでした。それがある日、Xを見たらササダンゴさんに僕が挑戦すると出ていたんですよ。
    ――あれは自分で望んだわけではなかったんですか。
    To-y まったく望んでいなかったです。本当に、Xのポストで知りました。それで、ササダンゴさんからルールを考えてみろと言われて、あれ? ルールはチャンピオンが考えるんじゃないのかと思いつつ、コレとコレはどうですかと送ったらそれが採用されて。
    ――牛乳を吹き出したら負け、ゴミ箱に入れられたら負け、チョップ100発目を決めた方が勝ちの3本勝負ですね。
    To-y それも気づいたら勝っていました。僕が思っていた勝ち方じゃなくて。
    ――ルールを考えたのは自分ですよね。
    To-y いや、チョップといってもチョップじゃないようなものだったんですよ。クロスボディーしたらよけられて、ワーってつまづいて叩いたらそれがちょうど100回目だったという…そうだ、そこから次の挑戦者を決める時もウラノさんがしつこく絡んできたんですよ。Xで、何時までに挑戦してきたプロレスラーと闘うとなってまずウラノさんが来て、そのあと何人かが来て最後に佐藤光留さんが来て、ウラノさんが持ちかけてファン投票になって、光留さんに決まったんです。
    ――だとしたら根に持っていたんじゃないですかね、ウラノ選手。
    To-y ネチネチしていますよ。EXTREMEに挑戦してくる人たちって、みんな悪い大人なっかりですよね。髙木さんとやるとなった時も、まず髙木さんのお金でギャンブルするってなったけど「1万円しかないよ」って言うんです。そんなわけないじゃないですか。
    ――CyberFightの偉い人ですからね。
    To-y ポケットマネーは少ないし、両国国技館では1対4で来られるし(5WAY目隠しマッチ)、その揚げ句に泥棒ですから。嫌な大人の汚さを理解することで、こんな大人になっちゃダメだなって。
    ――もう遅いような気もしますが。
    To-y ええっ、なんでですか!
    ――ギャンブルにハマっていながら、こういう大人にはなりたくないというのも…。
    To-y まあ、逆にここまでくると次はどんな大人が来るんだろうという感じですよね。
    ――それこそ破滅型の先人であるカリスマとキング・オブ・破滅EST決定戦が見たいところです。
    To-y このまま悪い大人たちとの防衛戦が続いていって、そのつどルールを考えてもこれが正解なのかなという思いは拭えないんですかね。
    ――正解を求めなくていいと思いますよ。面白ければいいんじゃないですか。
    To-y いや、これって面白いのかな?って思っちゃうんですよ。
    ――今のところ全部面白いですよ。
    To-y 本当ですか? それも本当に自分でわからなくて。髙木戦の出番直前に、ディーノさんがたまたま通りがかったんです。そこで「頑張って」「ありがとうございます」みたいな会話を交わしたんですけど、そのあと僕が「何が正解で何が不正解かもわからないんです」って言ったんです。
    ――出番直前にそんな思いのたけを。
    To-y それこそ髙木さんのテーマ曲が流れている時です。そうしたら、ディーノさんが「いや、それが正解だよ」って。そこでああっ!と思って入場しました。わからないのが正解なんだと。なるほど!と思って気合が入ったんです。
    ――ということは、今の状態で正解なんじゃないですか。
    To-y なるほど。
  • 導かれた道がEXTREMEならば、
    受け入れてやりたいことやって生きる

    ――それにしてもルールのアイデアがよく枯渇しないですよね。
    To-y そこに関しては、対戦相手の要素を採り入れたルールにしようと思っているから出てくるんです。光留さんとの24時間のやつも、光留さんが夜中にやる何時間プロレスみたいなのをやっていたんです。それを見て、そこにギャンブル性を加えようと。高鹿さんはXで告知しかしないから、それをポイント制にしてみたり、髙木さんはウェポンだから…みたいな。
    ――To-y選手は、こういう路線を望んでDDTに入ってきたわけではないんですよね。
    To-y 全然そうじゃないです。
    ――自分が求めていた路線とまったく違う方をバク進しているわけですが、これでいいんでしょうか。
    To-y いや、もういいです。プロレスを見ていた頃はカッコいいプロレス、面白いプロレス、感動するプロレスがいいなと思っていましたけど、やる側はこういう刺激もあるんだなと。僕が頑張って上野さんみたいなカッコいい振る舞いとか、強いプロレスを見せようと思っても、それは嘘だろうって思うんです。
    ――そういうものですか。
    To-y そこは僕がカッコよくしようと思ったところで、カッコいいフリしているだけだったら見ている側はカッコよく見えないですよね。結局、僕が自分の感情を信じて闘うしかないなって思うんです。今だったら刺激を求めている期間だから、それが伝わればいいなって。それがまず伝わらないと、お客さんも何をしたいのかって思うじゃないですか。ただカッコいいふうにしてプロレスをやって、勝ったり負けたりしているって、普通じゃないですか。だから僕はこれを求めているというのをまず伝えた方がわかりやすいって思うんです。
    ――キャリア3年で日本最古のタイトルであるアジアタッグ王座を獲得した時は、順調に正統派路線でいくのかなと思いました。まあ、あれも電流爆破絡みではありましたが。
    To-y あれを経た上で、わかったことです。正直、プロレスラーになってからずーっと訳がわからなかったです。ただ、流れで来たものに対し頑張るという状態だったのが、結果的にEXTREMEへたどり着いたことで、自分はこれなんだなって、ようやく思えたんです。
    ――俺はEXTREMEだったんだと。
    To-y EXTREMEが寄ってきたんだと。導かれた道がEXTREMEならば、それをも受け入れて自分の感情を出して、やりたいことやって生きようと。
    ――今のところは正統路線をいくつもりはないんですね。
    To-y えっ? 正統路線じゃないですか。僕はルールに従って正統にやっていますから。悪いことはしていない。いいことしかしていない。
    ――いいことなのかどうか、ちょっと判別をつけ難いですが。とりあえず楽しそうではあります。
    To-y そうですね。楽しむことが大事ですよね。
    ――“ジ・オーセンティック”というワードはいつから使い始めたんですか。
    To-y (11・30)後楽園からです。
    ――じゃあ、あの場で初めて出した言葉だったんですか。
    To-y はい。ホンモノという意味です。
    ――どこから引っ張ってきたんですか。
    To-y 引っ張ってきたわけじゃないです。
    ――いやいや、あまり知られている英単語じゃないですよ。なぜ知っていたんですか。
    To-y 今は言えません。もっとみんなが気づいてから明かします。
    ――では自分のキャッチフレーズとして使い続けていくと。「カモーン」とか「T!O!Y!」とか、タグが多い方ですよね。
    To-y 「熱波WER!!」もありますし。「カモーン」は練習生時代、その日が20歳の誕生日で巡業帰りのバスで酔っ払って、DDTに来ていたブル・ジェームスを煽ったらチョップをされて。それを見たある先輩に「おまえ、今度のエキシビションマッチで『カモン!』と言え」と言われて。そこからのものです。
    ――エキシビションマッチの段階で言っていたんだ。そういう話を聞くと、後先を考えないタイプだと思います。
    To-y いやー、考えてらんないッスね。今、キタものに乗るだけ。
    ――漫画『TO-Y』の主人公・藤井冬威も刹那的というかパンクなキャラクターで描かれていました。
    To-y そっちは考えないようにしています。漫画も、しっかりとは見ないようにしていましたから。見たら、そっちに寄せてしまうだろうから。トーイはトーイでも、別のトーイを目指しているんで。寄せたら絶対に失敗します。自分は自分として生きていかないと。
    ――まあ、あのTO-Yには惹きつけられるでしょうから、影響を受けすぎるのもよくないのはわかります。ただ、親御さんは寄せた方が喜ぶのでは。
    To-y 喜ぶかもしれないですけど、僕はそっちの方にはいかないです。好きだったのも父の方で、お母さんは知ってはいるというレベルです。お父さんが『TO-Y』や『クローズ』とか、そういうのが大好きで最初、坊屋春道の「春道」っていう名前になりそうだったのを画数よくないと母が止めて。「斗偉」も本当は「冬威」にしたかったけど画数が合わなくて違う漢字にしたんです。だからこそ被らないようにすると。
    ――けっこう重いものを背負っているんですね。
    To-y 背負っていないですよ。
    ――違う漢字からリングネームを「To-y」に寄せておいて何を言っているんですか。
    To-y リングネームは…カッコいいじゃないですか。半角なのがカッコいいんですよ。
    ――半角がカッコいい?
    To-y 長くない。長くしたらあれ、ダサいです。もともと「トーイ」って呼ばれたかったのに、小学校の頃からずっと「コジ」とか「コジマ」ばっかりで。
    ――「トーイ」と呼ばれたいがためにリングネームを寄せることになっても、あえて。
    To-y それによって「T!O!Y!」も定着しましたし。これからも全部のフレーズを使っていきます。
    ――まあ、ギャンブル性の高いプロレスを体現していくのであれば、このEXTREMEのベルトは落とせないですよね。
    To-y 落とせないです、はい。
    ――それがベルトを守る理由というのもなかなかです。
    To-y あとは、どうにか分割地獄を抜け出すためにもこのEXTREME王座で稼いでいかなければならないんで。
    ――その境遇から脱したいとは思っているんですね。
    To-y 脱したいです。だから、それを上回るほど稼ぐしかない。僕は今の年齢でカードの分割とかを経験しているので、最後は逆になる可能性がほかの人よりもあるということでしょう。今はやりたいことをすぐにやる…そうじゃないと落ち着かない。大学を1週間でやめたのも正解だと思うし。これはちょっとダメかもと思いながらやるのが一番ダメなんです。やると決めたら、自分を信じられるように生きていきたいんで。

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