10月2日、後楽園ホールにおける自身の20周年記念興行「CHARISMANIAxMANIAxMANIA supported by HEAD PHONES PRESIDENT」を直前に控えたタイミングで、カリスマこと佐々木大輔から「デスペラードと対談がしたいから回してくれ」との指令が下った。集合場所である歌舞伎町・Drop Kickへいくと、午前中であることがモロに響き、カリスマはローテンション。それをなんとか膨らまそうと努めるエル・デスペラードという図式に、試合当日の形を先に見た気がした。アルコール抜きで語り合うのは初という二人の対談をお届けする。(進行・鈴木健.txt)
俺たち、(飲んでいる時は)プロレスの
会話をしたことがないかもしれないな
――今回の対談は映像収録もおこなわれますので、よろしくお願いします。
佐々木 太腿を触ったら見えるのか。
デスペラード なんですか、それ。イメージビデオみたいじゃないですか。
佐々木 ハッハッハ。まあ、俺たちはシラフで会話することがないからな。だから、毎回が初対面みたいなものだ。
デスペラード 十何年もいてね。
――要は忘れているから記憶がリセットされると。
デスペラード 『ガチ☆ボーイ』みたい(学生プロレスを舞台とした映画で、フジタ“Jr”ハヤトも出演。)
佐々木 そんなだから、ぜひ一度シラフで喋っておきたいと思って、大会前に朝の10時から歌舞伎町に来てもらった。
――喋りたいことがあるんですね。
佐々木 ……ない。
デスペラード なんで呼んだんだよ!
佐々木 防衛おめでとうございます(2日前に新日本札幌大会でYOHを相手にIWGPジュニアヘビー級王座を防衛)。絶対、負けると思っていたけどな。
デスペラード (Xのポストで)思いっきり飛んできましたよ。
――なんで組む相手にあんなひどいポストを。
佐々木 YOH選手に来てもらおうと思って。
デスペラード チャンピオンを呼びたかったの?
佐々木 やっぱりチャンピオン。
デスペラード じゃあなんで最初、俺にオファーが来たんだ? 負けると思っていたなら。そもそもあなた、日が高い時に起きていたんだね。夜行性だと思っていたよ。
佐々木 俺、今日、寝ないできたよ。
デスペラード こっちも北海道から帰ってきたばっかでこんな時間に呼び出されてさ。
――めちゃくちゃ会話が回らないシチュエーションで対談をしていると。
佐々木 おまえが回せばいい。
――いや、私は酒じゃないんで。酒が入ると饒舌になるんですよね。
佐々木 テキーラが入ればな。
デスペラード いらないことばっか喋って途中で使えなくなりますよ。
佐々木 二人で飲んだ時の会話で記憶にあるのはおチンチンだけだな。
――それはどういう流れでそのワードが出てくるものなんでしょう。
デスペラード こっち(佐々木)が「おチンチン先生」と言い出して。酔っ払いが建設的な話なんてするわけないでしょ。酔ってなくてもこれなんだから。
佐々木 言われてみれば…俺たち、プロレスの話をしたことがないかもしれないな。
デスペラード 印象にないですね。
佐々木 だから俺たちがプロレスについて語り合うのはこれが最初で最後だな。
――まず何より、カリスマが10・2後楽園大会に間に合ってよかったですね。
デスペラード それは本当におめでとうございます。本当に興行がなくなったと思いました。絶対間に合わねえと思ったもん。
佐々木 まだ9割だからダメだ。
デスペラード ダメなの?(と言いながら負傷個所の左脇腹を軽く叩く)
佐々木 10月1日に治るから。逆算して治している。
デスペラード で、2日に石川修司さんに潰されてもう一回ダメになるんでしょ?
佐々木 そう、もう一回欠場。
デスペラード せっかく組めるのにそれが流れるのは、まあケガってどうしてもしょうがないんですけど残念だなと思っていたら、スタッフさん周りとか本人にもどうなんですかって聞いたら、できそうだという話は聞いていたんで。ただ、プロレスラーってみんなバカだから、基本的にできるって言っちゃう人間じゃないですか、生き物として。これはどこまでと思いながら最悪、俺が9割出りゃあいいだろうって。
佐々木 9.5だよ。
デスペラード 割合増やすなよ! 治るって言ってんだから。
――カリスマのために9割も出る覚悟でいたとは。
デスペラード せっかく組めるって、そういうことじゃないですか。俺、けっこういろんな人とウチ(新日本)でも組んだり組まされたりっていうのがあったんですけど、合体技とかはいくら仲良くてもそんなに必要ないと思っていて。お互いがスタンドプレーをした上で、相手のことをちゃんと見ていればスタンドプレーがチームプレーになっていくものだしっていうことを考えれば、特に心配はしてないんで。お客さんは合体技とか好きだよね。だから本当はした方がいいんだろうけど。
佐々木 客の時は俺も好きだった。やるようになったら別にいいかなってなった。
――ご自身の20周年記念試合でありながら自分は0.5しか出ないつもりでいるんですか。
佐々木 そこはコーナーに立っている俺だけ見ていりゃいいんだよ。
デスペラード それはいくらなんでも、DDTさんでも前代未聞だろ。「あいつ、出てこねえな」って。出た途端に負けたら平田さんみたいになっちゃうじゃん。
佐々木 それは嫌だな。その平田がチャンピオンだぞ(対談の時点)。
デスペラード あれはねえ、DDTさんの究極の形を見たなと。ゴツゴツした闘いを「新日本みたい」とか、あと全日本さんみたいとか、オーソドックスなプロレスを、究極をやりたいっていうんだったら、すごく嫌な言い方をすれば別にどこの団体だってできることなんだけど、やっぱり平田さんみたいな人が最大のベルトを獲るっていうのは、DDTさんの美学というか美しさだなって、あれは感動しました。
佐々木 ちゃんと見ているね。
――カリスマは平田選手の戴冠は不本意でしょうね。
佐々木 俺が休んでいる間の出来事だから、まあいっかな。
――それで2日は実際のところ動けるんですか。
佐々木 2日は動けるよ。けど動かない。だってIWGPジュニアチャンピオンがいたら動かなくていいでしょ。
デスペラード いやいや、自分の興行だから。相手も石川さんとアントンさんでしょ? アントンさんのごんぎつねで目ん玉が飛び出るかと思った衝撃が。本当に潰れそうなんだけど、あれ。
佐々木 徹夜で来たら大丈夫だよ。
デスペラード 徹夜は向こうがするもんでしょ! こっちもあえて徹夜でいくの? ごんぎつね、考えられないもん。
佐々木 考えるもんじゃないから。
デスペラード おチンチンしか言わない二人が出たら、ゴールが下ネタになっちゃうじゃん。
――同じ文化だったんですね、実は。
デスペラード 最初からおチンチン、オチから始まるから俺たちじゃ昔話は作れない。(石川との対戦は)すげえ楽しみですよ。日本人が誇るスーパーヘビー級で、この間50歳になったばかりって…俺がガキんちょの頃に知っていた50歳って、もっとおじいちゃんっぽかったんですけど。クタクタのおっさんみたいな。プロレス界隈の五十代って、異様じゃない。なんでこんなカードにしたの? スーパーヘビー級とジュニアを組んだら危ないよ。
佐々木 ちゃんと私に縁がある人を呼びつつ、デスペラードにも痛い目を見てもらおうかなと。いろんな経験をしてほしいという親心だ。
デスペラード SNSで「石川修司に二人揃ってケチョンケチョンにされたい」ってあって、何を言い出したのかって思ったよ。潰れる前提で話が進んでんだけど。
佐々木 一緒に気持ちよくなろうよ。
――ただ、その親心が自分を追い込む形になってしまいそうです。
佐々木 本当に失敗した!
デスペラード カメラが回る前から言っていたよね、失敗したなって。やめてもらおうか?
佐々木 稲田(徹)さんに替わってもらおう。
デスペラード 稲田さんは稲田さんでデカいよ。プロレスに慣れていない分、危ない。緊張して思いがけない何かが飛んでくるかもしれない。