「得るものしかなかったです。最高でした。ありがとうございました」と言って飯伏幸太が帰ってきました。日本一過酷なシリーズ、G1クライマックスを駆け抜け、新日本プロレスのファンと選手と関係者を熱狂させ、無事ケガなくDDT両国大会を迎える。こんな嬉しいことはありません。
思い返せば飯伏選手のG1参戦が発表されたそのわずか2日後に、DDT8・18両国大会での飯伏vsオカダ・カズチカ戦が発表されました。大阪からその情報が流れてきた時には震えた。平たく言えば「その考えはなかった」。それほどまでに意外性があり、かつ夢のまた夢のカードでした。
飯伏vsオカダ戦の決定に、何故ここまで私たちは熱狂できるのか。現在のプロレス界において、たった一つのカードでいくらでも語れる、そしてチケットが動く数少ない顔合わせです。プロレス界において、ベストな選手同士が、ベストなコンディションで、ベストなシチュエーションで対戦することがいかに難しいか。これまで私たちは幾度となく、その難しさに直面してきました。
新日本でスーパージュニアを制し、ジュニアのチャンピオンになり、G1にも出た。プロレス界全体のゴールデン☆スターと呼ばれ、どこへ行っても歓迎された。何のバックボーンもないいちインディー選手としては既に、あり得ないほどの栄光と称賛を手にした飯伏選手です。この先に果たして何があるのだろうかと思ったら、そこにオカダ・カズチカが手を広げて立ちふさがったのです。
かたや16歳で単身メキシコに渡り、苦労した日々から遠く離れてレインメーカーとして多くの栄光を手に入れたオカダ・カズチカ。彼もまた、新日本プロレスの中では異端の人です。童顔の純朴な「岡田かずちか」から金髪傲慢なレインメーカーに変貌して東京ドームに現れた時には、誰もがその実力を疑わざるを得なかった。それを、秒速で進化し、あっという間に並み居る先輩をその腕でなぎ倒し、名実ともに日本プロレス界のトップに立ったのです。
実はかつて、若かりし飯伏幸太とオカダ・カズチカは、メキシコで出会いピラミッド観光に出かけたことがあったといいます。しかし到着した時には既にピラミッドは閉まっていて、遠くからピラミッドを眺め、言葉数も少なに帰ってきたらしい。あの時はピラミッドに登れなかったけれど、今は日本でプロレス界の頂点を目指せる2人です。31歳と25歳、美しい肢体を持ち、身体能力も高く、最高のスキルとセンスを持つプロレスラー2人が、一番旬な瞬間に向かい合う。想像するだけで震えます。
かつてDDTは新日本プロレスの30周年記念興行に「提供試合をやらせてもらう」団体でした。しかし今は違う。求められて飯伏幸太は新日本プロレスに出場し、結果を残し続けた。そしてDDTは、自分たちの年間最大マッチの両国大会に、新日本プロレスの現役チャンピオンであり、他のどの団体にも出たことがないレインメーカーとしてのオカダ・カズチカを招聘することに成功したのです。まさに、ドラマチックなドリーム・チームです。
両国の初日はアイドルやミュージシャンやイケメンや芸人さんがあの手この手でプロレスを盛り上げてくれる。そして2日目は、今のDDTが考えうる最高のマッチメークが並びます。どちらもDDTで、どちらも欠かせない。言ってみれば今年の両国2DAYSは、DDTが提供してくれる、この夏極上の2枚組アルバムです。飯伏幸太を追いかけて今年のG1を走破した私自身はもちろん、この両国2DAYSを見ずして2013年の夏は終われない。DDTと一緒に、この夏もう一度夢を見たいと思います。
(筆者Profile)
三田佐代子(みた・さよこ)/1969年8月5日、神奈川県小田原市出身。CS放送・FIGHTING TV サムライのニュース番組「速報!バトル☆メン」、「インディーのお仕事」のキャスターほかレポーターやMC、執筆活動など幅広く活躍中。8・17両国大会では南海キャンディーズの山里亮太さんとともに総合司会を務める。古舘プロジェクト所属。「三田佐代子の猫耳アワー」http://www.samurai-tv.com/column.html



