セミファイナルは飯伏幸太vs石井慧介のスペシャルシングルマッチ。立ち上がり、飯伏が鋭いキックから踏みつけ式逆片エビ固めで石井の動きを封じる。そこからキャメルクラッチへ。脱出を試みる石井の右腕をノドに回し、さらに左腕も固める拷問技。「どうしたオラ! こいよオラ!」と、飯伏は声を荒げる。エルボー合戦に転じるも、飯伏が右ミドル一発で倒してしまう。石井は蹴り脚をキャッチし、ヒザへのドロップキックから顔面へ低空ドロップキックで反撃開始。そしてジャンプを加えたブレーンバスターを放つ。飯伏もキャッチングパワースラムからコーナー飛び乗り式ムーンサルト・プレスでカウント2。その場跳びムーンサルトは石井が剣山でカットし、クルック・ヘッドシザースへ。飯伏はロープに足を伸ばしエスケープする。石井はコーナーへ登ると、追ってきた飯伏を金具へDDTで叩きつける。ミサイルキックをかわされた石井は「死ね!」と叫びながら放たれたラリアットをかわし、ジャーマン・スープレックス。これを飯伏が着地し、逆にジャーマンで投げたが石井も着地し延髄斬り。食らったものの飯伏もすぐさまレフトハンド・ラリアットをヒットさせ両者ダウン。石井はオーバーヘッドキック3発からタイガー・スープレックス・ホールドでカウント2。そこからダブルアームDDTを狙ったが、飯伏は着地して槍投げでコーナーへ突き刺す。さらにぶっこ抜きジャーマンでカウント2。コーナーに登る飯伏を止めた石井はスパイダージャーマンを狙ったが、防がれたため雪崩式タイガー・スープレックスを狙う。しかしこれを飯伏が投げられながら着地。次の瞬間、石井のニールキックがヒットするも、カウントは2。ダブルアームDDT狙いを着地し、飯伏がショートレンジ・ラリアットを放ったが、石井も直後にダブルアームDDT。これをカウント3ギリギリ返した飯伏は、腕を引っ張ってのショートレンジ・ラリアットからシットダウン式ラストライドにつないで石井を振り切った。試合後、うつ伏せに倒れたままの石井に飯伏が右手を差し出し、握手を交わしながら何やら言葉を投げかけていた。
メインイベントはKO-D無差別級選手権試合。第45代王者の入江茂弘が坂口征夫を相手に2度目の防衛戦に臨む。坂口のセコンドには大石と高梨が、入江には高尾と彰人がつく。リングインしコーナーに登って見栄を切ったさい、あまりの気合の入りようでプロテクターのバンドが外れてしまう。入江が両手を差し出すと、坂口は握ることなくきびすを返す。ゴング後、場内は水を打ったように静まり返る。まずは入江が押し込みブレイク。離れた直後にラリアットを出すも、坂口がかわしてキックの連打。コーナーに倒れ込んだところへさらに掌底の連打を入れていく。立ち上がった入江は対角線上を走り突っ込んでいったが、そこに待っていたのはカウンターの右ハイキック。マトモに食らった入江はリング下へ転落。カウント9でエプロンに上がるも、力が入らず再び下へ落ちる。坂口は、なんとかエプロンへ戻った入江にストンピングを入れて中に入れさせない。ようやくリング内へ入った入江をまた蹴落とし、戻ってくるとボディーへローキックの連打を放つ。座り込みながら「効いてねえぞ!」と強がる入江を、坂口は容赦なく蹴りまくり。そこから左ヒザを踏みつけてのスタンド式アキレス腱固めへ。ロープエスケープした入江に右ミドル3発から飛びつき腕十字にいったが、入江はそのまま転がって立ち上がり、持ち上げてキャンバスへ叩きつける荒技で脱出。坂口が起き上がってくるところへ、突進ラリアット。セミで石井が見せたのと同じようにジャンプしてのブレーンバスターも繰り出すが、いずれもカウント2。入江がコーナーに登ると、坂口はそこへ飛びついてフロント・ネックロック。さらに蹴りで落とすと、スワンダイブ式ナックルパンチを見せた。蹴りで倒し、横四方からパンチを連打。入江がエスケープしてもブレイクせずに、パンチを叩き込んでいく。半失神状態の入江に、松井レフェリーがダウンカウントを数える。カウント8で立った入江は正面から頭突き。対角ニーをかわし、ランニング・エルボーからテディベアでカウント2。今度は入江がマウントになりエルボーを振り下ろす。坂口は体を入れ替え、マウント掌底。もう一度入江も体を入れ替えマウントからの頭突き連打。そここあらコーナーへ登り、ファイブスター☆フライング・ソーセージを決めるが、坂口もカウント2ではねのける。バックフリップ狙いを着地した坂口は後頭部へ飛びヒザ蹴りを入れ、バックドロップでカウント2。額をくっつけ合いながら立ち上がる2人に声援が入り混ざる。入江のエルボーと坂口の右ミドルが交互にサク裂。カウンターの右ヒジで入江を倒した、坂口はPK。入江がキャッチし、ヘッドバットから担いだが、坂口は背後に着地しスリーパーへ。崩れ落ちた入江にPKをヒットさせてカウント2まで追い込むと、キックの連打でダウンを奪い、パントキックを顔面へ。これもカウント2で返されると、すぐさまスリーパーへとつなぐ。ところが入江はそのまま体を起こし、坂口を担ぎ上げるとファイアーサンダーへ。カウント2に終わると座ったまま頭突きを乱打し、立っても連打。そこから自分が垂直落下式バックフリップへつないで、激闘に終止符を打った。
入江は寝転がったままガッツポーズで喜びを表す。そして坂口の前にそびえ立った。そこにつかみかかるようにし起き上がった坂口は、亜門GMからベルトを取ると入江に渡し、直後に再び崩れ落ちる。光留に肩を駆りながら去る中、勝者はリング中央で大の字に。亜門「入江君、防衛おめでとう! すごい試合だったよ。どうだった、坂口さんは?」入江「あの人、僕を殺そうとしてませんでした?」亜門「そうかもしんないけど」入江「辛いです。坂口さん、絶対僕殺そうとしてました」亜門「で、次の防衛戦の話をしたいんだけど…」ここでニラが登場。挑戦権を入江の顔に押しつけたが、きびすを返しリングを降りる。GMが「使うんですか? 使わないんですか?」と聞くと「想像力で補え!」と捨てゼリフを吐いて去っていった。亜門「じゃあ、想像力で補った結果、使わないということでいいですね。じゃあ、MIKAMIさんとウラノさん、上がってください」ヤスは疲れ果てた入江をしげしげと見つめる。亜門「次のタイトルマッチは5月3日、後楽園ホールでやろうと思っています。そこで挑戦する権利はおふたりが最優先なんですが…」MIKAMI「俺はよ、今年本気で両国メイン狙っていくから。だから、今じゃねえんだよ。よきタイミングっていうのが必ずあるから、使わねえ。入江、すげえ試合だった。おめでとう」ヤス「亜門さん、僕はこの試合で疲れきったチャンピオンに使うような卑怯なマネはしたくないんですよ(場内はえー…?というリアクション)。今、入江君に挑戦して勝ったところで、MIKAMIさんが使うとか言い出すわけですよ。そんなのバカげてますよね。これ、いつまで使っていいんでしたっけ?」亜門「8月3日、ビアガーデンプロレスの最終日です」ヤス「だから、僕は8月3日、その時のチャンピオンに使うことを宣言します」亜門「だったらそれまでその挑戦権を保持してもらわないといけないんですよ」ヤス「いやいや、無理ですよ。予定が狂いますよ。今使ったってMIKAMIさんがいるんだもん! 5月3日も使わないということにしておきます」これにより現在いつでもどこでも挑戦権を保持している3人はいずれも5・3後楽園では行使しないことを明かした。
亜門「ですので、5月3日、私が指名した選手に挑戦してもらおうと思います。5月3日、後楽園ホールでチャンピオン・入江茂弘選手に挑戦してもらうのは…飯伏幸太選手です! 飯伏君、出てきて。飯伏選手は札幌大会で入江選手から完ぺきに3カウントを奪いました。そして今日のセミでも石井選手相手に素晴らしい試合を見せてくれました。挑戦する資格は十分ありと思い指名させていただきます。飯伏君、5月3日に向けて意気込みをお願いします」飯伏「頑張ります」飯伏から右手を差し出し、握手を交わしたものの、入江は至近距離からニラミつけて飯伏が帰ろうとしても離さなかった。亜門「というわけで入江君、挑戦者は飯伏幸太に決まりました。どうですか?」入江「何がどうですかですか? おかしいでしょ! せっかく坂口さん倒したのに次、飯伏さんとか…もういいよ! 誰でもいいからぶっ潰してやるよから。おまえもぶっ潰してやる!」亜門「俺をぶっ潰してもしょうがないでしょ!」入江「いいよ、チャンピオンはなあ、みんなぶっ潰して絶対頂点立ってやるからな! プロレスは絶対裏切らない! 最後までタチムカウ!!」
【試合後のコメント】
入江 痛い…頭痛いです。坂口さん、本当に強くて、リングに上がったら怖くて、頭が真っ白になったけど…でも、僕が勝ったんですよね? よかったー(ニッコリ)。でも本当に、坂口さんに殺されるんじゃないかと思って。でも、今日勝ったのは僕なんで。まず、すごい、強い、怖いケニー・オメガからベルト獲って、また、人を殺しそうな坂口さんからも防衛したんで、このベルトは絶対放さないんで。次、飯伏さんとベルト懸けて試合するんですけど、ホントにGMフザケるなって感じで。でも自分、チャンピオンなんで全員ぶっ潰してやりますよ。僕がDDTのトップに立つんです。だから絶対に…人気も実力も、全部飯伏さんに負けてるけど、もしかすると僕が勝ってるところはないかもしれないけど、僕が絶対に勝って、自分がベルトを守ってずっと防衛し続けます。
――序盤、ハイキックでかなり危なくなったが。
入江 そうですね、もしあれがリングの中で決まっていたら僕は負けていたかもしれない。(氷をあてている頭を指して)本当に腫れているんです。もう、頭の中が真っ白になって。気づいたら仲間が応援してくれて、なんとか立ってまた試合をすることができたんですけど…いやー、怖かったです。怖いけど、もうやります。やるしかないんですよ。チャンピオンってシンドいですよね。やればいいんでしょ? もうやりますよ、絶対負けませんよ。なんだよ加藤、何笑ってんだよ!
週プロ・加藤記者 入江選手にとって頂点とは何なんですか?
入江 じゃあ、加藤にとって頂点とは何なんですか!?
加藤記者 チャンピオンベルトを持っている人は、頂点はまた違うんですか。
入江 もっと上にいきたいんです。とにかく上にいきたい。ずっと勝ち続けて、両国も自分がベルトを持って試合ができるように。
飯伏 決まりましたね。ビックリした。指名されたんで。あまり時間ないんですよね。5月3日ですよね? 気持ち的には、モチベーションとしてはあまりやる気がない。でも! 決まりましたから、やるからにはやるしかない。やるんだったらベルトを獲りたいです。
――チャンピオンが入江選手であることに関しては?
飯伏 それは見ていてどんどん勢いもあるし、実力もどんどん。それはすごいなと思います。前回(のシングル)は負けてますんで、リベンジです。
――両国のメインというのは。
飯伏 出れるんだったら出たいですよね。でも、ビックリしました、まだ今は。急に決まったんで。
加藤記者 モチベーションがあまり…というのは何か理由があるんですか。
飯伏 いやいや、ビックリしたから。いろいろ考えて、対策を練ってというか、あるじゃないですか。それが面倒くさいんです。研究がね。でも、大丈夫です。研究はして勝つ。宿題が苦手なんです。でも、頑張りますよ。やるしかない。
光留 ちょっと、いてもたってもいられなくなって。もちろん、坂口さんがDDTに上がるきっかけを作ってしまった形になった自分がいたんですけど、途中からそういうのはどうでもよくなった。坂口さんは坂口道場一族としてやっていて、僕はパンクラスMISSIONですけど、基本同じ側にいる人間としていてもたってもいられなくなって。この感覚は初めてですね。あまり人の勝ち負けとかはどうでもいいんですけど、なんなら大和ヒロシ、もっと言えば中澤マイケルの(勝敗)とかはどうでもいいんですけど、ちょっと今日は我慢できなかったですね。
――それは共感できる部分があったということですか。
光留 坂口さんはわからないです。でも結局、真正面からいって、真正面から返して勝ったのはチャンピオンなんですけど、あのチャンピオン相手に真正面からいける人が何人いるかっていう気持ちがあるんですよね。そういう意味で、嫉妬もゼロではないんですけど、今その嫉妬に足を止められて遠くで黙ってみられなかった。いって、声だけでもいいから一緒に応援したかったです。あまりこうしてやろう、ああしてやろうというのはなかったですけど。
――間近で坂口選手の闘いぶりに感じるものはありましたか。
光留 ありましたね。パンクラスで見たこともあるし、自分の仲間が闘ったこともありますけど、初めて坂口さんのDDTのリングの上でプロレス界の、こっち側の仲間として今日は応援したと思います。今までやり合って、今度沖縄でも試合をやるんですけど、ちょっと別の感情ですね。ああ、この人仲間なんだって。できれば一緒にやりたいという思いです。できれば、早目に。
――それはタッグを組んでいきたいということですか。
光留 そうですね。僕と坂口さん、組むなら今だと思うんです。今の坂口征夫と組みたい。
――組んでベルトを狙っていく?
光留 逆に俺たちが獲れないタッグのベルトってあるのか? まあ、興奮しているんで飛ばし半分ですよ。でも、今の坂口さんを見て思います。足りない部分は僕が足していきます。ちょっと坂口さんにないものを。僕の足りない部分は坂口さんが足してくれると思います、同じ側の人間なんで。
坂口 DDTの頂点は遠いですね。ようやく手が届くところまで来たと思ったんですけど、本当のあと一握りがつかめなかった。そんな簡単なものじゃないというのは改めて実感しました。でも、すごい面白かったです。またイチから這い上がります。
――若いチャンピオンが相手でしたが。
坂口 まあ、自分はトシいってますけど気持ちは新弟子なんで。9カ月DDTに出させていただいて、プロレスここまでようやくこれて。またこれからイチから這い上がって、もう一回あのベルトにたどりつけるところまでいきます。ある程度手応えはつかめたかなと思うので。
――セコンドに大石選手と高梨選手がついたが。
坂口 大石さん、高梨さんは対戦することもありましたが組む機会もすごく多い選手で、終わったあとに勉強させていただいたりとか。総合もそうですけど、セコンドって自分の命を預けられる人間をつけたいと思っているんで、そういう部分で一緒に歩ける先輩を。
――入江選手が、殺すつもりで向かって来たと言っていました。
坂口 ああ、殺すつもりでしたよ。最初のハイで殺ったと思いました。あのハイで一撃でしとめるつもりでした。あれ、中だったら確実に10カウントいっていました。それぐらい足応えがあったので。うまいこと場外に逃げられちゃいましたけど、そこから戻して殺ってやろうと。殺すつもりじゃないとベルトは手に入らないです。そんな簡単なものじゃない。まさに殺るか殺られるかの試合ができました。
――パワーの差は感じましたか。
坂口 やっぱり体重差っていうのは感じましたね、すごく。総合は体重別の競技なんで、一発一発の打撃の重さが身に染みたんですけど、そのへんは正月のレジェンドでああいう大きな人試合して、自分の中では少しずつ免疫ができてきたんで。不利には変わりないですけど、圧倒的に不利とは思わない。自分の方がスピードで回れたんで。
――光留選手がタッグ結成を希望していました。
坂口 最後、自分を助けてくれたのは光留さんだったんですか? ベルトを渡したまでは覚えているんですけど、そのあとはうっすらとしか…なぜ客席を歩いているんだろうと。気がついたら控室で。僕をこの世界に引っ張っていただいた方ですし、総合でも大先輩ですし、自分としてはすごく光栄な話なんで。
――光留選手は2人なら獲れないタッグのベルトはないと。
坂口 はい、獲りにいきます。やります。ありがたいですね…光留さんだったんですか。なんで歩いてんだろうぐらいしか思えなくて。はい、殺ります。もう一回いきますよ。あのベルトにたどりつくまで。ありがとうございました。