4月13日、大阪ボディメーカーコロシアム第2競技場での「ドラマティック・ドリームズ!~松井幸則レフェリー20周年記念大会~」のセミファイナルで石井慧介と入江茂弘のシングルマッチが組まれた。松井レフェリーいわく「いつも一緒にいてすごく気持ち悪い2人」とのことだが、闘いになれば激しくぶつかりあう良き仲間であり、良きライバル。今回は対談の中で、2人の出会いから現在まで、両者のリング内外での気持ちの変化を探る。(聞き手・オフィシャルサイト取材班)
――まず2人は友達…でいいんですよね?
入江 プロレス界で一番仲良いですね。
石井 プロレス界で唯一の友達です。
――唯一って、誤解招いたりしません?
石井 自分、友達いないよね?
入江 そこまではわからない。
――…まずお二方の出会いはどういうものだったのでしょうか。
石井 2008年ですね。
入江 2人とも2008年デビューなんですよ。
石井 お互い練習生の時、会ったかどうかまではさすがに記憶にないんですけど。
入江 たぶん会ってないと思う。
――そうなんですか。
入江 あ、たぶん僕が若武者でデビュー(2008年4・8新木場)した時に会っていると思う。
石井 僕も新木場に行っていれば会ってはいると思うけど、会話はしてない。他団体の人なんで、距離というか壁がありましたね。
――その1年後ぐらいに試合をしていますよね。
石井 2009年8月23日の両国大会で初対決ですね。
――互いにデビューしていますし、それぞれ試合の印象は?
石井 すごいエルボーと頭突きをやる人だなと。
入江 僕はまだ名古屋にいたこともあって、あまり試合を見てないんですね。出る試合も違ったし。両国で初対決した時も会話もなかったですし。
石井 もう他のところの人っていう感じですね。僕はあまり人に心開けないタイプなんで。
――その初対決では相手をどう感じましたか。
石井 入江君は強烈なエルボーをやる人でした。
入江 石井さんは見た目と考えられないぐらい、技の一つ一つがエグかったですね。ニールキックも顔面を打ち抜くし。試合になると変わるんだなと思いました。
石井 それから試合でもあまり当たらなかったですね。あ、2010年2月28日にシングルで初めて当たったんですよ。両国の初対決から、次に対戦したのは、そのシングルマッチです。
――そこで仲良くなったと。
石井 仲良くなってないですね。まだ他人です。
――2人の関係性が変わるきっかけって何だったんですか?
入江 それは僕がまず東京に引っ越してからですね。
――DDTで武者修行を始めた時ですね。
石井 2010年春にドロップキックでアルバイトした時、石井&入江という危険なシフトがあったんです。
入江 2人ともレジできないのに。
――ドロップキックで働いていたんですか?
入江 東京に引っ越してきたばかりでお金がなくて…。
石井 お酒を作ったり、接客したりしていましたね。そこで動物の話をして。
――動物?
石井 僕は動物好きだし、入江君も話していくうちに動物好きだってわかったんですよ。それで詳しいから、僕がいろいろと聞くわけです。最終的に動物のオススメ映像を教えてくれたんです。
入江 その動画がおもしろいから見て欲しくて、そこでメールアドレスを交換しました。
――どういう映像だったんですか。
石井 詳しくは言えないですけど「ヤバいな」という感想をすぐにメールで送りました(笑)。仲良くなったきっかけはそれです。
――なるほど。
石井 それでおもしろい人だなって、僕が食いついたんです。あとはドロップキックの流し場のところに、なぜか入江君の好きなAV女優の写真が貼ってあったり。
入江 なぜか貼り出されていました(苦笑)。
――その後も、この危険なシフトが続いたわけですか。
入江 今日、石井さんと2人だなっていう時はうれしかったですね。
石井 僕も同じです。
――しかし仲良くなっていっても、タッグ結成までは期間がありますね。
石井 その間も散々、シングルで当たりましたからね。2度目は公式に載ってないですけど、2010年8月21日に岐阜でやったイベント試合。3度目は2010年11月3日、新木場でのヤングドラマ杯公式戦。4度目が2011年5月21日、新木場でKO-D挑戦者決定トーナメント1回戦。5度目が2011年7月5日、新木場での月刊若手通信。要所要所で当たっています。
――当たっていく中で印象などは変わったりしました?
石井 普段は仲が良いんですけど、試合になると互いムキになるというか、プロレス界によくある信頼関係というか。
入江 異常にムキになってしまうというのはありますね。
石井 当時はお互い若かったですし。
入江 あと僕がDDTに出始めた時って、僕がダークマッチでも石井さんが本戦に出場していて、同期だけど僕より全然上にいっている感じで。焦りみたいなものもありました。
――石井選手との差を感じたわけですか。
入江 それは感じます。僕との経験が違いましたから。
石井 僕は全然差を感じてなかったですね。
――どういうことでしょうか。
石井 余裕はなかったですし、入江君は脅威でした。
――こういう闘いを経て、タッグ結成に動くわけですね。
石井 2011年7月24日の両国でシングルができて。
入江 負けて悔しかったけど、気持ちよかったですね。両国でシングルマッチをできたことが大きかった。
石井 自分もあの時、試合後のコメントで「最高の相手と試合ができて」と言ったんですよね。
入江 (苦笑)コメントまで覚えてんの、ヤバくないですか?
――何しゃべったか覚えています?
入江 全然覚えてないです(苦笑)。
石井 すっごいニールキックが入ったというのもあったし。
入江 そうですね。
石井 で、9月25日にもう一度、シングルが組まれたんですよ。そこで10分引き分けして「KO-Dタッグを2人で目指そう」と動いたんですよね。
――よく覚えてますね。
入江 後楽園でシングルやったのは覚えている。その後に動いたんだっけ?
石井 その後に決定したんだよ。
入江 知らなかった…。
石井 「3、2、1、新時代!」みたいなやつで締めているんだよ。そのあとの札幌でディーノさん&飯伏さんが返上したKO-Dタッグのベルトを巡って、男色ディーノ&大石真翔vs石井慧介&入江茂弘でやったんだよ。
入江 2人で初めてKO-Dタッグのベルトを獲った。
――切磋琢磨していく中、2人で一緒に闘っていきたいという気持ちはあったんですか。
入江 でもその頃はベルト獲る前からタッグを組んでいたような気がする。
石井 組んでいたけど、ほんの数回でしょう。最初に組んだのが2011年1月9日の大阪なんですけど、飯伏幸太&ケニー・オメガvs石井慧介&入江茂弘です。
――その時のフィニッシュは?
石井 フェニックス・スプラッシュで、僕が飯伏さんに11分35秒でフォール負け。
――覚えています?
入江 マジで覚えていない。その試合すら覚えていない。
石井 あと新日本プロレスに。
入江 あ、NEVERだ!
石井 本間(朋晃)さん&菊地(毅)さんと闘ったりして。たまに組むというのはありましたね。
――そんなに頻繁にはなかったわけですね。
入江 でもタッグって信頼できるパートナーじゃないとダメだと思うんです。DDTの中で一番信頼できるパートナーは石井さんなんで。
石井 散々シングルで当たったんで次、組んでみたらという気持ちはありましたね。
――その間のプライベートでの付き合いはどうだったんですか。
入江 いろいろと遊びました(笑)。
石井 より仲良くはなりますよね。
――信頼関係が深まっていく中でのチーム結成だったわけですね。もちろんお二方の共通認識として上の世代との対峙というのもあると思います。
入江 僕たちの中で一番大きいのは世代を変えるっていうことなんですね。その意識はずっと一緒だし、デビューした時からあると思うので。
――ドロップキックで一緒に働いた時からより深くなっていって。
石井 いろいろお互いのことを知っていきますよね。
入江 石井さんは数字とか、あと試合で対戦した人のリストをずっと作っているんですね。全員の名前を書いて。
石井 初対戦リスト。
入江 タッグマッチで当たった人、シングルマッチで当たった人って。iPhoneに全部入れているんです。
――それを見た時、どう思いました?
入江 そういう病気なのかなって(笑)。
――病気って(笑)。
石井 言い方が載せられないだろ。たぶんお互い知っていくうちに、お互い「コイツは本当に頭がおかしい」と思うようになったんですよ(笑)。
――より興味を持つようになったと。
入江 この人がいたらおもしろいなって。
――闘いの部分に関してはいかがでしょうか。
石井 ドリフ結成してから、タイトルマッチが組まれました。
――タイトルが懸かっているというのもありますけど、気持ち的に過去のシングルマッチと違いますよね。
入江 ……覚えてなかった。あ、僕たちが6人タッグも含めてタッグを組んだ回数ってわかる?
石井 さすがにそこまでは…。
入江 タッグは?
石井 タッグはメモしている。
――メモしている!
石井 チームドリフの記録もあるけど石井&入江組っていうのも作っているんですよ。石井&入江組は現在48回組んでいます。あ、この間の入れてなかった! 寿司親父(SUSHI&めんそ~れ親父)に勝ったんで、49回組んでいます。更新しないと…(iPhoneをいじりだす)。
――参戦している全日本プロレスでも組んでいますし、絆も深くなりますよね。
石井 ずーっと一緒にいますしね。
入江 あと僕がさびしがりなんで、巡業先のホテルで(石井の)部屋に繰り返し行っています。
石井 アジアタッグも一緒に挑戦していますし。
――昨年10月27日、全日本両国大会で鈴木鼓太郎&青木篤志の持つアジアタッグ王座に挑戦しました。
入江 石井さんがアジアタッグを獲りたいと言って、そのパートナーに選んでくれたのは嬉しかったですね。
石井 やっぱりプロレス人生の要所要所に入江君がいますね。
――そして4・13大阪でシングルマッチを迎えます。
入江 今回のシングルマッチって前回より楽しんでできるんじゃないかなって。試合って痛いし、キツいから楽しいって変なことなんですけど、僕は楽しみです。
石井 僕も同じ気持ちですね。楽しみっていう言い方は変ですけど。僕は会場マニアでもあるので、後楽園のメインができて、今度は大阪府立第2のセミですよね。すごく光栄なことです。石井vs入江の闘いを大阪の人たちに見せたいし、勝ちたい。KO-D無差別級最年少&最多記録防衛保持者に勝てば、すごい実績になると思うし。防衛8回って三冠ヘビー級で言えば三沢(光晴)さん、小島(聡)さんだもんね。
入江 だけど不安っていう部分もありますよ。
石井 もちろん。
――それはどういうことでしょう。
入江 石井さんからしょっちゅうデータで言われますけど、シングルでは負け越していますから。石井さんだってあの時より強くなっているでしょうし、僕も経験積んでいますけどベルトを持ってないので、そういう部分の不安はありますよね。
――何勝何敗何分けでしたっけ?
石井 4勝2敗2分けです。でもこの対戦成績だから僕の有利ってことはないですからね。対戦成績にこだわるクセに、それは過去のことだと思っています。
入江 それと僕にとって松井(幸則)さんはすごく大きい存在なんです。DDTに来た時、いつも試合に関して怒られてばかりで…。
石井 自分もそうですね。松井さんにすごく怒られて。試合に関して怒られていた2人が、こうして松井さんの興行でセミに組んでくれたわけですから。
入江 僕たちにセミを任せてもらえたからにいは、勝敗とは別のところで良い興行だったと思われるような試合をしたいです。
石井 松井さんに期待されていると思って、恩返しできるような試合をしたいです。