2月21日、新宿B@mbooにて鈴木健.txt公開インタビュー第4回「男色ディーノ×アントーニオ本多~マッスルの向こう側にはいけたか!?」が開催されました。オフィシャルインタビューとして、ディーノ編、アントン編に分けてお届けいたします。2・19後楽園で一騎打ちをおこなったあと、試合については多くを語らなかったディーノがアントン戦にこめた思い、マッスルという言葉を出した意図、さらに試合を通じて感じたものについて1時間以上も語りました。
お互いを羨ましいと思ってきた
10年を埋め合わるための会話
――2・19後楽園大会の試合後、バックステージでのコメントでは「リング上でしゃべったから今日はしゃべることはない」と言っていました。それから2日が経ち、反すうする時間はあったと思うのですが。
男色 この話を受けた時に言ったと思うんだけど、試合についてしゃべれることはないよと。リング上以上のことはできないから、リング上以上のことはしゃべれないよっていう、じっさいそんな気分ね。
――では、こちらから振らないかぎりは出てこないですね。
男色 そうね、あれ以上のものは自分からはないわ。
――リング上で出したのは、試合であって“言語”ではないですよね。
男色 あー、アントンとはこれ以上なくしゃべったんですよ。超カッコいいように言ったら、メチャクチャ会話できた、あのオッサンと。それでね、10年間が完全に埋まったわけですよ。
――10年間そんなにしゃべらなかった相手ではないですよね。
男色 じゃないけど! その10年間しゃべってきたことを含めて…なんかすごいしっくりきたんですよ。
――そのへんの言葉ではないやり方で会話をするというのは、プレイヤーでなければわからない感覚だと思います。
男色 そうよね。最初からリング上でしゃべろうと思ったのは初めて。試合前のVTRでアントンが「つまらなかったら帰っていいから、最後までやらせてください」ということを言ったくだりがあったと聞いたから、それはまったく同じだなと思って。ただ、自分はプロだから最低限のことはするけど、自分のやりたいこととしてアントンと会話できた気がするわ。なんていうか…人間臭いものがぶつかってきたんですよ。境遇は似ているわけじゃないですか、同じ学プロをやって、アントンの方が複雑な学年の進み方をしているから自分の方が上だけど同い年で。自分の方が先にプロになって結果的に先をいくことになったけれども、そこの時にアントンがどう思っていたかも伝わってきたし。たぶん、嫉妬みたいなものが一番強かったと思うんですよ、自分に対して。それがすごくわかったけれども、プロになるにあたってどうしても捨てなきゃいけないアマチュアリズムみたいなのがあって、それを今でもアントンは持っているんですよ。それが自分からすれば羨ましくて仕方がない。たぶんアントンがDDT所属にならない理由もそこにあるんですよ。自分の好きなことをやって表現したいという。その部分が羨ましいって、アントンとマッスルをやり始めた時からずっと思っていた。
――この場合のアマチュアリズムを具体的に言うとどんなものがありますか。
男色 やっぱりプロって、どうお金を生み出すか。レインメークですよ、それこそ。どうお金の雨を降らせるか。プロって職業的って意味よね。それを踏まえるとそこに行き着くわけですよ。逆にいえばどうお金を払ってもらうか。それはプロというものになってから一番考えていることですよ。でも、アントンはそうじゃない。
――そうではない?
男色 たぶん。自分の好きなことに対してお金がついて来ているだけ。まあそれも、ひとつのプロフェッショナルのあり方っていったらあり方なんだけど、わたくし個人はそういう進み方はしてないんです。だからそれができるアントンが羨ましい。
――羨ましいということは、そうしたいという思いもあると。
男色 学生の時はもっとトガッていたから。別に理解されるためにやっていたわけじゃなかったし、表現するためだけにできたけど、今はそうじゃない部分の方が大きい。
――受け手側のことも頭に入れてやらなければならないのとの違いですか。
男色 逆にいえばそっちがより多く考えてはいる、うん。
――そういうものがもともとあったから、どこかのタイミングで本多選手と会話をして確認しなければならないという意識だったわけですか。
男色 うーん、じつはそれもあとづけだったのかなあって、今思うと。とにかく武道館が決まった時にアントンとやんなきゃいけないんだろうってなって。マッスルっていうのもひょっとしたらあとづけだったのかもしれない。学内のちっちゃいところでやっていた自分らが、我々武道館スよ!?みたいな会話がしたかったのかもしれないし…まあ、アントンは武道館っていうのはあまり気にしてないと思うんですよ。なーんだろうな…これがね、また面倒くさいやつで、自分のやりたいことをやるのはいいんだけど、それを多くの人に見てもらいたいっていうのも絶対あるんですよ。そのやりたいことがひとりでも多くの大衆に向けてやる人もいれば、意外と自分のやりたいことの枠が決まっていてそこに向けてやるものだったりする人もいてそれぞれなんですけど、アントンって意外とそこまで狙っているターゲットが広くないんですよ。いや、狙ってさえいないと思うんだけど。でも多くの人に見てもらいたいっていう自己矛盾があるんですよ、あの人。そこがたまらなくかわいいんだけど。それを持ち続けているアントンは…羨ましいですよねえ。自分がプロになった時点で意図的に切り捨てたところだから。アントンはこっちを見て羨ましいと思ったかもしれないけど、こっちはこっちでアントンが羨ましいと思っていた部分があって、その埋め合わせですよね。
――埋め合わせ、ですか。
男色 10年の中にはいっしょに住んだ時期もありましたよ。その時期でもわざわざしゃべらないじゃないですか。
――そういうものなんですね。
男色 しゃべんないッスよ。そんなのするわけないじゃない。だってアントン、英語の字幕がない映画とかWWFのビデオを見ているんですよ。それがエンドレスですよ? だから今、日本語でしゃべったら申し訳ないなって。
――あー、なるほど。そもそもいっしょに住んでいたのはどうしてなんですか。
男色 アントンが実家から出たい、でも金がないと。その時点で面倒臭いんだけど、じゃあいいよと。家賃も別にひとり分も2人分も変わらんし。
――へー、家賃をとらなかったんだ。
男色 1万円と光熱費は出させた。すぐ出ていくぐらいのテンションだったんで、まあいいかと思ったら2年近く居座られて。
――そういう空間にいながらプロレスの話はしなかったと。
男色 そんなもんよ。面と向かってしゃべるなんて恥ずかしいじゃないですか。リングっていう一番会話できる場所があるのに、なんで面と向かってしゃべらないといけないんだっていうのはありますよ。
「マッスルの亡霊」は亜門さんに
向けてのものだったのかも…
――言葉ではない会話として、殴り合いや一点を集中して攻められるという形になりました。そういうものが、ひとつひとつ会話として自分の中へ入ってくるものなんですか。
男色 そんな難しい話ではじつはなくて。あとから考えたら“会話”なんですけど、やっている時は「ほお、殴ってきたか」ってイラッとするわけですよ、痛いと。それに関しては相手が殴ってきたからこっちも殴り返してやろうという気持ちしかないんですよ。
――いわゆる“闘い”ですよね。
男色 まあまあ、そうね…うーん、難しいわ。どういう感覚なんだろう? スポーツ経験があったらわかるかもしれないけど、相手がどう考えているかを考えることってあるじゃないですか。その感覚に近いのかもしれない。結局は自分もニュアンスでしかわからないんだけど、ああいうのは…ないですよ。お互い…自分も、たぶんアントンもスッとしているんですよ。
――それは今までのどの試合とも違う感覚ですか。
男色 それこそ夕日が見える河原で殴り合って大の字ですよ。
――ああ、不良同士のケンカみたいな。
男色 そうそう。あとはシェイクハンドしか残っていない。リング上の言葉でいうと質が違うやりとりはいくつかあったけど、このタイプはなかったですね。お互いが昔から思っていたことを埋め合おうという会話は、ない。夕日タイプは初めて。人生って生きていたら道が一本あるわけじゃないですか。そこが交わる瞬間だったわけです。だから、自分の今までの道がつながるかつながらないかで、会話できるできないが変わってくるでしょうし。だいたいは今までこうして来ました、そしてこれからはこうですよっていう先のものをぶつけ合うんですよ、プロレスって。でも、過去のものに関しては初めてかもしれない。たとえば三沢vs川田戦が夕日タイプですよ。
――足利工業大付属高校時代からの先輩後輩関係を踏まえているということですね。自分の中にこのようなテーマがあったことを話していただいたのですが、事前にはあまりアナウンスしなかったですね。
男色 まあ…言うなればオナニーですからね、これは。自分がベルトを持ったから言ったわけであって。KUDOクンが持っていた時に、もうちょっとやったらいいんじゃないっていうのがそれだったのね。チャンピオンになってまでそんなに奥ゆかしくしなくたっていいよって。自分のやり残しだったりやりたいこと、そういう我をもうちょっと出してもよかったんじゃないかと思ってて。彼が本当に素敵すぎるんですよ。メチャクチャ人ができているんですよ。KUDOクンもたまらなく好きなんですけど、我が出しきれなかった。そういう部分を変えたいっていうのがあって。ベルトってそういうものでしょ。持っていたらある程度自分と向き合っていい道具だと思っていたんで、それで獲ったから自分と向き合うシリーズが始まったわけですよ。
――でも、今ここで言ったようなことはダイレクトには言わなかったです。
男色 恥ずかしいじゃない、それも。プロレスラーですよ、リングがあるんですよ、そんな会話できないですよ。
――その代わりだったのかどうかは確かではないんですが、あの場で出したのは「マッスル」という、ある意味伝わりすぎるぐらいの影響力を持つワードでした。
男色 そこはちょっと話を戻すけど、マッスルもアントンとの10年間のひとつなんですよ。それは避けては通れない部分。象徴としてマッスルという言葉を選んだんだと思う、今にして思うと。それが最大公約数として一番しっくり来る。あとはキーワードとしては武道館。ただ、それをほかの人も思っているんだろうと思ったら、意外と自分が一番大きかったんだなって。
――そして、それを口にしたことによっておそらく自分が想定していた以上の受け取られ方をされました。
男色 リングでしゃべるっていうのは、そういうことでしょ。自分の意図したもの以外の走り方もするんだっていうのは、いつだって思っていますよ。
――言うなれば封印されていた言葉を出したわけですよね。本多戦を迎えるにあたっての一番の食いつきになってしまって、ディーノvsアントン戦=マッスルそのものというぐらいに見られた部分がありました。
男色 ……マッスルをどうこうしようと思ってやったわけじゃないんですよ。ただ、自分の中でケリをつけなきゃいけないというのはあったんだけど…これは本当にわかんないんだけど、亜門さんを見ていて自分もそう思い込んでいたのかなあっていうのが、今ちょっと思った。
――鶴見亜門さん?
男色 あの人も、コンプレックスの固まりなんですよ。プロレス・ゼロのところから生まれた人間じゃない。マッスルから生まれて、今DDTに入ってきている。自分はどの程度鶴見亜門を演じていいんだろうか?っていう葛藤がすごくあると思うんですよ。それはマッスルから始まっているものだから、亜門さんに対しても「あなた、そんなにマッスルにこだわらなくてもいいんだよ」っていうメッセージが若干あった。これはたぶんあとづけじゃないと思う。それであの時、みんなそう思っている(亡霊云々)って言ったのがじつは亜門さんに向けてのものだったんだって今にして思う。だから、あなたはDDTの人なんだよっていうのは伝えたいですよね。
――自分自身の中でケリがついていなかったっていうのはどうなりました?
男色 アントンを目の前にしてゴングが鳴った瞬間、それは飛んだ。まったく何もない。もういいやって思ったんですよ、最初に。無意識の意識ってやつで、もうほかのことはどうでもいいやってなった…年々、渡辺哲さん(アントンの実父)に似てきているでしょ。哲さんと闘ったことがないのに、哲さんと闘っている感覚にどんどんなってっちゃうんですよ。ま、それは全然関係ないんだけど…このオッサンと殴り合う瞬間は、もうほかのことはどうでもよくなって、ただ埋めようと思ったんです。これも初めてのケースですね。どういう気持ちで臨めばいいか、わかっていないこともあるんですよ。この闘いの意味はなんなのかって考え込んでしまう。
――プロレスラーがテーマを立てることで、自身のモチベーションを高める面もあるんですよね。
男色 意味はあった方がいいですからね。ただ、ゴングが鳴ってしまえばそこまでであって、今この瞬間は目の前にあるもの以外は何もないんだなって。
――闘っている最中は、どんな感じなんでしょう。
男色 痛いです。そして、勝つためにはどうしたらいいだろうというよりも、どうしたら殴れるだろう、でしたね。スキあらば殴ってやりたい。
――殴り合いたいというのは戦前から言っていたことでした。殴るという、通常は嫌いな相手や頭にきた時にやる行為を、プロレスラーは好きな人間、認めている相手に対してやるのだと、改めて実感させられたんです。最初に聞いた時は、意表を突かれた感じがしました。アントン戦を、極めてアクティヴで攻撃的な言い回しで位置づけたわけですから。
男色 アントンと自分のプロレスにおける共通部分は、パンチなんですよ。じゃあ、そこだよねって感じです。それは、お互いが会話をするまでもなくそこでしたよ。
――パンチそのものが共通言語となって会話が成立した。ディック東郷vsアントーニオ本多戦もそうでしたね。
男色 それは本当に偶然。東郷vs本多戦もパンチが共通言語だったということですよ。これが飯伏クンとKUDOクンだったらキックがそうなっているだろうし、永田(裕志)さんと諏訪魔選手ならバックドロップって、そういうものがある関係にある人たちは、そこで会話をするでしょ。
――殴り合った結果、特にKUDO選手がチャンピオンになってからの無差別級タイトルマッチとは明らかに違った質感の試合になりました。
男色 自分もアントンも技をきれいに決めるタイプじゃないし、あれは完全に武道館へ向けて自分に対して出したメッセージであって。今までと同じようにやってちゃダメだろうっていうので、新しいのを出したんですよ。武道館でやるのにチンタラやっていたらレインメークできねえだろって。そういう気持ちって、口に出して言うのも恥ずかしいんだけど。でも、武道館でメインに立つまでに自分の中でもっとクリアしなければいけないものを意識した時に自分と向き合ったら、アントンの存在があったんですよ。試合に関してはフタを開けてみたらああなっただけで。まあでも、納得いくまで殴り合うだろうなっていうのはなんとなく見えていたから、偶然であり必然であり。ああなるだろうと思いつつ、また違う展開があったかもわかんないし、次にやったら意味合いが違ってくるし。
試合で見えたアントンのかわいさ
その夜、大石と車で新潟へ向かう
――それでじっさいに殴り合って、アントーニオ本多から見えたものってなんだったんですか。
男色 なんかね、アントンってアントンのままなんですよ。超かわいいんですよ、アントン。(小声で)それが伝わってきましたよ。
――アントンがかわいいのはやる前からわかっていたことでしょ。
男色 いや、かわいいわよお。
――あ、再認識したんだ。
男色 そう!
――あれだけいろいろあった末にやってみた結果が再認識。
男色 でも、ああやんないとわかんなかったんじゃないですか。アントン、本当はかわいくねーと思ったかもしんないし。
――あのやりとりの中でかわいげを感じるものなんですか。
男色 どう見てもかわいくないですか?
――プレイヤーではないんで、なんとも言えません。
男色 だって、真顔で(ダスティの時に)ピヨピヨしてるんですよ。あんなの…ねえ! 普通、プロレスラーのカテゴライズされている人はセーター着ないでしょ、なんとなくだけど。着るんですよ、よくわからない柄のやつを。たぶんお母さんから買ってもらったやつをずーっと着てんですよ。そういうアントンもフラッシュバックするんですよ、試合中に。家に帰ったらどてら着てんですよ? 普通、ギャグでどてら買うじゃないですか。ちゃんと(帯を)結ぶんですよ。羽織るだけでいいじゃん!って。ちゃんと結び目が蝶々になっている。
――あれだけヒジを攻められている時にそんな姿が…。
男色 いや、基本的には自分が殴っている時ですけどね。あれってどういう構造なんですかね。もちろん殴っているアントンは見えるんですよ。でも、脳裏というか、脳の裏にはどてらを着たアントンが映っているんです。
――脳の表と裏に映っている絵が違うわけですね。
男色 嬉しそうにジェリー・ローラーのサインをもらったって言っているアントンが試合中に見えちゃう。通販でジェリー・ローラーのDVDを買ったんですよ。一応部屋の真ん中にふすまみたいなのがあって仕切られてんだけど、珍しくそこをガラガラガラーッて開けて「男(だん)さん見て! ジェリー・ローラーの生サイン!!」って。本人かどうかもわかんないのに。
――対戦している最中に相手との関係がフラッシュバックで浮かんでくることは、あるものなんですか。
男色 それはたまにあります。今回はそれをしようと思ってやっているところが違うわけで。でもねえ、31分もやっていたのが本当に非常識ゼァッ!ですよ。長すぎるでしょ。後ろが新日本だったら叱られていましたよ。
――Twitterで。
男色 アントンもたぶん思っていたんでしょうけど、31分も我々のぽっちゃりボディーが動けねえだろうと。学プロって長いんですよ、自分のやりたいことばっかやろうとするから。自分はその頃から長い試合が嫌いだったんだけど、プロレスの試合で伝えることができるのって10分か20分だと思うの。ただ、それを伸ばすことってじつはそんなに難しくなくて、20分の試合を10分にまとめる方がよっぽど才能がいるんだと思う。
――そういう意識を今回に関しては取っ払った?
男色 いや、殴り合っていたらそうなっていた。20分経過だけが聞こえて、もう経ったの!?って。アントンはスタミナ切れていたけど、自分はスタミナ自体は切れていなかったの。
――終盤、お互い座り込んだまま動きが止まったところは…。
男色 あれは単純に一時的なガス欠…ガス欠じゃないな、本当に空になるケースと、ファミコンでいうエキサイトバイク。一回ピーッとなってシャカシャカしたら戻ってまた走れる。自分はエキサイトバイクだったんですよ。アントンはゼロになっていたんじゃないかな。
――その差が勝敗につながった形ですね。
男色 逆に言ったらその差だけですよ。白かったねー。違う意味で白くなったのはボブ・ゲームで趙雲たちがやってきた時。これはヤバいと。今ここに縄があったら、首を掛けにいけるレベルよ、あれは。自分が悪いわけではないのはわかるんだけど、この場にいっしょにいることがごめんなさいみたいな。
――あれは黒歴史ですね。同じ白でも白のタイプは違うと思いますが。勝った瞬間は?
男色 その時点で会話は終わっているわけだから、何もなかったですね。
――本多選手がすぐに退場したので、我に帰ったらもう目の前にいなかったと思います。あそこで終わった上での会話を交わすつもりは…。
男色 いや、必要ないでしょ。その時点で非常識ゼァでしたし、わざわざアントンにマイクで声をかける必要もないし、アントンも望んでないでしょうから。じつは、試合終わってからいまだにアントンとしゃべってないですからね。
――亜門さんは、あそこでああ言ったということはなんらかのアンサーがほしかったんでしょうね。お客さんの中にも、そういう雰囲気はありまし。
男色 で、その回答が「どうでもよくなっちゃった」だったと。それって…何なんですかね? これが吹っ切れたっていうものなんでしょうけど。まあ、結果的にダークマッチで(マッスルを)やることになっちゃったんでしょ? やらせろってひとことも言っていないのに。
――高木大社長が一方的に「そんなにやりたければ、やりゃいいだろ!」と強引に話を持っていってしまいました。
男色 そこがあの人の怖いところですよ。あの人こそレインメークしか頭にないですよ。
――元祖レインメーカーは高木三四郎だと。
男色 やんなきゃいけない気がしてきたけど、まだモヤモヤするなあって思っていたら「やれ!」ですから。おかしな日本語ですよ。
――モヤモヤはしたんですね。
男色 なんか、忘れるにしてはよくわかんないリアリティーもあるし。
――あの時はディーノ選手と亜門GMと高木大社長の3人だけがリング上に立っていて…結局、キッパリ消えるものではなく続いちゃったんですよね。
男色 ただね…試合が終わって帰る時に、急に新潟までドライブしたいなと思って、あのあと新潟にいったんですよ。大石さんと2人で、今後のほもクロについてミーティングしようと思ったんだけど、東京の喧騒の中ではそんな話はできないと思って、金を掘りがてらしようと佐渡に向かったんです。
――金鉱掘りとほもクロのミーティングを同時に。
男色 試合が終わってそのままだったから荷物が多かったのもあって、なんか走ってて重かったんですよ。試合が早く終わっていたらねえ…。
――続くことに関しての率直な思いは?
男色 けっこう、やっときゃいいんだなって感じですよ、武道館で。
――それは、本多戦を前に自分が位置づけていたマッスルと同じものですか。
男色 ちょっと種類は変わっているかもしれない。思い入れと先にブラ下がったものとでは見方は変わるだろうから。
――少なくとも、亡霊ではなくなりましたよね。より現実的なものに近づいたというか。
男色 そうですね、そうですね……(長考)…まあ、そういうことです。
光留指名は勝っていないから
武道館のメインは単純な欲求
――この流れを含めた今回のアントーニオ本多戦という作品を総括するとどのようなものとして自分の中に残りましたか。
男色 じつはアントンとシングルやったのは1回だけで(2009年3月22日、新木場)その試合もメチャクチャ自分の中で好きで、もしも今「BEST OF THE SUPER DIENO」みたいなのを作るとしたら、その試合も含めて入れたいと思える作品にはなりました。前哨戦2つも含めて。いや、ホントにね…何度も言いますけどオナニーだったんですよ、今回のは。それを見に来てくれてありがとうという気持ちしかないんです。本当は見せるもんじゃないものに価値を見いだしてくれて、本当にありがとうという感じよね。
――絶大なる価値を見いだして、みんな来ました。
男色 生臭い話になるけど、前売りが芳しくないっていう話を聞いていて。そうだろうなって思ったし、それならそれでとも思ったんだけど、結果的にいつもぐらいには入って…10年間やってきてよかったと思いましたよ。あれは、その10年間を売ったんですよ。そう考えたら、自分とアントンの10年は商品になるんだーと思って、それはすごく嬉しかった。
――作り手側だけが満足できる作品ではなく…。
男色 あ、それに関しては後ろめたい部分があって。そこまではたぶん至っていないんですよ。途中からプロなんだからっていう部分が吹っ飛んじゃっていたんで。結果的に伝わる作品にはなったかもしれないけど…まあ、それさえも本当は関係なかったんですけどね、今回に関しては。とりあえずはレインメークできてよかったです。
――ベスト・オブ――にはなったということで。
男色 そこからアントンは外せないですよ。でも、それを言っちゃうとね…DDTのメンバーが好きで仕方がないんですよ、自分は。いっしょにやっているからっていう以上に好きなんですよ。全員外せないんですよ。
――その外せない人たちと防衛戦を続ける行程が武道館につながっていくわけですが、このタイミングで佐藤光留選手を次期挑戦者に指名したのは?
男色 シンプルですよ、勝ってないから。去年、名古屋で初めてやって負けているんです。
――一昨年と去年の総選挙1位同士という関係でもあります。
男色 それに関しては気にしてないというか。みんな気にしているんですかね?
――それほど支持されている者同士がDDTの頂上という場で対戦するとの見方はできるでしょうね。
男色 あー…。ホントに自分は勝っていないからっていうだけだったんだけど。
――あれほど本多選手にすべてを集中させた中で、それとは別のところで勝ったら次はこの人とっていうのはあったんですか。
男色 それは何人かいますよ。武道館まで、あと4、5回は(防衛戦が)ある中で。次期挑戦者決定戦やいつでもどこでも挑戦権があるから選べない時もあるけど、それ以外でこのタイミングでしか自分とできないんだったらやろうかと。それを言ったら、さっきも言ったけど全員そうなんだけどね。覚悟を見たいという意味では、今は欠場しちゃったけど平田と防衛戦をやってもいいって思っていたぐらい。それでレインメークできるかどうかっていうのは別だけど、そういう我は今なら通せるのかなと思っているんで、じゃあ(ベルトを)持ち続けましょうと。
――過去2回の両国では、メインを目指す流れとは別のところで自分の考えるDDTらしさを表現する試合を望みました。
男色 去年に関してはけっこう早くからボブ・サップっていうのは言っていて、それこそ総選挙1位の意地かなと思っていたんですよ。今って、自分のようなタイプがすごく生きづらい世の中になっていて、いわゆる普通のプロレスにシフトしつつあるんです、需要が。じっさい、大きくするにあたってそれが一番早いというか、すでにある層だからそこにいっちゃうのはしょうがない。でも、そこじゃないところでDDTは勝負しているわけだから、じゃあその部分で意地を見せないでどうするんだというのが自分の中にあって。それでボブ・サップとやるっていうのが意地だったわけ。
――そのシフトを今回は変えて、明確に武道館のメインを獲ると言いました。
男色 でも、自分は自分でしかやれない方法でしかやらないですよ、うん。
――シンプルに武道館のメインに立ちたいという欲求もある?
男色 もちろん。むしろそこからですよ。そこからいろいろとあとづけしてそれっぽい話にしているんであって。さっきの言い方をすると、どれだけ自分がそうしたいと思うことにお金を払わせることができるかっていうのはあとからつけていくしかないから。
――立ちたいものなんですね、武道館のメインに。
男色 そりゃーそうですよ。だって今、メジャーと言われている人でも武道館のメインに立つ人って限られるわけでしょ。DDTがその先も武道館を続けるかっていったら、そうじゃないだろうし…じゃあ、せっかくなんで。
――理由がせっかくだから。だとしたら、メインに立つ人間でありながらマッスルもやらなければならなくなりますよね。いったい何をやるんですか? 大社長から投げられちゃいましたよ。
男色 まあ、マッスルは当日よりも当日までがキツいんで、それに関してはどうってことないんですけど。それはそれで、素敵なことじゃないですか。
――新潟まで車を飛ばした時にインスピレーションは浮かびましたか。
男色 本気で大石さんと、どーでもいい話しかしなかったんですよ。たぶん…気のせいなんですけど、いびきみたいなのが聞こえて。
――エンジン音じゃないですか、それ。
男色 まあ、雪国だから調子が悪くなることはあるわね。それでじつは、高速を飛ばしている間はずっと同じ雪景色しか広がっていないから、早く街並みが見たいと思って新潟市内で降りたんです。そうしたら、もう佐渡島にいかなくてもいっかなーってなって結局、そのまま帰ってきちゃったの。でも、大石さんとはほもクロの話はできたから。大石さんがいないと本当に死んでました。
――新潟にいったなりのものはあったんですね…あ、話はまったく違うんですが、TBSラジオに出演した件(アントン戦の3日前に「ザ・トップ5」に生出演し、女性局アナの小林悠さんに男色ナイトメアーをほどこしたトピックがライヴドアニュースほかでとりあげられた)がかなり世間にまで届いていますね。
男色 自分はピンと来ないんだけどね。いつも通りにやったら…。
――そう、いつも通りにやったことが世間的にはとんでもないことなんだというのが今回わかりました。
男色 そういうことなのよ。だから、どうってことないんですよ。それをもっと外に出てやる必要があるとアタシは言っているのに、あまりみんなに理解してもらえない。もっと我々は頭狂ってんですよ!っていうのを出ていってやらないといけないんですよ。これだけ騒がれるんだから、もうちょっと、ちゃんと…ねえ、やればいいのに!(了)



